Ep.40 鳥は少しずつ巣をつくる(Petit à petit… 

文字数 1,045文字

 それ以降、俺は、ニタルトの元で羽を休める寸暇(すんか)以外、全ての時間を『ル・ゾォ(動物園)』の成長にかけていった。
 ドーラ会ランキングは仕事が成功すると上がっていく。
 仕事は、クエスト(探索)とオーダー(依頼)に分けられている。
 クエストの場合は、トレジャーリストの中から自分で選び、情報屋から情報を買って探しに行く。
 オーダーは、『ドーラ会』に「宝物を盗んで欲しい」もしくは「宝物を探して欲しい」という依頼がくるので、その依頼を受注して成功させる仕事だ。依頼は、世界最大の泥棒組織だからこそ集まってくる。
 宝物や依頼ごとに、難易度や価値でSSSランクからGランクに分かれていて、希少価値の高い宝物や、難易度の高い依頼ほど、成功させた時のポイントは高い。

 普通、新規参入のチームには、ポイントの高い仕事は回ってこない。だが、『ル・ゾォ』のランキングは九十三位。鳴り物入りで『ドーラ会』に入会したため、『ル・ゾォ』には、最初からポイントの高いオーダー(依頼)が舞い込んできた。
 そして俺たちは、これらを根こそぎ、全て成功させていった。モンマルトルで鍛えた盗みのテクネ(技術)は、世界のどこの場所に行っても通用した。
 組織の作戦参謀となったパジェスと、情報班隊長となったエリザベータによる綿密な計画。侵入班のセロ、ウォーカー、レンドルフによる盗みのテクネ。
 三人は、セロの赤髪、レンドルフの白いネクタイ、ウォーカーの青い靴をあらわして、トリコロール(三色旗)と呼ばれるようになった。
 もちろん何人もの逮捕者や死者が出たが、それでも『ル・ゾォ』は、順調に歩みを進めていった。

 フランス国旗トリコロールは世界各地で高く掲げられた。
 そして五年。
 『ル・ゾォ』は、ランキング十七位の地位まで成長した。
 組織の本部は、世界で一番高いビルである『キングダム・タワー』に移され、『レ・ドゥーゼン・ドゥ・ミュジシャン(十二人の音楽隊)』も、世界のあちこちで商売を成功させた。
 ウンバロール・キングダムは最盛期をむかえていた。

 ウンバロールのカリスマと政治力は、世界でもレベルの高いものだった。名声はますます上がっていき、『ドーラ会』の中にも『キャメル派』と呼ばれる、ウンバロールを中心とした巨大な一派ができていた。
 そして、つるむことが嫌いなドーラ会首魁、ドラコフスキーも、なぜかウンバロールにだけは心を許した。その勢いは、「ドラコフスキーの後継者はウンバロールになるのではないか」と噂されるほどだった。
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