恋はそれぞれに 3
文字数 1,332文字
常葉君が何を指してるかはすぐわかる。
今日何度かあった、常葉君が「次」を匂わせた時の私の態度のことだろう。
私自身は常葉君との次を全く期待してないことを気付かされた、あの時。いつか必ず終わると、今回もそう認識してたんだと自分で再確認してしまった辺り。
確かに私はおかしな態度になってたと思う。
全然隠せてないから、今日何回もそういうのを常葉君に見られた訳で。
でも常葉君からすれば、説明されなきゃ意味がわからないし、何かを隠してたりするのがちょっと見えてしまっただけ、みたいに見えてたかもしれない。それで常葉君が不安になってたとしたら、申し訳ないなと思う。
でもこれ、こんな気持ち、伝えていいんだろうか。
「あれは、その」
「僕には言えないこと?」
「言えなくは無いと思う、けど、言っていいのかなって思う」
「怒るとか、悲しむとか、そういうの?」
問いかけてくる常葉君の声は優しくて。
ここまでずっと、きっととても気にしていたんだと思うのに、もっと厳しく問い詰められたって仕方ない筈なのに、優しくて。
だから、私は問われるままに喋ってしまう。
「そうかもしれないし、何も思わないのかもしれない。ただ、あれは私の勝手な考えで、常葉君と私で考えてることが違うんだって、気づいて、すごくなんというか、苦しくなって」
「どこが違ってたか、聞いてもいい?」
ここまで話してもまだ、常葉君は私の方を見ていない。だからどうにか私は常葉君の顔を見て話せるし、私から見える常葉君の横顔が穏やかだから、言葉が続けられている。
こんな、言葉を言うことが出来る。
「常葉君が次の話をする度に、私は、次の機会なんかないって思ってる私に、気づいてしまったから」
最初は、一度は、言えないって思ったのにな。
今日の時間が過ぎる中で、言えない言葉は、言っていいかわからない言葉になってた。多分それは常葉君のせいで。今日の常葉君とのここまでの時間が、そうさせた。
これを言うことで何か変わるとは思ってないけど、こんな勝手な気持ちですら言ってもいいと思えるくらいに私の中、常葉君への信頼感が変わっているんだと思う。
「………………あー」
すごく長い沈黙の後、常葉君はため息を吐くように声を出す。
「……あぁ、そういう事……」
「うん。ごめん。でも」
「いやいい。そりゃ弥生さん後ろ向きすぎだとは思うけど、僕にも原因ある訳だし」
まっすぐな髪をかき上げて、困ったような顔をして常葉君が言う。常葉君には原因ないと思うけどと言おうとした私は、急に常葉君がこっちをみたのでどきっとして言葉を失った。
固まる私に、常葉君が手を伸ばしてくる。
逃げるなんて選択肢はない。怖くもない。
指先で頬を撫でられて、どうしたんだろうとぼんやり受け入れていたら、常葉君が苦笑した。
「弥生さんの方から逃げる選択肢は無いんだね」
「なんで?」
常葉君から逃げる必要なんてないのに、何を言ってるんだろう?
「弥生さんは最初っからそうだったね。逃げないけど、追いかけても来ない……」
独り言みたいに、意味がわからないことを呟いて、常葉君の手が今度は私の手へ移動する。
指が絡んでぎゅっと握り込まれた。
「着くまでまだ時間あるし、ちょっと真面目な話をしようか」
今日何度かあった、常葉君が「次」を匂わせた時の私の態度のことだろう。
私自身は常葉君との次を全く期待してないことを気付かされた、あの時。いつか必ず終わると、今回もそう認識してたんだと自分で再確認してしまった辺り。
確かに私はおかしな態度になってたと思う。
全然隠せてないから、今日何回もそういうのを常葉君に見られた訳で。
でも常葉君からすれば、説明されなきゃ意味がわからないし、何かを隠してたりするのがちょっと見えてしまっただけ、みたいに見えてたかもしれない。それで常葉君が不安になってたとしたら、申し訳ないなと思う。
でもこれ、こんな気持ち、伝えていいんだろうか。
「あれは、その」
「僕には言えないこと?」
「言えなくは無いと思う、けど、言っていいのかなって思う」
「怒るとか、悲しむとか、そういうの?」
問いかけてくる常葉君の声は優しくて。
ここまでずっと、きっととても気にしていたんだと思うのに、もっと厳しく問い詰められたって仕方ない筈なのに、優しくて。
だから、私は問われるままに喋ってしまう。
「そうかもしれないし、何も思わないのかもしれない。ただ、あれは私の勝手な考えで、常葉君と私で考えてることが違うんだって、気づいて、すごくなんというか、苦しくなって」
「どこが違ってたか、聞いてもいい?」
ここまで話してもまだ、常葉君は私の方を見ていない。だからどうにか私は常葉君の顔を見て話せるし、私から見える常葉君の横顔が穏やかだから、言葉が続けられている。
こんな、言葉を言うことが出来る。
「常葉君が次の話をする度に、私は、次の機会なんかないって思ってる私に、気づいてしまったから」
最初は、一度は、言えないって思ったのにな。
今日の時間が過ぎる中で、言えない言葉は、言っていいかわからない言葉になってた。多分それは常葉君のせいで。今日の常葉君とのここまでの時間が、そうさせた。
これを言うことで何か変わるとは思ってないけど、こんな勝手な気持ちですら言ってもいいと思えるくらいに私の中、常葉君への信頼感が変わっているんだと思う。
「………………あー」
すごく長い沈黙の後、常葉君はため息を吐くように声を出す。
「……あぁ、そういう事……」
「うん。ごめん。でも」
「いやいい。そりゃ弥生さん後ろ向きすぎだとは思うけど、僕にも原因ある訳だし」
まっすぐな髪をかき上げて、困ったような顔をして常葉君が言う。常葉君には原因ないと思うけどと言おうとした私は、急に常葉君がこっちをみたのでどきっとして言葉を失った。
固まる私に、常葉君が手を伸ばしてくる。
逃げるなんて選択肢はない。怖くもない。
指先で頬を撫でられて、どうしたんだろうとぼんやり受け入れていたら、常葉君が苦笑した。
「弥生さんの方から逃げる選択肢は無いんだね」
「なんで?」
常葉君から逃げる必要なんてないのに、何を言ってるんだろう?
「弥生さんは最初っからそうだったね。逃げないけど、追いかけても来ない……」
独り言みたいに、意味がわからないことを呟いて、常葉君の手が今度は私の手へ移動する。
指が絡んでぎゅっと握り込まれた。
「着くまでまだ時間あるし、ちょっと真面目な話をしようか」