参考文献、というか元ネタ公開帳
文字数 1,869文字
『書物の王国 20 義経』国書刊行会,2000年.
――御伽草子や古浄瑠璃などの義経伝説を集めた書籍です。部分的に現代語訳にしてくれています。「御曹子島渡」や「義経地獄破」など、本文中でご紹介したトンデモ話はここから取りました。笑
菱沼一憲『源義経の合戦と戦略 その伝説と実像』角川書店,2005年.
菱沼一憲『源頼朝 鎌倉幕府草創への道』戎光祥出版,2017年.
――頼朝と義経の仲たがいを、
「頼朝が嫉妬深くてチキンだった」でもなく、
「義経がわがままでバカだった」でもなく、
この二つの通説のどちらにも陥らずに解釈してくれている素敵な二作です。
私も前から直感でそう思っていたので、とても心強く感じています。
「(頼朝は)義経に嫉妬するくらいなら初めから義経に任せなきゃいいのだ。そんな肝の小さい男に幕府が開けるわけがない」という著者の主張に、百パーセント賛成です。
それならなぜ兄弟は決裂したのか。ご自分の答えを著者は書いてくれていますが、ここには引用しません。私の答えもほぼそれと同じなので、いま書いているおはなしの中で皆さんにお伝えしていきます。^^
美川圭『後白河天皇 日本第一の大天狗』ミネルヴァ書房,2015年.
――源平争乱の悪玉のように言われがちな後白河院の生涯をていねいに追い、この型破りな君主の魅力や変なところ(笑)(それも魅力のうちですが)をたっぷり読ませてくれる一冊です。
例の「比類少なきの暗主」というのはいろいろな所で引用されているのを見たのですが、これを「いつ・どんなときに・誰が」言ったかという点からしっかり読み解いてみせてくれたのはこの本です。
ふだんは冷静沈着な九条兼実くん、じつはさらに傑作なマジ切れ発言があったんですね。『ダブルダブル』の世界観にはちょっと過激すぎるかなと思って引用を遠慮したんですけど、あまりに面白すぎてがまんできないので、ここにこっそり引いておきます。(本書156頁より。)
あれです。後白河院と「なんでおれ(=兼実くん)じゃなくてあいつなの」の基通くんが、まあそうゆうことになっていたと知ったときの兼実くんの一言。
「君臣合体の儀、これを以て至極となすべきか」(君臣合体ここに極まれりってやつだよな)
(笑笑笑)
これをすまして紹介してくれている著者のセンスが素敵。
同じ著者には『院政 ―もう一つの天皇制(増補版)』(中公新書、2021年。去年の4月に出たばっかり!)という入門書もあり、とてもわかりやすいです。私が国文学科の学生だったらレポートの参考にぜったい使うと思いました。^^
『平家物語1~4』梶原正昭(校注),岩波書店(ワイド版岩波文庫),2008年.
『平家物語 上・中・下』水原一(校注),新潮社(新潮日本古典集成),2016年.
――平家物語ってじつはすごくいろんなバージョンがあって、校訂によってぜんぜん本文が違うことにいまさら気づきました。引用した「木曽最期」、岩波と新潮と両方を参考にしました。義仲の「ちっちゃいときから~」発言は岩波版にはないんです。でも兼平の決め台詞は、私の記憶にあるのは岩波のほうに近くて、教科書に載っていたのもこっちだったのかなと思います。
『梁塵秘抄』も岩波と新潮の両方にお世話になっています。
本ではないけれど、人形浄瑠璃『義経千本桜』についてはこのサイトが超充実してます!
◆文化デジタルライブラリー 文楽編・義経千本桜
https://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/contents/learn/edc24/index.html
静ちゃんと忠信くんの吉野山ことりっぷ(笑)もYouTubeで視聴できます。
◆文楽『義経千本桜』より四段目「道行初音旅」
https://www.youtube.com/watch?v=dFH-8vA9YiM
個人的にはラストから2分半前(32:26~)、忠信くんが静ちゃんのお着物のすそをぽんぽんとはたいてあげるところがツボです。やーん、可愛すぎ!
いそいで義経のあとを追っているはずなのに、この二人はいったい何をイチャイチャしてるんでしょうか(笑)。途中で源平合戦ごっこなんかしちゃって、扇で「えい、えい」とかって(笑)。
誰も口に出さないけど、これ見て思わない人いないですよね。「だからもう静ちゃんは忠信くんとけっこんしてしまえ!」って(笑笑)。
あ、でも四郎くんが静ちゃんを好きだという設定は『千本桜』にはありません。私が勝手に作っています。^^