彼女と彼の事情
文字数 654文字
クロ「日本史」
ベン「うそ」
ベン「よりによって日本史って、いちばん得意そうなのに」
クロ「うん、半分くらいうちのファミリーヒストリーだから楽勝すぎて。でね、先生が困っちゃって、姉者には特別な問題出すんだ。難問」
ベン「あー(納得)」
クロ「『鎌倉幕府最後の将軍となった三代将軍の名は』『それわたしの息子だよ、まだ生まれてないけど。
ベン「(笑)」
クロ「『で~す~が~、その実朝公が主人公の歴史小説《右大臣実朝》を書いた昭和の文豪は誰でしょう』『知るか(激怒)』」
ベン「(笑笑)」
ベン「正解は?」
クロ「太宰治」
ベン「へえー(意外)」
ベン「いや、それもう試験じゃなくてただのクイズでしょ」
クロ「だよね」
クロ「おれなんか自分で自分すげえと思ったのは、中三の最後の期末ね。あのとき英語で、自己採点したらたぶん70点行けたと思ったの。
でも返ってきたら24点で驚いた」
ベン「まじで?!」
クロ「うん。不思議だなあ、なんでだろうと思って」
ベン「え、それだけ?」
クロ「うん」
ベン「悔しいとか、次はがんばろうとかなかったの?」
クロ「うん。とくに」
このときのベンジャミンの心境を5分割すると、
1.どーして自己採点がそこまで甘いのよ
2.まあそれがすべてを物語っているな
3.こんな主君に仕えてて大丈夫かおれ
4.でもやっぱりおれがついててやらないとだめかもしんない
5.ていうかこれはこれで大物だよな
こうして彼ら二人の歴史に残る腐れ縁、もとい、名コンビは当分のあいだ続くこととなる。