恋の大安売り 3
文字数 1,093文字
常葉君に言うべき言葉はあったんだと思う。
けど、器用じゃないしそんなに頭の回転もよくない私は、この時にそれを見つけることはできなかった。
だからその代わり、決めたことを言う。
「言ったでしょ。ちゃんと断ってって」
私は私が望むようにする。常葉君が自分のしたいようにしているように。どんなにこの方法の方が辛いんだとしても、そうするんだと決めたのは私だ。だから、気がすむまで私はそうする。
頑固だとか、融通が利かないとか、可愛くないとか、そんなのわかってる。
だけどそう思われるなら私にだって言い分はある。
「嫌なら断ればいいんじゃない?」
さっきの常葉君の言葉と全く同じような言い方で返したら、彼の目が丸くなって、そして。
「……お互い引く気はなし、か」
「お互いね」
片手で顔を覆った彼の表情は見えない。じっと見る私の視線に、すっと常葉君は背中を向けた。そのまま自分の座席まで行ってカバンをとると、何もなかったかのように教室から出て行ってしまう。
その足音が聞こえなくなるまで私は彼の消えた扉をじっと見ていた。
完全に常葉君が帰ってしまったと思った瞬間。
「はぁああああ〜」
全身の力が抜けて、その場でぺたっと座り込んでしまった。
ちょっと汚いなーと思ったけど、でも仕方ないよね。
ここまで私、今まで生きてきた中で一番緊張してた気がする。受験の面接なんかの比じゃないレベル。そりゃもう疲れてしまうのも仕方ない。
「色々起こりすぎだよぅ」
人生何度目かの恋をした。
何年ぶりかの恋をした。
その日のうちにその相手にそれを知られて。
その場で恋を取り上げられて。
すぐにまた恋をした。
きっと智花なら呆れるんだろうな。なんでわざわざそんなやつに再度好きっていうかなぁ、とか言いそう。私自身ちょっとだけそう思ってる。でも、私は後悔はしてないんだ。
常葉君のやってることは最低だけど、言ってることも酷いけど。
だからこそ思う通りにさせたくなかった。
「そういえば、すぐ断られないのって、初めてかも……」
一度取られてるんだから断られてるようなものだけど。私の恋はいつだって、相手を好きになってその気持ちが知られた時にはすぐに結果がわかって終わるものだったから。相手に伝わった後なのに恋がまだ続いてるなんて初めてだ。
そう思うと、ドキドキしてくる。
私、この気持ちをまだ持ってていいんだ。
「うわぁ」
暗くなった教室で赤くなった顔を両手で押さえていた私はまだ知らない。
その後、何度も常葉君に恋を取られてはまた恋をするという繰り返しの日々が始まることを。
この時はまだ、久しぶりの恋に、どこか舞い上がっていた。
けど、器用じゃないしそんなに頭の回転もよくない私は、この時にそれを見つけることはできなかった。
だからその代わり、決めたことを言う。
「言ったでしょ。ちゃんと断ってって」
私は私が望むようにする。常葉君が自分のしたいようにしているように。どんなにこの方法の方が辛いんだとしても、そうするんだと決めたのは私だ。だから、気がすむまで私はそうする。
頑固だとか、融通が利かないとか、可愛くないとか、そんなのわかってる。
だけどそう思われるなら私にだって言い分はある。
「嫌なら断ればいいんじゃない?」
さっきの常葉君の言葉と全く同じような言い方で返したら、彼の目が丸くなって、そして。
「……お互い引く気はなし、か」
「お互いね」
片手で顔を覆った彼の表情は見えない。じっと見る私の視線に、すっと常葉君は背中を向けた。そのまま自分の座席まで行ってカバンをとると、何もなかったかのように教室から出て行ってしまう。
その足音が聞こえなくなるまで私は彼の消えた扉をじっと見ていた。
完全に常葉君が帰ってしまったと思った瞬間。
「はぁああああ〜」
全身の力が抜けて、その場でぺたっと座り込んでしまった。
ちょっと汚いなーと思ったけど、でも仕方ないよね。
ここまで私、今まで生きてきた中で一番緊張してた気がする。受験の面接なんかの比じゃないレベル。そりゃもう疲れてしまうのも仕方ない。
「色々起こりすぎだよぅ」
人生何度目かの恋をした。
何年ぶりかの恋をした。
その日のうちにその相手にそれを知られて。
その場で恋を取り上げられて。
すぐにまた恋をした。
きっと智花なら呆れるんだろうな。なんでわざわざそんなやつに再度好きっていうかなぁ、とか言いそう。私自身ちょっとだけそう思ってる。でも、私は後悔はしてないんだ。
常葉君のやってることは最低だけど、言ってることも酷いけど。
だからこそ思う通りにさせたくなかった。
「そういえば、すぐ断られないのって、初めてかも……」
一度取られてるんだから断られてるようなものだけど。私の恋はいつだって、相手を好きになってその気持ちが知られた時にはすぐに結果がわかって終わるものだったから。相手に伝わった後なのに恋がまだ続いてるなんて初めてだ。
そう思うと、ドキドキしてくる。
私、この気持ちをまだ持ってていいんだ。
「うわぁ」
暗くなった教室で赤くなった顔を両手で押さえていた私はまだ知らない。
その後、何度も常葉君に恋を取られてはまた恋をするという繰り返しの日々が始まることを。
この時はまだ、久しぶりの恋に、どこか舞い上がっていた。