Ep.59 集結 (La réunion) 

文字数 1,026文字

 俺たちは、それぞれ旅立つ準備を整え、深夜、『ル・ゾォ』専用の飛行機発着場に集合し、プライベートジェットで、ロンドンへ向かう事にした。セッティングは『レ・フレール・デュ・マル(悪の華)』がしており、あとは飛ぶだけだ。
 俺は、待ち合わせの0痔に向けて、だだっ広く、薄暗い空港を進む。遠く左右から、人影があらわれる。大きな影とほそい細い影。ゲラルハとエリザベータだ。三人は、プライベートジェットの乗込口に集結した。
「集まったな」
「そうだね」
 ん ?
 俺たちは、塀の上を見上げた。
 俺たち三人以外の男声が、塀の上から聞こえたからだ。闇夜に隠れて見づらいが、確かに聞いたことのある声。白い歯が光る。
「パンテール・ノワール(黒豹) !」
「よっ」
 ウォーカーは、片手をあげて挨拶をした後、三メートル以上はある塀から、軽く飛び降りてきた。
「セロ。一心同体てのは厄介なもんだな。こんな時にも、お前がどこに行くのかがわかっちまう」
「止めに来たのか ?」
「いや。無理だということも分かっている。僕は、お前と共に、運命を切り開くためにやってきたんだ」
「お前…、バカか ?」
 俺は呆れた。
「僕もそう思うよ。でも、バカの親友は、やっぱりバカみたいだ」
 ウォーカーは、屈託(くったく)なく笑った。
「プロパルクーラーの契約は ?」
「僕くらいなら、仇(かたき)を討ち終わった後でも契約してもらえるよ」
「ニタルトは ?」
「モンマルトルに帰した。今はピャルーと暮らしている」
「そうか。なら安心だな」
「いや。セロに仇討ちを果たさせて、安全にニタルトの元まで帰す。それが、真の安心だろ ?」
 ウォーカーは、右手を差し出した。
「ふ。パンテーか。心強い」
 ゲラルハは、その手を握る。
「ええ。『レ・ジュモン(悪魔チーム)』の復活ね」
 エリザベータも、手を重ねる。
 俺は、呆れた顔で崩さないまま、ウォーカーに忠告した。
「お前…、NIKEとのスポンサー契約を…、勝利の女神(ニケ)をフルなんて…。こっちは、神に喧嘩を売るんだ。汚辱と敗北しかねーぞ」
「ああ。でも、神と戦うにあたって、これほどふさわしいチームはいない。そうでしょ ?」
「知らねーや」
 俺も三人の上に手を重ね、笑い合い、再度ウンバロールとパジェスの仇をとることを誓い合った。
 さあ、行こう。
 この四人なら何だってできる。
 復讐だって必ずや果たせる。
 不安なんて微塵(みじん)もない。
 俺たちは颯爽(さっそう)と、搭乗口に向けて歩いていった。
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