楽屋トーク:オカンとボクと、時々、オトン(と鞍馬天狗)

文字数 1,721文字

ベンジャミン「御曹司なにしてるの。また落書き?」
クロード「うん」
ベン「まあここ数日猛暑で、作者さま夏バテで話進まなくてひまだからね」
クロ「うん」
ベン「35度って気温じゃないよね。体温だよね」
クロ「うん。もうガリガリ君しか食べられない」

ベン「でも何それ、四角いマス目書いて○とか△とか。何の表? サッカー?」
クロ「ううん。うちのおかんの」
ベン「常盤御前ね」
クロ「三回結婚してるんだけど、どれがいちばん幸せだったのかなーと思って」
ベン「あー」

クロ「おとんとは」
ベン「義朝さんね」
クロ「おれふくめて三人も子ども生んでるから、まあ愛されてたのかなーと」
ベン「お兄さん二人はお寺に入ったんだよね」
クロ「うん」
ベン「心配かけたの残りの一人だけか」※

クロ「でもおとんが死んで」
ベン「スルーかよ」
クロ「おかん再婚したのはいいけど、相手が清盛さんで」
ベン「そうだったな!」
クロ「大炎上してさ」
ベン「バッシングすごかったらしいね」
クロ「もう清盛さんが殺人鬼の強姦魔みたく言われて」
ベン「でも清盛さんが義朝さん殺したわけじゃないよね。敵将だったってだけで」
クロ「おれら兄弟も助けてくれたし」
ベン「そうそう」

クロ「母者(ははじゃ)も悲惨な女の代表みたく言われるけど、あんがい大切にされて、幸せだったりしたのかなーと」
ベン「うーん」
クロ「だって玉木宏のつぎ松山ケンイチってスーパーラッキーじゃない?」
ベン「それは2012年の大河ドラマだね」
クロ「松山さんはすごく清盛さんぽかったと思う」
ベン「そうか御曹司、清盛さんには会ってるんだ! 義朝さんは知らないのに……」(じーん)←涙腺がゆるむ音

クロ「玉木さんも父上ぽかったと思う」
ベン「え?」

ベン「え何、義朝さんに会ったことあるの?」
クロ「うん。魔法で」
ベン「魔法?!」

クロ「これもおれの伝記なんだけど、御伽草子『天狗の内裏』」
ベン「タイトルがもうやばいわ」
クロ「出だしもっとやばい。おれね、毘沙門天の生まれ変わりだった」
ベン「それは上杉謙信さんだね!!」

クロ「おれ超天才でお経とか二千巻くらい読破してて」
ベン「うける(笑)」
クロ「まだ小学生なんだよ」
ベン「ちっちゃ! コナン君かよ」
クロ「でね、鞍馬天狗さんの御殿に遊びに行ったら」
ベン「出た(笑)」
クロ「大日如来さんがいて、超むずい質問してくるの。でもおれ天才だから全部答えて」
ベン「どんな質問?」
クロ「『過去現在未来、三世(さんぜ)不可得(ふかとく)とはいかに』」
ベン「何て答えたの?」
クロ「ぺらぺら答えてるけど自分で読んでもわかんない」
ベン「(笑)」

クロ「でね、その大日如来さんが、じつはおとんなの」
ベン「まじで!!!!!」

クロ「『牛若こっち来て』つってハグしておくれ毛(←原文にある)なでなでしてくれて、『父さんが生きてたらこんな苦労はさせないのにごめんね』とか言ってくれて、おれもめっちゃ泣いた」
ベン「それは泣くわ」
クロ「でも格好が大日如来なの」
ベン「それは(笑)」
クロ「玉木宏似の」
ベン「(笑笑)」

クロ「はじめからハグしてくれればいいのに。禅問答する意味がわかんない」
ベン「可愛い息子と遊びたかったんじゃない?」
クロ「そっか」
ベン「ほら日曜日のキャッチボール的なあれだよ」
クロ「あー(納得)」

クロ「でもコスプレの趣味がわかんない。なんで仏像」
ベン「(笑)」
クロ「玉木宏似の」
ベン「(笑笑笑)」

(次頁につづく)


※牛若のお兄ちゃんたちについて。
常盤の三人の息子のうち、長男・今若と次男・乙若は母の言いつけどおり出家した。ところがその後けっきょく二人とも大あばれして死んでいる。
今若あらため全成(ぜんじょう)は、頼朝が挙兵直後に敗れて箱根山中を徘徊していたとき、京都の醍醐寺から修行僧のいでたちのまま駆けつけたという逸話が残っている。かっこいい! 稀代の荒くれ者だったため「(あく)禅師」と称されたとか(「ワル禅師」じゃないです。怖いくらい強いという意味)。三人の中ではいちばん長生きしたけれど、頼朝没後に謀反の疑いをかけられて捕らえられ、殺される。お坊さんなのに。
乙若は円成(えんじょう)、のちに義円(ぎえん)と名乗り、頼朝とは別に挙兵した彼らの叔父・源行家とともに平家と戦い、敗死している。お坊さんなのに。
やっぱり三兄弟そろって乱暴者だった。
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登場人物紹介

波多野静/アリア(はたのしずか/ありあ)


