恋は言い辛い 1

文字数 1,265文字

 しばらくして落ち着いた後、すぐに思い出したのは智花のことだった。
 毎週日曜は遊びに来る智花。
 それを嫌だと思ったことは一度もない。
 どうして毎週のように智花がうちに来なきゃいけないのかの理由も含め、理解してる。
 うちの親だってそれは知ってるし、智花自身がそうしなくてもよくなる日までは今のままでいいと思ってるみたいで、週末家族でどこか行く場合には智花も入れて考えてるところがある。何かあったら使ってね、って合鍵まで渡してる位だ。
 つまりうちで智花が日曜に過ごすのは普通のことで、その智花と私が遊ぶのも普通のことで。
 常葉君と出かけるって言ったら智花はきっと心配はするけど、毎週の習慣が途切れる事自体に文句は言わないだろう。

 でもその間智花はどうなるの?
 智花の行く場所が無くなる。それはすごく心配だ。こんなこと相談しても智花自身は大丈夫って言うだろうけど、私は大丈夫って思わない。他に行く場所があったなら、今まで毎週うちにくるような習慣は出来なかったはずなんだから。
 大事な親友が、自分の意思ならまだいいけど、そうじゃなくただ街をふらつくような日曜を過ごすのは嫌だ。
 しかも一人でふらつくには智花は可愛すぎる。私より、一人の時に智花に起こる何らかの危険の確率は高いのだ。

 問題はそれだけじゃない。
 仮に智花と遊ばないとなると……確実にうちの親は何かあったのって心配する。その時に「好きな男の子と出かけたいから」って私は言えるだろうか?

 うん無理。
 親と仲悪いわけじゃないけど無理ーっ!

 常葉君のことを好きなことは隠すようなことじゃないし、後ろめたいことをしようとしてるって意味で言えない訳じゃないけど、単にとても恥ずかしい。
 しかも私、さすがに、親にそういう話は一度もしたことないよ!

 ぐるぐると悩んだ結果、私は結局智花にメッセージを送っていた。
 私一人で悩んだって解決しないのはわかってるし。
 こういう時、私の大好きな親友はとても頼もしいことをよく知ってるから、相談すること自体に迷いはなかった。今ならまだ智花なら勉強とかしてるはず。
「どうしよう」
 しばらくすると既読がついて、すぐに返事が来る。
「どうしたの」
 まだ寝るには早い時間、智花は予想通り起きてたらしい。
「日曜誘われた」
「?」
「常葉君に」
 私は起こったことをそのまま送る。
 ちょっと間があって、スマホが着信を告げた。メッセージだとキリがないと判断したのだろう智花からの呼び出しは予想通りで、すぐそれをとる。
 通話にした瞬間に声が飛び込んできた。
「誘われたって何? あんたたちまだ付き合ってもないんでしょ? それなのにいきなりデートなの?」
「智花ああああ」
 矢継ぎ早にぽんぽん喋る、でも聞き慣れた智花の声に、なんだろうもの凄く安心感が湧き上がってしまって、私はスマホを握ってほっとしてしまった。なんかもう智花の名前を呼ぶ以外にすぐ出来ない。
 私、思った以上に緊張してたらしい。
 何があったか教えろと智花に請われるまま、私はさっきあった一連のやりとり全部を智花に伝えた。
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