うちへおいでよ (19)
文字数 1,244文字
バスタオルを体に巻いた姿でもじもじしている。ミランダと目が合うと、まぶしそうに、はずかしそうに笑った。
「ていうか……すみません。わたしも、お風呂、入りたくなっちゃって。
勤務時間中ですけど」
「ああっすみません! タンバリンは! ちゃんとコインロッカーに入れましたから……」
きゅうに叫んだかと思うと、語尾が蚊の鳴くような声になってうつむいた。湯気の中に入ってきたばかりなのに、もうのぼせてしまったかのように頬が染まっている。
ミランダはつい、くすっと笑ってしまった。
(面白い子)
だが、面白いだけではすまなかったのだ。
「あのう……、その……」
思いきったように上げた目が、憧れでうっとりとうるんでいる。
「御前は、おきれいなんですね……お胸とか……柔らかそうで」
(は?!)
「はずかしいなぁ、わたし、こんなだから」体に巻いた白いバスタオルに手をかけたまま、うつむいてもじもじしている。
(な、何なん? まさかこの子……にゅ、にゅーはーふとか?!)
ミランダ、疑惑がありありと顔に出てしまっていたのだろう。相手はあわててぶんぶんと首を振った。
「ち、ちがいます、そんなんじゃありません! わたし女です。これ(タオル)めくったらおっきいのがついてるとかそんなんじゃ」
思いきったようにはらりとバスタオルをほどく。
「失礼します」
すらりとひきしまった体に、しかしミランダの目はやはり、釘付けになった。
たしかに正真正銘の女体。ではあるのだが。
腹筋が。
うっすら、割れかけている。
(アスリート……?!)
はずかしそうに湯舟に入ってきた。
色が、ぬけるように白い。
おかげで湯舟の湯まで白く映り、柔らかに輝く。色白の人といっしょに温泉に入ったことのあるかたならわかっていただけるだろう。
やーん、素敵! いいねいいね。そう、このあたりで美少女二人の入浴シーンなんかどうかなーと思ったのだ。しかもちょっと百合っぽい感じで! むふふ。
すみません一人で興奮して。読者もいっしょに興奮してくだされば何よりです。
なのですが、
「あれれ」
このアナザー美少女、ほどけかけたまとめ髪をあわてて押さえたりなんかしている。ドジっ子キャラか。うーむ。お風呂出たらメガネっ子だったりして。ま、それは後で考えよう。
髪の量が多い。豊かだ。つまり長い。
色が白くて髪が長くて、とっても美人――
この段階で、ピンポン! この子が誰かわかった人は、相当の『平家物語』ファンですね。
色白く髪長く、容顔まことに優れたり。ありがたき
「安心してください。わたし、お味方です」
にこにこしているが、
「ああー、あれ?」
さっきから、まとめ髪がどんどん崩壊するのを押さえようとおたおたしている。別の意味で安心できない。
ミランダが後ろ頭に汗をかいていても無理はない。