第89話 2時間33分

文字数 930文字

 近年の最長通話記録。いやぁ、よく喋った。
 電話をもらい、こちらから、かけなおす。家人のスマホが通話料無料のため。
 相手は、予備校で知り合った先生。もう、長いおつきあい。
 元気? から始まって、最近読んでいる本の話やテレビの話、運転免許更新のための筆記試験の話…お金がない話などをして、笑い合って、ほかにどんな話をしたのか、よく覚えていない。
 よく笑い、笑われる。これほど楽しいことはない。何十年もつきあっていれば、もうお互いに相手がどんな性質の人間か、わかったつもりになっているし、今や「元・先生」に対してタメグチで喋っている。たまに敬語になるが、かたっくるしさをお互いに感じてしまう模様。「敬語は、イヤだねえ」などと言われたこともあり、もはや友達感覚。

 いろんな人と、何時間も居酒屋でくっちゃべったりしたり、先日も絵描きの家にお邪魔して、4、5時間もいたりした。が、一体何を話していたのか、断片的に覚えていても、内容の詳細はよく覚えていないことが多い。
 その雰囲気は覚えていても、何を話し合っていたのか?
 きっと、意見が対立する相手であったら、相手を説き伏せようとして、自分の言うことを真剣に考え、理路整然化作業を経て懸命に話すだろうから、内容も忘れない。そういう人も、いてくれた。
 友達は、甘い。いや、友達というより、どこか「同志」的であるのかもしれない。社会に対して何か訴えようとした活動を一緒にやったりしたし、絵を描くことと文を書くことの目的に共通点も多い。「めったにいない人」「通じ合える貴重な人」という意識もぼくにはあって、だから貴重な存在となる。(この連載を読んでくれる人にも、そんな意識を勝手に持っている)

 昨日は、興奮してよく眠れなかった。2時間半という時間は、意外と大きいのかもしれない。さきおとといあたりは、3万歩近く歩いてしまって、身体さんも驚いて、やはりよく眠れなかった。
「過ぎたるは及ばざるが…」というけれど、それは違うと思う。喋り過ぎ、歩き過ぎて、その熱が残存して眠れなくなる。「過ぎ」なければ、残存することもない。同じ眠れぬ夜であっても、その夜をつくる内容が違う。そもそも、「適当に」「いい加減に」が、ニガテだったのだ、僕は。
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