恋は休みなし

文字数 1,001文字

 常葉君から日曜に誘われた。
 きっと深い意味なんかない。だって常葉君にとっての私は特別でも何でもないんだから、友達を遊びに誘うようなものだ。
 でも私にとってそれは心臓が止まりそうな程に驚く事で……だって、男子と二人きりで出かけるなんて一回もした事ない経験だよ!? そりゃ想像くらいはするけど、まさか自分の身に起こるとか思わないでしょ! 付き合ってるならまだしも、その前に誘われるとか、智花ならまだしも私の人生でそんな日がくるなんて信じられない。
 止まるかと思った心臓はばくばくと飛び跳ねるだけで、どうにかまだ生きてるけど。
 どうしよう、信じられない。
 これって現実?
 ぼうっとしてると、スマホが震えた。
「ごめん」
「急かす訳じゃないけど」
「明日中くらいに返事貰えたら嬉しい」
 …………。
 あああああ!
 驚き過ぎて、数分固まってたらしい。
 既読つけたままで返事もしなかったから。
「ちが」
「いく」
「あいてます」
「だいじょうぶ」
 慌てて返事を出す。どうにか送ってるけど、指先はぶるぶる震えてる。多分、緊張。
 でも伝えないと。行かないなんて選択肢ないから。びっくりし過ぎてすぐ返事できなかっただけだから。悩んでたとか迷ってたとかそういう訳じゃないから。むしろ行きたいですからー!!
「落ち着け」
「はい」
 多分今の私がおかしいのは伝わってるんだろう。常葉君からそんな一言。はいって返事はしたけど、本当は落ち着ける訳がない。ばくばく言ってる心臓が直ぐに普段通りになる訳がない。
 はぁ。
 今の私が向こうに見えなくて良かったよ。きっとすごい変な顔してる。常葉君呆れちゃう。
「行きたい場所ある?」
「まかせます」
 何処だっていい。っていうか、希望出すとかそんな余裕全然ないし、何処とか思いつかない。今ならきっと何処だって行ってしまうと思う。どんな変な場所に連れて行かれても平気な気がする。
「わかった」
「じゃあまた明日」
 それはありがたいです。常葉君が何処連れて行ってくれても絶対文句言わない自信ある。
 そこでやりとりは終わって、全身の力が抜けた私はベッドに行こうとしたけど、立ち上がれなかった。腰が抜けるってこういう事なのかな。そういうのってお年寄りにしか起きないと思ってたけど、びっくりし過ぎてもなるんだ。うまく体に力が入れられなくて、私はその場でぐたっと力を抜いた。
 まだ信じられないけど、今度の日曜に常葉君に会えるんだ。
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