トリビア:佐藤兄弟のキャラ設定@『平治物語』他

文字数 1,714文字

☆その1

『平治物語』に、なんと佐藤兄弟のキャラ設定があることを発見した。
 奥州にやってきた元服したてほやほやの義経に、佐藤家が二人の息子を家来として差し出すシーンだ。お母さんの尼さんの言葉。

「次信(=嗣信)はきっとお役に立つ者ですが、お酒が好きで、酔うとちょっと口が悪くなります。
 忠信は下戸で、もとから性格がものすごく誠実な子です」
(次信は御用には立まいらすべき者なれ共、上戸にて、酒に酔ぬれば、すこし口あらなる者也。忠信は下戸にて、天性(てんせい)極信(ごくしん)の者なり)

 なんと私(作者)のキャラ設定とどんぴしゃだったよ!!(瞠目)

フロリアン「おふくろさま、ひどっ」
作者「(笑)」
フロ「でも四郎はともかく、おれのこのキャラ設定意味なくないですか?」
作者「どして?」
フロ「だっておれが酔っぱらって失敗する話とかとくに聞いてないですよ?」
作者「たしかに」

作者「じゃ失敗する話わたしが考える(笑)」
フロ「ひどっ!!」

☆その2

 佐藤兄弟の年齢は、義経の五、六歳上という説と、五、六歳下という説があって、十二歳くらいの振れ幅がある。なんだそれは。
 この小説(ダブルダブル)ではまん中取って同年齢にしてあるけど、五、六歳上と下じゃぜんぜん違いませんか。
 かりに三郎が六歳下とする。
 そうすると、主従が出会ったとき、義経十六歳だから三郎はマイナス六歳で十歳になってしまう。

 十歳で「お酒が好きで酔うと口が悪くなる」ってどんな小学生だ。

☆その3

 ものの本によると、「義経の婿」と称する人物がいる。(源有綱(ありつな)
 源平合戦をいっしょに戦っている。

 婿?

 婿???

 婿ってことは、義経に娘がいて、その子の結婚相手ということだ。
 なんか驚きのあまり「週末とは土曜と日曜のことだ」みたいなまぬけなこと書いちゃったが。

 そもそも、「永遠の少年」的なイメージのある義経だが、じつは奥さんが何人もいる。まあ当時の武人としてはふつうだ。
 史実で確定しているだけでも静ちゃん以外に二人いる(そのうちのどちらが「正室」なのかも微妙なのでそのへんも割愛)。もちろんレジェンドだとその他にもーっといろいろ恋愛話があって義経モテまくりだ。
 一番驚いたエピソードは……驚きすぎたのでそのうち改めて書く。二番目に驚いたのは「鬼の姫@超美人とえっちしたらそれがお父さんの鬼にばれて、姫は怒ったお父さん鬼に八つ裂きにされて殺されちゃうのだが彼女は江ノ島の弁天さまの生まれ変わりだったから大丈夫」(御伽草子『御曹子島渡』)というやつだ。何が大丈夫なんだかわからない。

 話がそれた。とりあえずそういう彼のアナザー千人斬りストーリーはすべてノーカンとさせていただく。
 いま書いておきたいのは、史実で確定の二人の奥さんのどちらも、問題の「娘」のお母さんじゃないらしいということなのだ。もちろん静ちゃんもだ。

 そのお母さんは、いちばん最初の奥さんで、佐藤兄弟の妹または姉という説がある。
 義経が最初に奥州ですごしたのは十六歳から二十二歳のあいだのはずなので、
 奥州に着いた瞬間、佐藤シスターをお嫁にもらって速攻で子どもを作ったとする。源平合戦のころ義経は二十六歳とかなので、最速なら娘ちゃんも九歳くらいにはなってる。その歳ならまあ形だけの縁組ならあり得なくはない。源氏の御曹子だから縁組したいと名乗り出る人たちがいるのも自然な話だ。

 それでも、「婿」っていう字があまりに衝撃で、作者は二度見どころか五度見くらいした。
 別の説では「婿」ではなく「妹婿」だともあり、それ見てほっとしたりした。
 が……、そうなると「婿」のほうがやっぱり面白くも思えてくる。

 これ『ダブルダブル』に採用すると、義経は四郎と同学年で、お家へ帰ると四郎のお姉ちゃんか妹が「おかえりなさい。ほ~らパパでちゅよ」って赤ちゃん抱いて出てくるの図になる。どんな高校生だ。かつその「ばぶぅ」と言ってる赤ちゃんの夫くんなる男子(有綱くん)まで「お義父さんおかえりなさい」って出てくるの図になる。ややこしい。
 この四人と三郎四郎のみんなでサイゼリア行ってマグナム(ワインの大瓶)空けたりしたらカオスじゃないか。
 面白すぎるのでやっぱり不採用にします。
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登場人物紹介

波多野静/アリア(はたのしずか/ありあ)


この物語のヒロイン。明るく素直で天然。特技は歌とダンスと水泳。惚れっぽいのが玉にキズ。海霊族(ネレイド)。

佐藤四郎忠信/クリストフ(さとうしろうただのぶ/くりすとふ)


