恋とメッセージ 3

文字数 804文字

 昼休みに、スマホが震えた。
 ドキッとして、スマホを持ってトイレに駆け込んでしまう。もしも常葉君からだったらと思うと、今日は間違っても誰にも横から覗き込まれたくなかった。普段もそういうことする人はいないんだけど、その日はちょっと過敏になっていた。
 すごく悪いことをしているような居心地の悪さを感じてた。誰に、ってわけでもないのに。
 個室に入って表示を見ると、常葉君の名前が見えた。
「明日特別に必要なのあったら後で教えて」
 というメッセージ。
 普段通りの文面に見えた。
 私はいつもみたいに返事をする。
「明日来るの?」
「行くよ」
「体調」
「あ、病欠じゃないから ちょっと用があった」
「そう」
「心配した?」
「うん」
 そこまで打って、恥ずかしくなる。
 心配してたのは本当だけど、純粋な心配かって言われると多分違ってて。下心はいっぱいで。今日なんて、他の子と違ってメッセージのやり取りができるなんて優越感まで持ってしまって。それが後ろめたくて、大丈夫?の一言さえここまでずっと送れなかったのに。
 何を今更、心配したなんて伝えてるんだろ。
 私、ずるい子だな。
 本気でただ心配してたなら、こんな時間になる前に、一言でいいから何か送れたはずなのに。
 タイミングなんていくらでもあったのに。
 私がそんなことを考えてることなんて、スマホの向こうの常葉君は知らないから、メッセージがまた来る。
「だと思った 元気だから」
 それは良かったって、思うよ。
 病気じゃなくて良かった。元気で良かった。連絡もらえて良かった。
 ただ、きっと私が純粋に心配したんだろうって思ってくれてるんだと思うと、申し訳ない気持ちになるよ。
 私は常葉君を心配してたけど、その気持ちをいつでも常葉君に送れる自分に優越感を持ってて、心配よりもそんな自分への疑問の方が強くて、結局何も出来なかったんだよ。
「大丈夫」
 そんな常葉君のメッセージに、私は返事が出来なかった。
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