恋と呼び出し 2

文字数 839文字

 昼休みに、スマホが震えた。
 画面を見たら常葉君から「放課後、あの部屋で」って連絡。
 恋を取るのかな?
 それはいいんだけど、私は、普通に振舞えるだろうか。この、なんだかわからないけどひどく後ろめたいこんな気持ちを抱えて、この前みたいに常葉君と話せるんだろうか。
 二人きりで会えるのは嬉しい。話したい。でも、変な私は見られたくない。
 ずるずると考えているうちにあっという間に放課後で、常葉君からの連絡に返事をし忘れているのに気づいたのも、放課後だった。あの部屋に行こうとして、そういえば返事してないことに気づいた。既読スルーっていうやつをしてしまっていた。
 教室に常葉君はもういない。
 慌てて、あの部屋に向かう。
 何してるんだろう。私、何したいんだろう。
 周りに誰もいないのをよく確認してあの部屋に入ったら、やっぱり常葉君は先にもう着いていた。
「ご、ごめん、なさい」
「何が?」
 薄暗い部屋の中、久しぶりに聞く、教室とは違う常葉君の声。
 嬉しいはずなのに、こわい。でもちゃんと謝らないと。
 顔を見る勇気がなくて足元を見たまま、私は、服の裾を握って、言葉を探す。
「返事、できなくて。いつも、ちゃんと返事できないし、今日は、返事するのもできてなかったし、既読スルーしちゃって、私、その」
「弥生?」
「昨日だって……心配は、してたけど、常葉君が思ってるほど純粋な心配じゃなくって、私」
 何を言いたいのか自分でもわからなくなってきた。
 ただ、謝りたくて、嫌われたくなくて、申し訳なくて、悲しくて。
 色々ごちゃ混ぜになって、言葉はさらに迷走した。どんどん声は小さくなって、何を言っていいのかもわからなくなってきた頃。

 はぁ、という常葉君のため息が聞こえて、私は我に返る。

 常葉君、呆れてるんだ。
 そうだよね。私自身もわけわかんないんだから、常葉君なんてもっとわかんないに決まってる。ため息だって吐きたくなるよね。
 それに文句をつける立場じゃない。そんなのわかってる。
 ただ、胸はつきんと痛んだ。
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