恋、おもい 2

文字数 1,103文字

「お前って……」
 最近は日が長くなってきたけど、それでも日暮れは来る。
 狭いこの部屋の中は電気がついていなくて、薄いカーテンの向こうの明かりだけしかない。だから向こうが暗くなってくれば、部屋はさらに暗くなってくる。
 そろそろ電気をつけた方がいいんだろうけど、勝手に部屋に入ってることを思うと、電気をつけたら外からバレる可能性がある、のかな。
 そんなことを思っている私に、常葉君は一言。
「面倒なんだな」
 うっ。
 否定できない。
 だってそれは智花にも時々言われる。周りとほどほどな付き合いしかしてない学校では誰からも言われないけど。
 当然だよね。
 私だって、それなりに適当な付き合いの時は適当に合わせて流して、で生きてる。自分に正直なんてとても無理だ。でも本当はそうじゃない。実際の私は、結構面倒臭いことを平気でやってるよね、と言われることが多い。

 二面性じゃなく使い分け。

 なんでそんな面倒な方を選ぶの、とかそんな感じのことを言われる。
 こっちの方が楽でしょ? とか。
 その度に、確かにそうなんだけど、楽なものばっかり選ぶのが正解じゃないよ、と私は答える。
「……嫌なら振っていいんだよ」
 だけどそれは親友の智花だから言えることで、常葉君にとっては言いよってる?相手が面倒だっていう話になるから。
 親友は利害関係じゃないけど、恋の利害関係は……ないって、言い切れない。
 人によっては、かっこいい人と恋人になりたい、っていうのは、かっこいい人に恋人と扱われる自分が欲しいからだったりするでしょ? 美人な子と恋人になりたい、っていうのは、そういう子にあれこれしたいからだったりする男の子もいるんでしょ? 利害関係がある人はある、よねきっと。
 ううん、人間関係で利害が絡んでないものの方がきっと少ない。
 でも。
 私は常葉君に振られるまでは好きでいるって決めたけど、常葉君に利用されるために好きでいるって決めたわけじゃない。状況は……同じかもしれない、けど。
「なんて顔してんだよ」
 はぁ、とため息まじりに常葉君が言う。
「お前のこと、面倒な奴だなーって昨日から思ってるよ。でも、好きだよ、その面倒さは」

 !
 好きって。
 今、常葉君が好きって。
 
 そういう好きじゃないけど、好きな人に言われる好きって、こんな重たいものなんだ。違う好きだってわかってるのに、ずしっと心に落ちてくる。重すぎて穴が開きそう。
 スマホを持ったままの常葉君からすれば、話の流れで言っただけの言葉なんだろうけど。
「僕は持ってないけどね、そういうの」
 そうだろうね。
 常葉君がそういうの持ってたら、今までいろんな女の子から恋を取ってこれてないと思うな。
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