恋の相談
文字数 1,488文字
「……で?」
電話口の智花の声は冷めきっていた。
うん、予想はしてたけど、予想以上に呆れてるっぽい。
でも大事な親友に報告はちゃんとしておきたかったので、私はベッドの上で正座したまま神妙な声で再度言う。
「まだしばらく常葉君に恋を、っていうか、常葉君から断られるまでは恋をしてる予定です」
「馬鹿じゃない?」
ぐぅっ。
間髪入れない見事な返事。
起こったことは全部、恋が一度取られて再度私が恋をしたところも含めて全部伝えた。元々私が「好き」という言葉で恋に落ちることを知ってる唯一の相手である智花は、最初はちょっと疑わしそうだったけど、私が真面目に伝えれば全部信じてくれた。
信じてくれるってわかってたから全部話したんだけど。
だからこそだろう。
余計呆れてるのは。
「その男が恋情を何に使ってるのかは知らないけど」
結局そこは常葉君に一切教えてもらってない。智花には「なんで訊かなかったの」と言われたし、思い返せば私もそう思うけど、あの時にはなんとなくそれが訊けなかったんだから仕方ない。だから、なんとなく、事情があって何かに使ってるんだろうな、って思うしかない。
そして頭のいい智花は、すぐに色んなことを察してしまう。
「それ、うまく利用されるだけなんじゃないの」
…………うん、私もそう思い始めてる。
何かに使える恋を、何度でもすぐ出せる私は、常葉君からしてみれば便利なんじゃないかって。断ったら2度と使えないから、断らなかったんじゃないかって。家に帰ってくるまでにちょっと冷静になった私も、思いました。
でもね。
「私もそれはちょっと考えたんだけど、でも、違うかもって」
「はぁ。根拠は」
「か、勘?」
「はぁ」
深々としたため息貰いました。
すごく呆れてる智花の、電話の向こうの顔まで見える気がする。
自分でも説得力ないなーってわかってるんだけど、でもこれはうまく言い表せない。あえて言うなら。
「あの時の、常葉君の顔、っていうか表情見てたから、なんか……本気で利用するつもりっていうのとはちょっと違う気がしてるの」
もし常葉君が本気でうまく使う気があるなら、普段からいい人ぶってる彼なら、私みたいな子をもっと上手い具合に誘導することはできたんじゃないかなって思う。彼は私より頭がいいし。
でもあの時の彼は、真面目に喋ってたような気がするのだ。
私に対して、酷い内容だったけど、全部ちゃんとごまかさずに言ってくれてた気がするの。
これも勘でしかないけど。
「それも根拠はないのよね」
「根拠っていうか……なんか、うーん」
「何よ」
これははっきり言っていいのか。ちょっと迷ったけど、電話の向こうの沈黙が怖いので結局言ってしまう。
「なんかね、常葉君と、智花、ちょっと似てる気がして」
「……はあああああ!?」
「ちょっと! ちょっとだよ! でもその、だから、えっと」
電話の向こうの叫びに慌てて付け足しつつ、でも私は否定しない。
智花は嫌がってるけど、似てるんだよ。本当の自分を出したがらないところ。事情は違ってるだろうけど、周りに簡単に自分を見せられないって思ってるっぽい所。そうやって隠してる中の本音が、智花のように気遣いによるかどうかはわからないけど。
なんとなく悪い人じゃないのかなって。
そう思ってしまって。
「勘違いじゃないの?」
「かも、しれないけど」
でも、と言う私に智花は呆れた声で「まぁ仕方ないわね」と続けた。
「あんたの恋だもの。最終的にはあんたが好きなようにしなさいよ。ただ」
「ただ?」
「愚痴るなら、何かおごってもらうわよ」
「りょーかーい」
電話の向こうの優しい親友に感謝した。
電話口の智花の声は冷めきっていた。
うん、予想はしてたけど、予想以上に呆れてるっぽい。
でも大事な親友に報告はちゃんとしておきたかったので、私はベッドの上で正座したまま神妙な声で再度言う。
「まだしばらく常葉君に恋を、っていうか、常葉君から断られるまでは恋をしてる予定です」
「馬鹿じゃない?」
ぐぅっ。
間髪入れない見事な返事。
起こったことは全部、恋が一度取られて再度私が恋をしたところも含めて全部伝えた。元々私が「好き」という言葉で恋に落ちることを知ってる唯一の相手である智花は、最初はちょっと疑わしそうだったけど、私が真面目に伝えれば全部信じてくれた。
信じてくれるってわかってたから全部話したんだけど。
だからこそだろう。
余計呆れてるのは。
「その男が恋情を何に使ってるのかは知らないけど」
結局そこは常葉君に一切教えてもらってない。智花には「なんで訊かなかったの」と言われたし、思い返せば私もそう思うけど、あの時にはなんとなくそれが訊けなかったんだから仕方ない。だから、なんとなく、事情があって何かに使ってるんだろうな、って思うしかない。
そして頭のいい智花は、すぐに色んなことを察してしまう。
「それ、うまく利用されるだけなんじゃないの」
…………うん、私もそう思い始めてる。
何かに使える恋を、何度でもすぐ出せる私は、常葉君からしてみれば便利なんじゃないかって。断ったら2度と使えないから、断らなかったんじゃないかって。家に帰ってくるまでにちょっと冷静になった私も、思いました。
でもね。
「私もそれはちょっと考えたんだけど、でも、違うかもって」
「はぁ。根拠は」
「か、勘?」
「はぁ」
深々としたため息貰いました。
すごく呆れてる智花の、電話の向こうの顔まで見える気がする。
自分でも説得力ないなーってわかってるんだけど、でもこれはうまく言い表せない。あえて言うなら。
「あの時の、常葉君の顔、っていうか表情見てたから、なんか……本気で利用するつもりっていうのとはちょっと違う気がしてるの」
もし常葉君が本気でうまく使う気があるなら、普段からいい人ぶってる彼なら、私みたいな子をもっと上手い具合に誘導することはできたんじゃないかなって思う。彼は私より頭がいいし。
でもあの時の彼は、真面目に喋ってたような気がするのだ。
私に対して、酷い内容だったけど、全部ちゃんとごまかさずに言ってくれてた気がするの。
これも勘でしかないけど。
「それも根拠はないのよね」
「根拠っていうか……なんか、うーん」
「何よ」
これははっきり言っていいのか。ちょっと迷ったけど、電話の向こうの沈黙が怖いので結局言ってしまう。
「なんかね、常葉君と、智花、ちょっと似てる気がして」
「……はあああああ!?」
「ちょっと! ちょっとだよ! でもその、だから、えっと」
電話の向こうの叫びに慌てて付け足しつつ、でも私は否定しない。
智花は嫌がってるけど、似てるんだよ。本当の自分を出したがらないところ。事情は違ってるだろうけど、周りに簡単に自分を見せられないって思ってるっぽい所。そうやって隠してる中の本音が、智花のように気遣いによるかどうかはわからないけど。
なんとなく悪い人じゃないのかなって。
そう思ってしまって。
「勘違いじゃないの?」
「かも、しれないけど」
でも、と言う私に智花は呆れた声で「まぁ仕方ないわね」と続けた。
「あんたの恋だもの。最終的にはあんたが好きなようにしなさいよ。ただ」
「ただ?」
「愚痴るなら、何かおごってもらうわよ」
「りょーかーい」
電話の向こうの優しい親友に感謝した。