恋は続くよどこまでも

文字数 1,209文字

 朝に待ち合わせた駅に送ってもらうまで、どういう会話をしたのか覚えていない。
 気づけば見慣れた改札の前で、じゃあまた明日と言って常葉君が改札の向こうに消えていく姿を見送っていた。
 しばらくその場でぼーっとしてたら、スマホが震えたので我に返って中を見ると、智花からのメッセージ。
「いまどこ?」
 向こうの駅を出る辺りで連絡した「到着予定の時間」辺りだったからなんだろう、簡潔な質問だけど、智花がこっちを気にしてるのがわかる。すぐに私は返事を送る。
「駅」
「近くの?」
「朝待ち合わせたとこに着いて別れたとこ」
「常葉は?」
「帰ったよ」
 そこまで送ったら、既読がついたけどしばらく返事がなくて、なんとなくぼんやり待ってたらまたスマホが震えた。
「迎えに行くから待ってて」
 そう言う智花もそろそろ帰らなきゃいけない時間だと思うんだけど、こういう時には何を言っても智花は引かない。だから言われた通り待ってたらすぐに智花はやってきた。
 朝常葉君が立ってた場所と同じ場所に立ってる私を見つけて駆け寄って来て。
 不思議そうに私の全身を見る。
「ねぇ……気のせいだったら悪いんだけど、朝と服、変わってない?」
「え? そんなことは」
 着替えとかしてないし……って、あああああ!

 私、常葉君のカーディガン着っぱなしだよ! ええええ着てることすら忘れてた! 常葉君も何も言わないで帰っちゃうし、って常葉君は悪くないよ私が悪いよ。

 今日ずーっと着てたせいですっかり馴染んでた……嘘ぉ、私、バカだーっ! 普通どっかで気づくでしょ。ここはもうあっちよりあったかいんだし!
 違う意味でずーっと熱かったせいで服のこと完全に忘れてたっ。
「これは、その」
 あわわわとカーディガンを脱ごうとする私だけど、頭がいい智花が気づく方が早かった。
「もしかして常葉の?」
「…………寒かったから、借りてたの」
 こうなれば誤魔化す意味なんてどこにもない。脱ぐのは諦めて私はがっくりと肩を落とす。
「寒いって、別に今日そんな気温低くなかったでしょうが。って、まさか風邪でも」
「違うよ、行ったところが寒くて……」
 って、それ言ったら明らかに「この辺じゃないどこかに行った」のがバレるんじゃ、と言葉を止めたけれどもう遅い。
 じとー、っと智花の視線が私を見る。
「ど・こ・に? 行ってたのかな? 黙っててあげるから、今白状しな?」
 でーすーよーねー。
 本当は、さすがに今日みたいな行き先は言わない方がいいんだろうってわかってるんだけど、こうなった智花から逃げる方法を私は知らない。そうでなくても今日は助けてもらってたんだし。
 だから、私は恐る恐る、手元に残っていた今日の切符を見せた。
 多分私と違って智花なら、その駅名だけですぐ行った先がわかるだろうと思って。

 切符を覗き込んだ智花は。
 一瞬目を丸くして……。


「あんたどこまで行ってんのよおおおっ!!」
 ものすごく怒った。

 で、ですよねー……。
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