間奏曲または幕間劇(インタールード)その1

文字数 1,370文字

 頼朝カミーユと政人オーギュスト、学食でランチデート※中。 ※彼視点

オーギュスト「あのさ」
カミーユ「何?」
オーギュスト「きみが後白河院を『日本第一の大天狗』って罵倒したって噂だけど」
カミーユ「ああ」

オーギュスト「あれデマじゃないの?」
カミーユ「(あっさり)事実」
オーギュスト「他の人のこと指してたとか諸説あるけど」
カミーユ「(あっさり)本人」

オーギュスト「度胸あるよね……相手、国家元首でしょ」
カミーユ「だってあいつ」
オーギュスト「あいつ呼ばわりか」

カミーユ「うちのバカ弟が調子こいて、わたしの討伐命令を院におねだりしたじゃない」
オーギュスト「うん」
カミーユ「院も困ったんだと思うの、断りきれなくて。うちの弟、天性のおねだり上手だから。そこはわかる。わたしたち姉弟が殺しあえばちょうどいいわフッフッフッとか、そこまでどす黒い人じゃないよ」
オーギュスト「言い切れる?」
カミーユ「だってあれだけ熱烈な仏教徒(ブッダのファン)なんだよ。さすがにバチが当たりそうな極悪非道はできないよ。怖いよ。そこ、現代の歴史小説家の先生方わかってあげてないと思う」
オーギュスト(わかりみが深い……)

カミーユ「でもさあいつ! うちのバカ弟にわたし討伐命令出しといて!」
オーギュスト(始まったぞ)
カミーユ「六日後にわたしのところに『あれ冗談だからね(笑)』って手紙来たの。(笑)って何、(笑)って。あり得ない(怒)」
オーギュスト「あー(院もやらかしたな)」

カミーユ「わたし思わず激怒して、勢いで弟の討伐命令申請したら通っちゃって。弟に出てから二十三日後だよ。速すぎない?」
オーギュスト「クーリングオフだな」
カミーユ「信じられない。節操なさすぎ(怒)」
オーギュスト「由良ほんと曲がったこと許せない性格だよね」
カミーユ「でもふつうなくない? なんで彼ああなんだと思う?」

オーギュスト「それはさ」
カミーユ「うん」
オーギュスト「……」(言っていいかなあ。地雷のにおいがする)
カミーユ「何?」
オーギュスト「うん……」
カミーユ「言って言って」

オーギュスト「きみが怖かったんだよ。院も」
カミーユ「……」

オーギュスト「きみの伝記とか年表とか読んでて思った。なんかしょっちゅう『頼朝は激怒して』って書かれてるなあって」
カミーユ「……」
オーギュスト「由良怒るとほんと怖いから。みんなびびってるんだよ。後白河院でさえ」
カミーユ「……」
オーギュスト「もちろん相手が間違ったことするからなんだけど……あっ」

 カミーユ、完全に涙目。

オーギュスト「あわわわわ」
カミーユ「だよね。わたしやっぱり、性格悪いよね。可愛くないよね(涙)」
オーギュスト「いや可愛い! 可愛いから!(超~可愛いから!)」
カミーユ「みんなに嫌われてるよね(涙)」
オーギュスト「嫌われてないから!(みんなきみが大好きなの! きみに嫌われたくないの!)」
カミーユ「『御恩と奉公』っていうシステム作っちゃったけど、誰もついてきてくれなかったらどうしよう(涙)」
オーギュスト「ついて行くから!!」

カミーユ「(ぽつりと)アリアさん」
オーギュスト「え?」
カミーユ「アリアさんに、女子力アップ講座とか習いたい(涙)」
オーギュスト「ええ?!」

オーギュスト(ああ、このいじけスパイラルに入ると長いんだよな……(嘆息))

 今日も心労の絶えないオーギュストであった。
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登場人物紹介

波多野静/アリア(はたのしずか/ありあ)


この物語のヒロイン。明るく素直で天然。特技は歌とダンスと水泳。惚れっぽいのが玉にキズ。海霊族(ネレイド)。

佐藤四郎忠信/クリストフ(さとうしろうただのぶ/くりすとふ)


アリアの同学年生(クラスは違う)。長身で俊足だが、内気で目立つのが苦手。極端な無口。女子に対する耐性ゼロ。アリアに片思い中。水狐(ウォーターフォックス)。

波多野遥/ミランダ(はたのはるか/みらんだ)


アリアの姉。妹思いでクールかつ熱血。特技はアリアと同じく歌とダンスと水泳。アリアとよく似た容貌だが、5センチ背が高い。海霊族(ネレイド)。

水原九郎義経/クロード(みずはらくろうよしつね/くろーど)


