うちへおいでよ (21)
文字数 1,009文字
ほんとはね、お風呂の素敵な湯気の中でこの章を終わらせる計画だったんだけど、作者が調子こいてトリビアなんか書いてるうちに、ミランダちゃんがのぼせてしまったのだ。
くたっとなった彼女を見てパトリシアちゃんが動転して、がばっとお姫さま抱っこして連れ出してパウダールームで介抱する。かいがいしく額を冷やしてアクエリアスとか飲ませて(口移しではない)体もふいてあげて(すみずみまで)、「ありがとう、もう大丈夫だから」って本人が言ってるのにまた無理やりお姫さま抱っこして、お部屋に帰ってきた。
どこまで甘々なのパトリシア。
尽くしたいタイプ。
ふだんのミランダなら「やめんかい」と跳び蹴りくらい食わせてるかもしれないのだが、何せいまアリアのふりをしているからそれもできない。
というか……
アリアになりきっておとなしく世話を焼かれているうちに。
うん。
やっぱり、快感になってきた。
いままでの人生、ずっと「しっかり者のお姉ちゃん」をやってきて、こんなに誰かに身をまかせきるということがなかった。もちろん
とくにここしばらくは地上で姉妹ふたり暮らしで、ずっと気を張りつめていた。
あらためて、そのことに気づく。
さっきまで、髪を乾かしてもらっていた。自分の髪はおだんごひとつまともに結えないパトちゃんなのに、ブローはじつに上手い。熱風が直接肌に当たらないように手の甲でかばってくれながら、優しく髪と髪のあいだに指を入れて梳いていく。あっというまにふわふわのさらさらになった。
いまはまた半強制的に布団の上にうつぶせにされて、背中をマッサージされている。これがまた上手い。強すぎず弱すぎず、痛きもちいい。体がすっきりとほぐれていく。
(許せん)
顔を伏せたまま、心の中でつぶやくミランダだ。
(義仲)
(これをずっとやってもらってたのか)
作者もまったく同感だ。
※
巴ちゃんの『平家物語』の中での肩書は「
巴ちゃんみたいな逸材にめぐまれていない他の武将たちは、男の子のお小姓を連れてることが多いですよね。