恋、落ち着けない 1
文字数 906文字
教室でずっと話してても誰が来るかわからない。
最初は帰り道のどっかで、と常葉君は言ったけれど、学校からの帰り道なんて、どこに行っても誰に遭遇するか予想つかない危なさがある。誰にも見つかりたくないならむしろ人の減った学校の方が良さそうだと言えば、じゃあ、と常葉君が連れて行ってくれたのは。
「ここは? 倉庫?」
「みたいな部屋らしいな。いろんな教科の普段使わない機材を入れてるらしい」
理科の、物理教室の向かいにある扉の中。
校舎の構造からそこが小さい部屋になってるらしいのは外からもなんとなくわかるけど、そもそもこの辺りの理科教室は授業がない限り普段は来ないし、放課後だって人がいない。この学校の理科系のクラブはきっとほとんど活動してないんだろう。
だから今だって周りには誰もいなくて、廊下も、そして当然、常葉君が開けたその部屋の中もしんとしている。
覗き込んだ部屋の中には、いろんなものが雑然と並んでて、薄いカーテンのかかった窓がある。
「でも、入っていいの?」
「見つからなきゃ問題ないだろ。理科の教師たちは教科室には普段からいないようだし」
物理室のちょっと先に、本来教師が詰めてる教科室がある、けど。
「そうなんだ」
でもやっぱりちょっと怖気付いてしまうのは、このまま入ると狭い部屋に二人きりになるから。
そんな私の迷いなんて丸わかりなんだろう。扉を開けたままで止まってる常葉君が、くすっと笑って訊いてくる。
「怖いなら別に帰ってもいいけど?」
「こ、怖いんじゃないもん!」
「へぇ? なんとも思わない、と」
「そんなわけないでしょ!」
怖いとか思ってないけど、緊張するんだもの! 仕方ないでしょ!?
「と、常葉君はなんとも思わないだろうけど、好きな人と二人っきりになるんだから普通に居られるわけないでしょ」
「……そう。で、入るの? 入らないの?」
「入る」
常葉君の前を通り過ぎて部屋の中にまで入っていくと、後ろでガチャリと扉が閉まる音がする。
そうだよね、人がいない場所ってことで来たんだから閉めないわけがないよね。
わかってるけど、何もないってわかってるけどぉ、やっぱり二人きりになったと思うとドキドキが止まらないよ。
最初は帰り道のどっかで、と常葉君は言ったけれど、学校からの帰り道なんて、どこに行っても誰に遭遇するか予想つかない危なさがある。誰にも見つかりたくないならむしろ人の減った学校の方が良さそうだと言えば、じゃあ、と常葉君が連れて行ってくれたのは。
「ここは? 倉庫?」
「みたいな部屋らしいな。いろんな教科の普段使わない機材を入れてるらしい」
理科の、物理教室の向かいにある扉の中。
校舎の構造からそこが小さい部屋になってるらしいのは外からもなんとなくわかるけど、そもそもこの辺りの理科教室は授業がない限り普段は来ないし、放課後だって人がいない。この学校の理科系のクラブはきっとほとんど活動してないんだろう。
だから今だって周りには誰もいなくて、廊下も、そして当然、常葉君が開けたその部屋の中もしんとしている。
覗き込んだ部屋の中には、いろんなものが雑然と並んでて、薄いカーテンのかかった窓がある。
「でも、入っていいの?」
「見つからなきゃ問題ないだろ。理科の教師たちは教科室には普段からいないようだし」
物理室のちょっと先に、本来教師が詰めてる教科室がある、けど。
「そうなんだ」
でもやっぱりちょっと怖気付いてしまうのは、このまま入ると狭い部屋に二人きりになるから。
そんな私の迷いなんて丸わかりなんだろう。扉を開けたままで止まってる常葉君が、くすっと笑って訊いてくる。
「怖いなら別に帰ってもいいけど?」
「こ、怖いんじゃないもん!」
「へぇ? なんとも思わない、と」
「そんなわけないでしょ!」
怖いとか思ってないけど、緊張するんだもの! 仕方ないでしょ!?
「と、常葉君はなんとも思わないだろうけど、好きな人と二人っきりになるんだから普通に居られるわけないでしょ」
「……そう。で、入るの? 入らないの?」
「入る」
常葉君の前を通り過ぎて部屋の中にまで入っていくと、後ろでガチャリと扉が閉まる音がする。
そうだよね、人がいない場所ってことで来たんだから閉めないわけがないよね。
わかってるけど、何もないってわかってるけどぉ、やっぱり二人きりになったと思うとドキドキが止まらないよ。