この物語のヒロイン。明るく素直で天然。特技は歌とダンスと水泳。惚れっぽいのが玉にキズ。海霊族(ネレイド)。

佐藤四郎忠信/クリストフ(さとうしろうただのぶ/くりすとふ)


アリアの同学年生(クラスは違う)。長身で俊足だが、内気で目立つのが苦手。極端な無口。女子に対する耐性ゼロ。アリアに片思い中。水狐(ウォーターフォックス)。

波多野遥/ミランダ(はたのはるか/みらんだ)


アリアの姉。妹思いでクールかつ熱血。特技はアリアと同じく歌とダンスと水泳。アリアとよく似た容貌だが、5センチ背が高い。海霊族(ネレイド)。

水原九郎義経/クロード(みずはらくろうよしつね/くろーど)


アリアの同級生で恋人。小柄だが学年一の美貌で、すでに女子の半数は陥落させている(推定)。身体能力、とくに跳躍力に優れ、お気楽な言動で周囲をふりまわす。ベンジャミンたちから「御曹司」と呼ばれている。樹霊族(ドリュアード)。

武蔵弁慶/ベンジャミン(むさしべんけい/べんじゃみん)


アリアの同級生。筋骨たくましい大男だが、冷徹な知性派でもあり、クロードの暴走をつねに(かろうじて)食い止めている。じつは料理男子。人馬族(ケンタウロス)。

佐藤三郎嗣信/フロリアン(さとうさぶろうつぐのぶ/ふろりあん)


クリストフの兄。容貌・性格・身体能力ともにクリストフとよく似ている。ただし左肩から右脇腹にかけて貫通創あり(一度死亡)。ミランダに片思い中。火狐(ファイアーフォックス)。

水原由良頼朝/カミーユ(みずはらゆらよりとも/かみーゆ)


クロードの異母姉。アリアやクロードたちとは別の全寮制高校に学ぶ。男装して生活している。頭脳明晰、真面目で誠実だが、男心も女心もまったく解さないのが玉にキズ。樹霊族(ドリュアード)。

遠藤盛遠/文覚/バルタザール(えんどうもりとお/もんがく/ばるたざーる)


カミーユとは中学時代からの先輩後輩の仲。アリアとミランダとは江ノ電の中で知り合う。荒海を一喝して静める法力の持ち主。性格は豪快で、人情に厚い。水霊族(ナイアード)。

後白河雅仁/ローレンス(ごしらかわまさひと/ろーれんす)


法皇。この国の権力構造の最高位にありながら、一見ひょうひょうとした異端児の風貌を持つ。が、その本心は未知数。バルタザールとは熊野での修行仲間。龍族(ドラゴン)。

土佐昌俊/ジョバンニ(とさしょうしゅん/じょばんに)


ベンジャミンのかつての修行仲間。その後カミーユに仕えていたはずだったが、詳細不明の経緯によって刺客となり、謎のダイイング・メッセージを残して世を去る。土霊族(ノーム)。

畠山次郎重忠/ロバート(はたけやまじろうしげただ/ろばーと)


クロードとベンジャミンのかつての同級生。いまは転校してカミーユの高校にいる。清廉潔白な人柄で「坂東武士の鑑(かがみ)」と称される。見た目しゅっとしているのに力持ち。人馬族(ケンタウロス)。

北条政人/オーギュスト(ほうじょうまさと/おーぎゅすと)

カミーユの同級生。寮では隣室。そつのない完璧な優等生。影となり日陰となり(?)カミーユを支えるが、いまだに友達以上恋人未満の生殺しポジションに置かれている。水霊族(ナイアード)。

滋子/ジェニファー(しげこ/じぇにふぁー)

後白河院の女御。院号は建春門院。かの平清盛の義妹(妻の妹)。美貌と知性と気くばりを兼ね備えたパーフェクトなレディ。溺愛してくる夫を甘やかしつつ、さりげなく手綱をとっている。樹霊族(ドリュアード)。

横川覚範/セバスチャン(よかわかくはん/せばすちゃん)


比叡山延暦寺(天台宗)の荒法師。四郎忠信とは宿命のライバル(に今後なるはず)。山霊族(オレアード)。

阿野全成/アントワーヌ(あのぜんじょう/あんとわーぬ)


醍醐寺(真言宗)の荒法師。クロードの同母兄、カミーユの異母兄※。悪禅師(あくぜんじ)の異名を取る。謎の使命を帯びてアリアに近づく。樹霊族(ドリュアード)。

※史実では頼朝より年下ですが、このお話ではお兄さんに設定してあります。

金王丸/マルティノ(こんのうまる/まるてぃの)


土佐坊ジョバンニの弟。推定年齢十歳前後(ヒューマノイド換算)。聡明で献身的。思いがけない形で佐藤兄弟の前にあらわれ、ある重大な秘密を告げる。土霊族(ノーム)。化体はカナヘビ=草蜥蜴(グラスリザード)。

巴/パトリシア(ともえ/ぱとりしあ)


一人当千の女武者。ミランダの盟友となる。素はおちゃめで尽くし好き。恋人の木曽義仲を失い、彼の菩提を弔って生きていたが、正直たいくつしていたところだった。土霊族(ノーム)。

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