恋は行き先不明 2
文字数 1,241文字
初めてのお出かけ。デート、って言っていいと思う。
その初デートで、地名がわかんないくらいものすごく遠くに行くなんて、聞いたことがない。ただもうびっくりして何も言えない私に、常葉君はさらに言葉を重ねる。
「しかもですね」
まだなにかあるの!?
「切符はまだありまして」
…………はい?
「ど、どういうこと!?」
「この後、そのまま行くなら新幹線に乗ります」
「しん、かんせん……」
私にはあまり乗る機会がない乗り物だ。
学校の行事で何度か乗ったくらいの、馴染みのないもの。
ものすごく速い、遠くに行くための乗り物だってことは知ってる。飛行機みたいなもの。確かに、今向かってる先には、新幹線が止まる駅がある。
また言葉をなくした私に、常葉君が片手で顔を覆った。
「いやあの、僕も迷ったんだけど、弥生さんと出かけるって思った時、どうしてもここに行きたいって思ってしまって……でも本当、嫌なら今すぐでも断ってくれていいんで……」
断る?
…………私が?
「なんで? 行くよ? どこかわかんないけど、ついて行くよ?」
「……すごく遠くても?」
「うん。もちろん……あ!」
行き先に不安とかない。
場所がわかんないとしても、常葉君が連れて行ってくれるんなら私はついていける。
びっくりはしたけど、嫌とか断るとか、そんなのはありえない、けど。
一個だけ問題あった。
「あの、今日中に、あんまり遅くならないくらいで、帰ってこられるよ、ね?」
普段智花と出かけるとしても、どんなに遅くなっても9時過ぎが限界。
ライブとかでどうしてもそれを過ぎるってなったら父さんが迎えにきてくれるし、智花のことを送って行く。厳しいって訳じゃないけど、うちの親は心配しないってほど放置でもないから、あんまり遅いと途中で連絡したとしても気にする。
今回は智花にも協力してもらってるし、流石に遅過ぎるのは……と思って確認したら、常葉君は顔を隠してた手を外して言う。
「それはもちろん。夜の7時ぐらいにはあの駅に戻れる位で予定立ててるけど…………もしかして弥生さんの家は7時でも遅い?」
「あ、それなら大丈夫だよ。ならいいの。行く」
唯一の問題が無くなってほっとして答えれば、常葉君は一瞬驚いた顔をして、すぐにまた困ったような顔をした。
「ありがと。…………でも、その、僕がこんなこと言うのはおかしいと思うけど、弥生さんはもうちょっと危機感とか持った方がいいと思う」
失礼な。
「危機感くらいあります」
おもわずむっとして常葉君を睨めば、物言いたげな顔をして常葉君は私を見る。
「いやでも……うん」
「だって常葉君じゃなきゃ絶対行かないもん」
流石に私だって、これが常葉君以外だったら今すぐ家に帰ろうとしてるよ。
仮に好きじゃない誰かに申し込まれてのデートだったとして、それでもさすがにこんなのは失礼だと思っても申し訳なくても断るよ。
断らないのは常葉君だからだもの。
「ね、危機感ちゃんとあるでしょ」
「…………あーもう……」
なんでそこ、ため息つくの!?
その初デートで、地名がわかんないくらいものすごく遠くに行くなんて、聞いたことがない。ただもうびっくりして何も言えない私に、常葉君はさらに言葉を重ねる。
「しかもですね」
まだなにかあるの!?
「切符はまだありまして」
…………はい?
「ど、どういうこと!?」
「この後、そのまま行くなら新幹線に乗ります」
「しん、かんせん……」
私にはあまり乗る機会がない乗り物だ。
学校の行事で何度か乗ったくらいの、馴染みのないもの。
ものすごく速い、遠くに行くための乗り物だってことは知ってる。飛行機みたいなもの。確かに、今向かってる先には、新幹線が止まる駅がある。
また言葉をなくした私に、常葉君が片手で顔を覆った。
「いやあの、僕も迷ったんだけど、弥生さんと出かけるって思った時、どうしてもここに行きたいって思ってしまって……でも本当、嫌なら今すぐでも断ってくれていいんで……」
断る?
…………私が?
「なんで? 行くよ? どこかわかんないけど、ついて行くよ?」
「……すごく遠くても?」
「うん。もちろん……あ!」
行き先に不安とかない。
場所がわかんないとしても、常葉君が連れて行ってくれるんなら私はついていける。
びっくりはしたけど、嫌とか断るとか、そんなのはありえない、けど。
一個だけ問題あった。
「あの、今日中に、あんまり遅くならないくらいで、帰ってこられるよ、ね?」
普段智花と出かけるとしても、どんなに遅くなっても9時過ぎが限界。
ライブとかでどうしてもそれを過ぎるってなったら父さんが迎えにきてくれるし、智花のことを送って行く。厳しいって訳じゃないけど、うちの親は心配しないってほど放置でもないから、あんまり遅いと途中で連絡したとしても気にする。
今回は智花にも協力してもらってるし、流石に遅過ぎるのは……と思って確認したら、常葉君は顔を隠してた手を外して言う。
「それはもちろん。夜の7時ぐらいにはあの駅に戻れる位で予定立ててるけど…………もしかして弥生さんの家は7時でも遅い?」
「あ、それなら大丈夫だよ。ならいいの。行く」
唯一の問題が無くなってほっとして答えれば、常葉君は一瞬驚いた顔をして、すぐにまた困ったような顔をした。
「ありがと。…………でも、その、僕がこんなこと言うのはおかしいと思うけど、弥生さんはもうちょっと危機感とか持った方がいいと思う」
失礼な。
「危機感くらいあります」
おもわずむっとして常葉君を睨めば、物言いたげな顔をして常葉君は私を見る。
「いやでも……うん」
「だって常葉君じゃなきゃ絶対行かないもん」
流石に私だって、これが常葉君以外だったら今すぐ家に帰ろうとしてるよ。
仮に好きじゃない誰かに申し込まれてのデートだったとして、それでもさすがにこんなのは失礼だと思っても申し訳なくても断るよ。
断らないのは常葉君だからだもの。
「ね、危機感ちゃんとあるでしょ」
「…………あーもう……」
なんでそこ、ため息つくの!?