恋と休日 3

文字数 1,056文字

 私のベッドの上でいつものように座って、智花は言う。
「それで。恋はまた取られたんだっけ」
「うん」
「それに関しては本当にいいわけ? 今後もずっとそうなんでしょ?」
 きっと智花なりに心配してくれている。
 だから私もちゃんと答えようと、座布団の上でちょっと座り直して智花の方に向き直った。
 どこか呆れたような顔をした智花は、まっすぐにこっちを見ながら私の言葉を待っている。
「うん。あのね。私も実はちょっと不安もあったんだ。取られるのわかってて次も好きって思えるのかな、思えなくても言わないといけないのかなって。また恋がなくなった後で、自分から言えるのかなって」
 最初は勢いだった。
 取られたのがわかって、腹が立って、好きを取り戻そうとした。
 後先なんて考えてなかったし、取り戻すことに何の疑問もなかった。反射的に、っていうのかな。そんな感じ。

 でもこの前のは、私自身が言いたくて言った。取られた後からでも、この先も常葉君と関わっていきたいって思ったから、多分私たちを繋いでいる一番の理由である「私の恋」を手放せなくて、自分で望んで言った。手放したくない理由がもう出来ていた。

 最初と全然違う。自分で、本気で選んだ。
「でも、実際に取られた後で、今度は仕方なくとかじゃなく、自分で決めて好きって言ったの。だってね、常葉君のこと知っていくうちに、まだずっと好きでいたいって、思ったんだ。私、最初の時よりもずっと……常葉君を好きになってた。だから、思ったよりも普通に言えちゃった」
 言わないと無くなってしまう。その方がずっと嫌だった。
 まだ振られてない、常葉君も待ってくれる状態なら、きっとこの先も何度だって言えると思う。
「でも、この先も取られ続けるのよ?」
「そうだけど……また好きになっていいのなら、それで役に立ってるなら、いいかなって。常葉君を好きでいたい間は、それでいいかなって思う」
 まだそんなに知ってるわけじゃない。
 知らないことはいっぱいある。でも、前と違って知ってることもある。知ってることが増えて、好きが増えたんだから仕方ない。私の中から恋が消えても、また好きになりたいって思うくらいの関わりが出来たんだから、仕方ないよね。
 そう言うと智花が深いため息を吐く。
「はぁ……あんたがいいならいいけど……本当あんたは変だわ」
「それ常葉君にも言われた」
「へぇ? 何て返したの」
「好きになるのは常葉君のせいだって言ったよ」
 だって私をそんな気持ちにさせるのは常葉君だから、って言ったら智花はバッタリとベッドに倒れこんだ。
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