第94話
文字数 591文字
「ちょうど良いところに来たな大神官。戴冠式の前に地鎮祭を行った新しい神殿の建立が始まった。今から作業の様子を見に行こうと思うてな。そなたも供をせよ」
言うが早いがクレメンスは玉座から立ち上がり、ヨハネを呼びつけ馬の準備をさせる。
「陛下、お耳に入れたき議がございます」
「道中で聞こう。それよりも、めでたいことがあったのだ」
何だか今日のベルンハルトは様子が変だと思っていた大神官は、次の台詞を聞いて納得した。
「皇后が懐妊したらしい。エリーゼ女官長の見立てだが、間違いないだろうと」
「何と! それは国家最大の慶事、おめでとうございます」
「妊娠初期でつわりがひどいらしく、謁見の儀を休ませている。あとで見舞ってやってくれんか」
「勿体なき僥倖にございます。ですが陛下、めでたきお話に水を差すようですが」
「何だ?」
大神官の真摯な表情に、ようやく浮かれていたクレメンスも皇帝としての顔を取り戻した。大神官は手短に最近異変を感じることと、出掛けに神像が血涙を流したことを話した。
「なんだそれは」
話を聞いたクレメンスも、さすがに血の気が引いていた。
「一度その御神像を見てみよう」
「ははっ」
急遽新しい神殿へ行くのを取りやめ、クレメンスはマクシミリアンも連れて急ぎ大神殿へと向かう。宮殿から離れているその大神殿では、止まらない血涙を流し続ける神像を前に、多くの神官たちがおろおろと取り乱していた。
言うが早いがクレメンスは玉座から立ち上がり、ヨハネを呼びつけ馬の準備をさせる。
「陛下、お耳に入れたき議がございます」
「道中で聞こう。それよりも、めでたいことがあったのだ」
何だか今日のベルンハルトは様子が変だと思っていた大神官は、次の台詞を聞いて納得した。
「皇后が懐妊したらしい。エリーゼ女官長の見立てだが、間違いないだろうと」
「何と! それは国家最大の慶事、おめでとうございます」
「妊娠初期でつわりがひどいらしく、謁見の儀を休ませている。あとで見舞ってやってくれんか」
「勿体なき僥倖にございます。ですが陛下、めでたきお話に水を差すようですが」
「何だ?」
大神官の真摯な表情に、ようやく浮かれていたクレメンスも皇帝としての顔を取り戻した。大神官は手短に最近異変を感じることと、出掛けに神像が血涙を流したことを話した。
「なんだそれは」
話を聞いたクレメンスも、さすがに血の気が引いていた。
「一度その御神像を見てみよう」
「ははっ」
急遽新しい神殿へ行くのを取りやめ、クレメンスはマクシミリアンも連れて急ぎ大神殿へと向かう。宮殿から離れているその大神殿では、止まらない血涙を流し続ける神像を前に、多くの神官たちがおろおろと取り乱していた。