恋、始まってます 2

文字数 725文字

 思えばあれが失敗だった訳だけど。
 いや、普段なら私だってここまで気にしたりしないっていうか、友達との話題のネタにする程度の余裕はあるんだけど〜……昨日の今日なのです。昨日までの私じゃない今日なのですよ。しかもそれを相手もわかってるという、ある意味初体験な今日なんです。
 だから、ね。
 その、うん。
「やだ、恋歌ぁ、今日可愛いじゃん! どしたのー? イメチェンー?」
 教室に入った途端に、目ざとい友達の一人に見つかってしまった。見逃してもらえるなんて思ってなかったけどね……できればもうちょっと声の音量を下げて貰えると嬉しいな、なんて。
「ち、違うの……これは、その、親がね」
「恋歌って親に髪やってもらってんの?」
「い、いつもじゃないのよ!? 今日はたまたまっ、しかも親がノっちゃって、うぅ〜!」
 父さんに悪気がないのはわかってるの。
 むしろ本人は「かわいくできた!」とかテンション上がってたしね? 母さんじゃこうは上手くできないだろうって私もわかってるしね?
 普段ならそこまで気にしないし私も。むしろちょっと自慢しちゃうかもしれないし?
 でも今日は……。
「器用な親なんだねぇ」
「う、うん、まぁ」
 私じゃ無理だし、器用なことは間違いないので頷きつつ、ちらっと教室の中を見回す。
 …………。
 ピタッと合う、視線。
 スマホを弄っていた常葉君は一瞬止まって、そして。
「————っ!!」
 ふっと微笑んで前を向いてしまった。
 その顔を見ただけで私の方は真っ赤になってしまう。
 だって、なにあの顔! へ、変だったかな? この髪型変だったかな!?
「恋歌ぁ、どした?」
 髪直してこようかなぁ、と言おうとした瞬間に予鈴が鳴って、結局私は髪を直すタイミングを逃してしまった。
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