恋と休日 2

文字数 902文字

 部屋に来た智花は開口一番、「で、あの男とはどうなの?」って言った。
 言うまでもない。常葉君のことだ。
「どうなの、って……いつも話してる通りだけど」
 ほぼ毎日の電話やメッセージでその日のことはほとんど伝えてるから、改めて今日言うことって逆にないんだけどなぁ。そう思いつつ返事をしたら、智花は深いため息をついた。
「スマホでやり取りとか、してるんでしょ?」
「うん。あ、見る?」
「……見ていいの?」
「いいよ」
 見られて困るものなんて何もなかったのでスマホを取り出す。
 そういえば智花とこんな風に恋バナするの、初めてかも。小学校の頃は毎回すぐ終わってたし、智花の方はこういう話全然きかないし。すごい美人だし告白もいっぱいされてるけど、智花の方はこういう恋バナのようなことって起こったことは一度もなかった。
 常葉君とのメッセージを見せると、しばらくの間黙ってそれをスクロールしていた智花は、ボソッと呟く。
「相変わらずあんた返事酷い」
「わかってるよぉ!」
 毎回ほとんど単語しか返事出来てない私を智花はよく知っている。
 普通に会話する分には問題ないのに、と昔はよく呆れられたけど、あまりに進歩しないから今じゃ何も言われない。
 その智花とのやり取りと同じような感じの、常葉君とのやり取りだ。むしろそんな感じだからこそ、見せられない場所なんてどこにもないんだけど。
「常葉、案外マメなのね」
「そうなんだよ! 結構色々送ってきてくれるの。私はこんなんなのに。気にしないって」
「へぇ?」
 あの部屋で会って以降も、常葉君は相変わらずだった。
 直接会話する機会はほとんどない。
 でも、特に深い意味はないけど、他愛ないことをよくメッセージで送ってくれる。学校での確認事項もあれば、何かの写真だけっていうのもある。ただの独り言みたいなものもある。特別な何かっていうのはないけど、こうやって送ってくれるのが嬉しい。
 何気ないやり取りができることが、嬉しくて仕方ない。
「学校で連絡先知ってるの、私だけなんだって」
 そう言いながらちょっと照れてしまった。
 なんかこれ惚気てるみたい。
 そんな私に智花はぽいっと投げるようにスマホを返してくれた。
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