あなたの庭では遊ばない (1)
文字数 372文字
陽射しだ。
頬の下の青草が、ほんのりと濡れている。
目覚める――
ということは、自分はいままで、眠っていたのだろうか?
はっとして身を起こし、けががないか確かめる。
自分にではない。
彼女にだ。
彼女も目を開けた。横たわったまま、こちらを見上げている。
「大丈夫?」
「うん」ぱっちりと目を開けて、まだ見上げている。「あのね」
「うん?」
「見て」
上をさす指につられて、ふり仰いだ。
桜だ。
透きとおる青空に、ふくふくと色づいた、八重の桜。夢のような。
夢――
浄土か?
ここは、どこだ? いまは、いつだ?
「助かった、のかな」小さな声でアリアが言う。
「たぶん」
そう答えてはみるものの、胸がいっぱいで、次の言葉が出てこないクリストフだ。
「し……」
「シシ神様が、私に生きろと言ってくれた」
「違う違う佐藤くん。それ『もののけ姫』のラスト」