恋とメッセージ 2

文字数 865文字

 その日、常葉君が学校を休んだ。
 朝、私が登校するのはだいたい始業HR直前くらい、常葉君はいつも早めなんだけど、その日はチャイムが鳴っても常葉君は現れなくて、HRで確認した担任が「常葉は休みか」って言った。事前の連絡はもらってないようだった。
 この時期だし、風邪かな?
 最近は春っていうよりも夏が近づいたなーって感じの、昼なんて暑いくらいの日があるけど、季節の変わり目なのには変わりない。夜はたまにまだ寒い。
 うちの母さんは変わり目に弱くていつも風邪をひく。こればっかりは寒いとか関係ないのよと言いながら、今朝もちょっと具合悪そうで、仕事に行く父さんに「寝てなさい」って言われてた。きっと今頃は布団の中だ。そして今日の夕ご飯は父さんが作るんだろう。
 それはともかく。
 担任の言葉にクラスはちょっとざわついて、誰かが「心配だね」と言った。
 いないのが他の男子ならこんな風にはならないだろう。さすが常葉君。
 普段の常葉君は病弱ってイメージないけど、頑丈って感じでもない人だ。なんとなく病欠って言われれば、ありえるかなぁって感じ。
 HRが終わって授業開始までの短い休み。
 教室の真ん中で派手なグループの子たちがワイワイ言ってるのが聞こえた。
「誰か常葉君の連絡先知らないのー?」
「心配ー! メッセしたいのにー」
「ねー! 前きいたけどかわされちゃってさ」
「マジでー? うけるー」
「今度はもちょっと迫ってみよ! 連絡先知らないとやっぱ困るじゃんね」
「そーだよ! うちらだけでも知っとくべきだよねー」
 ……もしも病気で寝てたら、メッセージ送る方が迷惑な気がするんだけど。
 ただ、その子達の会話を聞いてて、ちょっと安心した私がいる。常葉君は誰にでも連絡先を教えてるわけじゃないんだって。安心して、優越感を持った自分が、少し嫌だ。
 常葉君のことが心配なのは、その子達も私も、同じなのに。
 だからかな。
 どうしたの、ってメッセージを途中まで打っていたのに、私はそれを送れなかった。
 結局昼休みまで、何度も何度も同じ言葉を打っては、送れないままだった。
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