あなたの庭では遊ばない (4)
文字数 908文字
「困るよ、ああいうのは」
謝っている男がいて、笑ってたしなめている男がいる。
「悪かった」
「すぐ頭に血が昇るのはきみの悪いくせだよ、文覚くん。また島流しにしなくちゃいけなくなるじゃないか」
開け放した窓から、スタイリッシュなモノクロームの石の庭が見える。
本当は禅宗の石庭は、源平時代の三百年後にならないと作られないのだが、ここは設定上大事なところなのでどうか目をつぶっていただきたい。
お寺に来たわけではなく、後白河ローレンスのプライベートパレスだ。
涼しげな冷茶などふるまわれて、文覚バルタザールはいたく恐縮している。広い肩幅をしょんぼりとすぼめている。
「そんなに小さくならなくても」ローレンスが笑う。「きみらしくない。ここは気心の知れた者しか置いていないのだから、もっとくつろいでくれないかな」冷茶のグラスを置いて退出していく使用人を見送りつつ、しっかりと念を押すように言った。
「てっきりおまえの仕業だと」
「わたしを買いかぶりすぎだよ。新規の次元を開くだけならもっと下位の者でもできる」
「だけど石のやつらに介入できるのは」
「別の石だろうね。彼らも文字どおり、一枚岩ではないから。ようするに
ほっと嘆息する。まるで
「とにかく、前もって連絡してよね。まあ来るだろうとは思っていたけど」
「スマホ持ってないだろ」
「公式にはね」
にっこり笑って、中古のWiiと見えた箱のふたをぱちんと外す。「機械オンチでゲームしかできないということにしてあるんだ」
取り出した小さな板から自分の板へ、すぐさま友だち申請を告げる着信音が響いて、あっけにとられるバルタザールだ。
「吸う?」ガラスの灰皿をさし出された。黒の
高級品に縁のないバルタザールでも、さすがにふつうは煙草の灰を押しつけるような品物じゃないことくらいわかる。
「おまえが吸うなら」
「わたしは禁煙した」
「うそだろ!」
「ほんと。
口ではぼやきながら、あふれんばかりの笑顔だ。