あなたの庭では遊ばない (12)
文字数 425文字
ミランダの悲鳴に、はっとわれにかえるフロリアン。金色に光ってまなじりまで裂けていた眼に、ふつうの色が戻ってくる。
両手をゆるめるが、相手はすでに虫の息だ。
「あんたか? 御曹司と御前を襲ったのは」
フロリアンもミランダも、ジョバンニと対面するのは初めてだ。
弱々しくむせ、あえぎながら、ジョバンニがかすかにうなずく。
「誰に言われた? 鎌倉殿か?」
かすかにかぶりを振る。
その目からひとすじ、涙が流れて落ちる。
「誰か言え。鎌倉殿に伝える。おれが敵を討ってやってもいい」
ジョバンニの目が見開かれ、唇がふるえた。
安堵と無念。両方の表情だ。
「や、ま……」
涙があふれる。あふれて落ちる。
だが、男はすでにこと切れていた。
見る見るうちにジョバンニの体は縮み、黒い燃え殻となり、灰となってわずかにフロリアンの手の中に残った。
この小説始まって以来、初の死者だ。
「山」
フロリアンは低くうなり、ミランダをふり返る。
「どの山だ?」