恋の抵抗 3

文字数 1,276文字

 小学校の頃の話だけど。
 自分の恋の法則をちゃんと知る前、私は安易に何人もに恋をした。
 もちろん全部振られた。
 そりゃそうだよね。大して仲良くもない、可愛い部類でもない女子に告白されて、高校生ならまだ彼女欲しさとかで受けちゃうかもしれなくても、小学生の男の子が受け入れる筈がない。今の私ならそれがわかる。
 でもあの頃の私はわからなくて。
 振られる度に、泣いて、落ち込んで、智花に迷惑かけて。
 きっと面倒な子だった。だから、その頃に、それまでにいた同じくらい仲が良かった子たちは離れていった。だけどそんな私を智花だけは一度も見捨てなかった。いつも面倒臭がりながらも、そばにいてくれた。
 その智花が言ったんだ。
「振られた後にも、思い出は残る。それは未来の恋歌を素敵にしてくれるんだと思う」
 って。
 何回も振られて、恋なんて意味ないじゃないって嘆いてた私に智花が言ったこと。
 そんなの信じられないって泣く私に智花は教えてくれた。
 誰にも言えない智花の気持ち。
 智花は小学校で知り合った親友で、とても可愛くて頭が良くて性格も良いから、すごくモテる。それは物心ついた頃からだったそうだ。でも智花は誰も好きになったりしたことがないから、告白されても一度も受けたことがない。全部、断ってきた。
 恋をする私が告白する相手のような立場、それが智花の立ち位置で。
 羨ましいなって思うこともあったけど、でもそれ以上に智花はいい子だったから、私はそんな智花と友人であることが自慢で。それにそういう智花だったから、あの頃に私を見捨てないでくれたんだと思う。
 智花にとっては、私は、過去に自分に告白してきた相手のその後だった。
 智花自身が本来見られない姿。
 今までの告白してきた子達に重ねた部分はあったんだと思う。だから、振られた後に、立ち直るまで付き合ってくれた。それが智花自身の希望でもあったから。
 好きになれなかったとしても、不幸になって欲しいなんて思わない。
 智花自身、何度も振る中で、気になっていたのだと思う。
「勇気を出して告白したことが、結果としてうまくいかなかったとしても、その時に最後まで頑張ったって思い出は絶対に役に立つよ。逃げるよりもそれは大変なことだもの。だから、無駄じゃない。今は泣くとしても」
 そう言っていつも立ち直るまで付き合ってくれる親友がいたから、私にとって過去の告白は、全部うまくいかなかったけど、忘れたいような記憶にはなってない。あの時ちゃんと私自身が相手に気持ちを伝えて最後までやりきったという記憶は、苦いけど大事な記憶だ。
 きっと受験をやりきった記憶とか、マラソンを走りきった記憶とか、そういうのと似てる。
 その当時は辛かったけど、後になってから「あの時よりは」って、頑張る糧になる思い出。
 だから、無駄と思わない。
 答えがわかっていても、ちゃんと終わって欲しい。
 その時は辛くても絶対に乗り越えるから、勝手に奪わないで欲しい。
 私の大事な気持ち。
 普通じゃないかもしれなくても、私自身が持ってる大事なものを、なかったことにしないで欲しい。
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