アリアの同学年生(クラスは違う)。長身で俊足だが、内気で目立つのが苦手。極端な無口。女子に対する耐性ゼロ。アリアに片思い中。水狐(ウォーターフォックス)。

波多野遥/ミランダ(はたのはるか/みらんだ)


アリアの姉。妹思いでクールかつ熱血。特技はアリアと同じく歌とダンスと水泳。アリアとよく似た容貌だが、5センチ背が高い。海霊族(ネレイド)。

水原九郎義経/クロード(みずはらくろうよしつね/くろーど)


アリアの同級生で恋人。小柄だが学年一の美貌で、すでに女子の半数は陥落させている(推定)。身体能力、とくに跳躍力に優れ、お気楽な言動で周囲をふりまわす。ベンジャミンたちから「御曹司」と呼ばれている。樹霊族(ドリュアード)。

武蔵弁慶/ベンジャミン(むさしべんけい/べんじゃみん)


アリアの同級生。筋骨たくましい大男だが、冷徹な知性派でもあり、クロードの暴走をつねに(かろうじて)食い止めている。じつは料理男子。人馬族(ケンタウロス)。

佐藤三郎嗣信/フロリアン(さとうさぶろうつぐのぶ/ふろりあん)


クリストフの兄。容貌・性格・身体能力ともにクリストフとよく似ている。ただし左肩から右脇腹にかけて貫通創あり(一度死亡)。ミランダに片思い中。火狐(ファイアーフォックス)。

水原由良頼朝/カミーユ(みずはらゆらよりとも/かみーゆ)


クロードの異母姉。アリアやクロードたちとは別の全寮制高校に学ぶ。男装して生活している。頭脳明晰、真面目で誠実だが、男心も女心もまったく解さないのが玉にキズ。樹霊族(ドリュアード)。

遠藤盛遠/文覚/バルタザール(えんどうもりとお/もんがく/ばるたざーる)


カミーユとは中学時代からの先輩後輩の仲。アリアとミランダとは江ノ電の中で知り合う。荒海を一喝して静める法力の持ち主。性格は豪快で、人情に厚い。水霊族(ナイアード)。

後白河雅仁/ローレンス(ごしらかわまさひと/ろーれんす)


法皇。この国の権力構造の最高位にありながら、一見ひょうひょうとした異端児の風貌を持つ。が、その本心は未知数。バルタザールとは熊野での修行仲間。龍族(ドラゴン)。

土佐昌俊/ジョバンニ(とさしょうしゅん/じょばんに)


ベンジャミンのかつての修行仲間。その後カミーユに仕えていたはずだったが、詳細不明の経緯によって刺客となり、謎のダイイング・メッセージを残して世を去る。土霊族(ノーム)。

畠山次郎重忠/ロバート(はたけやまじろうしげただ/ろばーと)


クロードとベンジャミンのかつての同級生。いまは転校してカミーユの高校にいる。清廉潔白な人柄で「坂東武士の鑑(かがみ)」と称される。見た目しゅっとしているのに力持ち。人馬族(ケンタウロス)。

北条政人/オーギュスト(ほうじょうまさと/おーぎゅすと)

カミーユの同級生。寮では隣室。そつのない完璧な優等生。影となり日陰となり(?)カミーユを支えるが、いまだに友達以上恋人未満の生殺しポジションに置かれている。水霊族(ナイアード)。

滋子/ジェニファー(しげこ/じぇにふぁー)

後白河院の女御。院号は建春門院。かの平清盛の義妹(妻の妹)。美貌と知性と気くばりを兼ね備えたパーフェクトなレディ。溺愛してくる夫を甘やかしつつ、さりげなく手綱をとっている。樹霊族(ドリュアード)。

横川覚範/セバスチャン(よかわかくはん/せばすちゃん)


比叡山延暦寺(天台宗)の荒法師。四郎忠信とは宿命のライバル(に今後なるはず)。山霊族(オレアード)。

阿野全成/アントワーヌ(あのぜんじょう/あんとわーぬ)


醍醐寺(真言宗)の荒法師。クロードの同母兄、カミーユの異母兄※。悪禅師(あくぜんじ)の異名を取る。謎の使命を帯びてアリアに近づく。樹霊族(ドリュアード)。

※史実では頼朝より年下ですが、このお話ではお兄さんに設定してあります。

金王丸/マルティノ(こんのうまる/まるてぃの)


土佐坊ジョバンニの弟。推定年齢十歳前後(ヒューマノイド換算)。聡明で献身的。思いがけない形で佐藤兄弟の前にあらわれ、ある重大な秘密を告げる。土霊族(ノーム)。化体はカナヘビ=草蜥蜴(グラスリザード)。

巴/パトリシア(ともえ/ぱとりしあ)


一人当千の女武者。ミランダの盟友となる。素はおちゃめで尽くし好き。恋人の木曽義仲を失い、彼の菩提を弔って生きていたが、正直たいくつしていたところだった。土霊族(ノーム)。

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