恋の駆け引き 2
文字数 1,200文字
さっき廊下で告白されて断ったばかりで、更にクラスメイトに告白される側も、1日2回お断りをするのはきっと疲れるだろうな、と思う。私はモテたことなんて一度もないからわからないけど、智花がモテるからその気持ちは聞いたことがある。
こっぴどく振りたい訳じゃないし真摯に対応したいけど、せめて日は分けろ。
振る方だって、気軽にやってる訳じゃない。
傲慢じゃなく智花は真面目にそう言ってた。私が、そういうことを聞いても気分悪くしたり嫌ったりしないから言えるんだと笑いながら教えてくれた。だから、今このタイミングでこんなことが伝わってしまうのはきっと迷惑で。
元より振られるのが確定してるとはいえ、これで決定的になったんだろうな、と私はひっそり思う。
でも仕方ないよね。
振られた瞬間は辛いけど、いつか立ち直れるのは知ってるし。
今回は恋でおかしくなる時間が短くなっただけ良しとしよう。
でも、次の日曜に智花に慰めてもらおう。それまでは毎日部屋で泣きそう。
そんなことを思ってた私に、常葉君は。
「あー、じゃあ、君にも、同じことを言うけど」
優しい声音なのに、どこか何の感情もこもってない声でそう言うから、感じた違和感に私は思わず顔を上げる。
そこにあるのは仮面のような笑顔。
何だろう、綺麗な笑顔なんだけど、違和感。
まるでそういう演技をしている大根役者のような……しっくりこない、というべきか。
「ちょっと僕に協力してくれないかな」
!!
それは、さっき廊下で言ってた言葉。
あの時の子は進んで協力して、そしてその直後に、おかしくなってた、気がする。
何をしてたんだろう。
不意に怖くなって後ずさろうとした私の目の前、それよりも早く常葉君がしゃがみこむ。
「これが終わって、同じ気持ちだったら僕も前向きに考える。違ってたら、明日からただのクラスメイトだよ。いいね?」
「え、えっと」
彼の手が伸びてくる。
夕方の少し薄暗くなってきた教室、動けない私、頬に触れる彼の手。
その手を冷たい、と感じた瞬間。
「!」
私の中の熱が、「消えた」。
文字通りに、全部消えた。
恋をしてた気持ちの全部が、まるで最初から何もなかったかのように、私の中から。
「協力ありがとう。助かるよ」
「これ、は……」
違う!
消えたんじゃない。
これは「消された」んだ!
方法とか理屈とか全然わからない。でも彼の手が触れた瞬間に私の中にあった恋が消された。
そこに彼が関わってないなんてありえない。
「それで、同じ気持ちかな?」
さっきまでドキドキして見てた彼の顔が、今はまるで知らない通行人のそれが目の前にあるような気分だ。
それを仮面のような笑顔のままで尋ねてくる常葉君が、まさか知らないわけがない……。
(そんな、の)
なにそれ。
なにそれなにそれ。
「違うなら、これで話は終わり……」
そう言いかけた常葉君を、私は思いっきり両手で突き飛ばしていた。
こっぴどく振りたい訳じゃないし真摯に対応したいけど、せめて日は分けろ。
振る方だって、気軽にやってる訳じゃない。
傲慢じゃなく智花は真面目にそう言ってた。私が、そういうことを聞いても気分悪くしたり嫌ったりしないから言えるんだと笑いながら教えてくれた。だから、今このタイミングでこんなことが伝わってしまうのはきっと迷惑で。
元より振られるのが確定してるとはいえ、これで決定的になったんだろうな、と私はひっそり思う。
でも仕方ないよね。
振られた瞬間は辛いけど、いつか立ち直れるのは知ってるし。
今回は恋でおかしくなる時間が短くなっただけ良しとしよう。
でも、次の日曜に智花に慰めてもらおう。それまでは毎日部屋で泣きそう。
そんなことを思ってた私に、常葉君は。
「あー、じゃあ、君にも、同じことを言うけど」
優しい声音なのに、どこか何の感情もこもってない声でそう言うから、感じた違和感に私は思わず顔を上げる。
そこにあるのは仮面のような笑顔。
何だろう、綺麗な笑顔なんだけど、違和感。
まるでそういう演技をしている大根役者のような……しっくりこない、というべきか。
「ちょっと僕に協力してくれないかな」
!!
それは、さっき廊下で言ってた言葉。
あの時の子は進んで協力して、そしてその直後に、おかしくなってた、気がする。
何をしてたんだろう。
不意に怖くなって後ずさろうとした私の目の前、それよりも早く常葉君がしゃがみこむ。
「これが終わって、同じ気持ちだったら僕も前向きに考える。違ってたら、明日からただのクラスメイトだよ。いいね?」
「え、えっと」
彼の手が伸びてくる。
夕方の少し薄暗くなってきた教室、動けない私、頬に触れる彼の手。
その手を冷たい、と感じた瞬間。
「!」
私の中の熱が、「消えた」。
文字通りに、全部消えた。
恋をしてた気持ちの全部が、まるで最初から何もなかったかのように、私の中から。
「協力ありがとう。助かるよ」
「これ、は……」
違う!
消えたんじゃない。
これは「消された」んだ!
方法とか理屈とか全然わからない。でも彼の手が触れた瞬間に私の中にあった恋が消された。
そこに彼が関わってないなんてありえない。
「それで、同じ気持ちかな?」
さっきまでドキドキして見てた彼の顔が、今はまるで知らない通行人のそれが目の前にあるような気分だ。
それを仮面のような笑顔のままで尋ねてくる常葉君が、まさか知らないわけがない……。
(そんな、の)
なにそれ。
なにそれなにそれ。
「違うなら、これで話は終わり……」
そう言いかけた常葉君を、私は思いっきり両手で突き飛ばしていた。