第40話 かたつむり

文字数 579文字

 今年の梅雨は、長そうだ。今日も雨。しとしと、五月雨。
 懲りずに、書く。誰のためでもない。
 今、「彼の一生」という、これは「学校拒否体験」の書き直しだけれど、これを書いていて、とっても、しんどい。内省話で、恐縮。
 自分の悪行が、やりきれない。どうしようもない。心臓、どきどき、ココロ、ざわざわ。いたたまれなくなって、部屋、うろうろ、廊下、行ったり来たりして、また部屋に戻って、窓開けた。

 庭に、椿がある。この家の、前住人が植えていった椿の、その太い幹に、ひとり、かたつむり。何を急いでいるのか、けっこうなスピードで、下へ、下へ進んでいた。一生懸命、ふたつの目、とがらせて。
 ぼくの家は、川の土手に面している。土手から地中を経て、笹が、庭のあちこちに生えている。昨日切ったのに、何もなかったように、もう、すっくと伸びて、立派な葉さえ、つけている。
 アジサイの花。ロウバイの緑。もみじの、新緑の手形。
 庭は、賑やかだ。みんな、雨に濡れて、なんだか、楽しそうだ。ウシガエルが、モーモー言っている。
 人間にとって、梅雨は鬱陶しい季節。でも、ほら、こんなに、雨に喜んでいる、素敵ないきもの達が、そこにいる…
 そんなことを書きたくなった。

 で、書いた。書いてみれば、たった、二行。
「みんな、なんだか楽しそうだ。
 人間にとっては…でも、…。」
 終わった。二行で、終わった。
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