恋は準備できない 1
文字数 1,177文字
日曜日。
常葉君との待ち合わせは私の家の最寄駅。
待ち合わせ時間は8時半。
ちょっと早い気もしたけれど、気にならなかったのは相手が常葉君だったからなんだろう。
あの後、智花との相談の結果、私はそれより早く家に来た智花と一緒に家を出ることになった。もちろん途中で別れるのだけど、智花の方はそのまま家に戻って私の親の方を買い物に連れ出してくれる。
名目はもうすぐくる私の誕生日プレゼントの購入と当日の相談……で、その間私の方は他の友人と遊んでいる、ことになっている。
早い時間になったのはそっちの友人の都合で、夜まで一緒に家で友人オススメのDVDを見て過ごす、みたいな話だ。
ちょっと無理があるように思えるけれど、過去に同じことを一度していたから(その時は本当にそういう理由で智花に追い出されたし、そういう友人と夕方までアニメを一気見して過ごした)、無難にそれと同じようなことをした方がいいというのが智花の結論だった。
ギリギリまで、智花にも嘘をつかせてしまうのは申し訳ないとは思ったけれど。
「じゃああんた本当のこと言えるの?」
って智花に言われれば言葉もない。
まだ無理。
母さんにはまだ言えるかもだけど、父さんは……無理でしょ。仲悪いつもりはないけど、すぐ怒るような人じゃないって知ってても、それでも無理。
しかもデートに行くのに、相手とまだ付き合ってすらないなんて。
変なことする予定もつもりもないけど、それでもやっぱり言いづらい。
「まぁそんなもんでしょ」
智花が予定通りの時間、迎えに来て家を出た後、歩きながらそれを言えば智花はいつもの顔で冷静に頷いた。
「私達くらいの歳で、何でもかんでも親に言えるって方がおかしいのよ」
「悪いことするんじゃないんだけどなぁ」
「何言ってんの。年頃の娘が、どっかの男と二人きりで1日出かけるなんて、家によっちゃそれだけで『イケナイコト』だっての」
「うー」
的確な智花の言葉がなくても、私だってそれを一応わかってるんだと思う。
だからこんなに言いづらい。
常葉君を親に見せられないって訳じゃない(むしろ紹介していいなら堂々紹介出来るくらいには自信持っていい人だって言えると思ってる)し、言えないことをすることもないんだけど、後ろめたさはある。
複雑な気分の私に、妙に静かな様子で智花は言う。
「諦めれば。どんな家に生まれたって、恋人作るならいつかは通る道よ」
「そうだよね」
いつかは。
確かにそうだよね。
好きって言葉ですぐに恋が始まってしまう私だからこそ、変にそんなことにならないように気をつけてきたけど、それは別に恋自体をしないようにしてた訳じゃない。恋がしたくなかったんじゃない。
だからいつかは、って本当にその通りだった。
むしろ生まれて初めての男の子とのデート的なものが常葉君でよかった、位に思うべきなんだろう。
常葉君との待ち合わせは私の家の最寄駅。
待ち合わせ時間は8時半。
ちょっと早い気もしたけれど、気にならなかったのは相手が常葉君だったからなんだろう。
あの後、智花との相談の結果、私はそれより早く家に来た智花と一緒に家を出ることになった。もちろん途中で別れるのだけど、智花の方はそのまま家に戻って私の親の方を買い物に連れ出してくれる。
名目はもうすぐくる私の誕生日プレゼントの購入と当日の相談……で、その間私の方は他の友人と遊んでいる、ことになっている。
早い時間になったのはそっちの友人の都合で、夜まで一緒に家で友人オススメのDVDを見て過ごす、みたいな話だ。
ちょっと無理があるように思えるけれど、過去に同じことを一度していたから(その時は本当にそういう理由で智花に追い出されたし、そういう友人と夕方までアニメを一気見して過ごした)、無難にそれと同じようなことをした方がいいというのが智花の結論だった。
ギリギリまで、智花にも嘘をつかせてしまうのは申し訳ないとは思ったけれど。
「じゃああんた本当のこと言えるの?」
って智花に言われれば言葉もない。
まだ無理。
母さんにはまだ言えるかもだけど、父さんは……無理でしょ。仲悪いつもりはないけど、すぐ怒るような人じゃないって知ってても、それでも無理。
しかもデートに行くのに、相手とまだ付き合ってすらないなんて。
変なことする予定もつもりもないけど、それでもやっぱり言いづらい。
「まぁそんなもんでしょ」
智花が予定通りの時間、迎えに来て家を出た後、歩きながらそれを言えば智花はいつもの顔で冷静に頷いた。
「私達くらいの歳で、何でもかんでも親に言えるって方がおかしいのよ」
「悪いことするんじゃないんだけどなぁ」
「何言ってんの。年頃の娘が、どっかの男と二人きりで1日出かけるなんて、家によっちゃそれだけで『イケナイコト』だっての」
「うー」
的確な智花の言葉がなくても、私だってそれを一応わかってるんだと思う。
だからこんなに言いづらい。
常葉君を親に見せられないって訳じゃない(むしろ紹介していいなら堂々紹介出来るくらいには自信持っていい人だって言えると思ってる)し、言えないことをすることもないんだけど、後ろめたさはある。
複雑な気分の私に、妙に静かな様子で智花は言う。
「諦めれば。どんな家に生まれたって、恋人作るならいつかは通る道よ」
「そうだよね」
いつかは。
確かにそうだよね。
好きって言葉ですぐに恋が始まってしまう私だからこそ、変にそんなことにならないように気をつけてきたけど、それは別に恋自体をしないようにしてた訳じゃない。恋がしたくなかったんじゃない。
だからいつかは、って本当にその通りだった。
むしろ生まれて初めての男の子とのデート的なものが常葉君でよかった、位に思うべきなんだろう。