アリアの同級生で恋人。小柄だが学年一の美貌で、すでに女子の半数は陥落させている(推定)。身体能力、とくに跳躍力に優れ、お気楽な言動で周囲をふりまわす。ベンジャミンたちから「御曹司」と呼ばれている。樹霊族(ドリュアード)。

武蔵弁慶/ベンジャミン(むさしべんけい/べんじゃみん)


アリアの同級生。筋骨たくましい大男だが、冷徹な知性派でもあり、クロードの暴走をつねに(かろうじて)食い止めている。じつは料理男子。人馬族(ケンタウロス)。

佐藤三郎嗣信/フロリアン(さとうさぶろうつぐのぶ/ふろりあん)


クリストフの兄。容貌・性格・身体能力ともにクリストフとよく似ている。ただし左肩から右脇腹にかけて貫通創あり(一度死亡)。ミランダに片思い中。火狐(ファイアーフォックス)。

水原由良頼朝/カミーユ(みずはらゆらよりとも/かみーゆ)


クロードの異母姉。アリアやクロードたちとは別の全寮制高校に学ぶ。男装して生活している。頭脳明晰、真面目で誠実だが、男心も女心もまったく解さないのが玉にキズ。樹霊族(ドリュアード)。

遠藤盛遠/文覚/バルタザール(えんどうもりとお/もんがく/ばるたざーる)


カミーユとは中学時代からの先輩後輩の仲。アリアとミランダとは江ノ電の中で知り合う。荒海を一喝して静める法力の持ち主。性格は豪快で、人情に厚い。水霊族(ナイアード)。

後白河雅仁/ローレンス(ごしらかわまさひと/ろーれんす)


法皇。この国の権力構造の最高位にありながら、一見ひょうひょうとした異端児の風貌を持つ。が、その本心は未知数。バルタザールとは熊野での修行仲間。龍族(ドラゴン)。

土佐昌俊/ジョバンニ(とさしょうしゅん/じょばんに)


ベンジャミンのかつての修行仲間。その後カミーユに仕えていたはずだったが、詳細不明の経緯によって刺客となり、謎のダイイング・メッセージを残して世を去る。土霊族(ノーム)。

畠山次郎重忠/ロバート(はたけやまじろうしげただ/ろばーと)


クロードとベンジャミンのかつての同級生。いまは転校してカミーユの高校にいる。清廉潔白な人柄で「坂東武士の鑑(かがみ)」と称される。見た目しゅっとしているのに力持ち。人馬族(ケンタウロス)。

北条政人/オーギュスト(ほうじょうまさと/おーぎゅすと)

カミーユの同級生。寮では隣室。そつのない完璧な優等生。影となり日陰となり(?)カミーユを支えるが、いまだに友達以上恋人未満の生殺しポジションに置かれている。水霊族(ナイアード)。

滋子/ジェニファー(しげこ/じぇにふぁー)

後白河院の女御。院号は建春門院。かの平清盛の義妹(妻の妹)。美貌と知性と気くばりを兼ね備えたパーフェクトなレディ。溺愛してくる夫を甘やかしつつ、さりげなく手綱をとっている。樹霊族(ドリュアード)。

横川覚範/セバスチャン(よかわかくはん/せばすちゃん)


比叡山延暦寺(天台宗)の荒法師。四郎忠信とは宿命のライバル(に今後なるはず)。山霊族(オレアード)。

阿野全成/アントワーヌ(あのぜんじょう/あんとわーぬ)


醍醐寺(真言宗)の荒法師。クロードの同母兄、カミーユの異母兄※。悪禅師(あくぜんじ)の異名を取る。謎の使命を帯びてアリアに近づく。樹霊族(ドリュアード)。

※史実では頼朝より年下ですが、このお話ではお兄さんに設定してあります。

金王丸/マルティノ(こんのうまる/まるてぃの)


土佐坊ジョバンニの弟。推定年齢十歳前後(ヒューマノイド換算)。聡明で献身的。思いがけない形で佐藤兄弟の前にあらわれ、ある重大な秘密を告げる。土霊族(ノーム)。化体はカナヘビ=草蜥蜴(グラスリザード)。

巴/パトリシア(ともえ/ぱとりしあ)


一人当千の女武者。ミランダの盟友となる。素はおちゃめで尽くし好き。恋人の木曽義仲を失い、彼の菩提を弔って生きていたが、正直たいくつしていたところだった。土霊族(ノーム)。

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