第81話 秋の気配

文字数 674文字

 時間が早く過ぎる。
 気持ちが、何かシュンとしているなぁ、と思ったら、夏の終わりの気配のせいだった(してしまえ、そのせいに)。
 春の終わり…梅雨の終わりの頃は、ヨシ、夏だ、と、なぜか気合も入ったものだが(どんなにイヤでも、どこかで気合の火が胸の内、灯った))秋はシュンとする。
 また冬が来て、年が明け、と連想がたやすくできるからだ。

 まだ9月も半ばだというのに、もう本屋ではカレンダーを売っていた。
 時間が早く感じられるのは、季節のせいだけではないようだ。
 何でも、早い。
 メールはすぐに相手に届くし、最新のニュースもすぐネットで見れる。
 天気予報など、1時間ごとの予報が表示される。何もそんなにまでしなくても、と思う。
「今日は、晴れ時々曇りです。」それだけで、いいんじゃないかと思う。

 モノの存在は、大きい。
 何か読むにしても、「本」だと、重さも手に感じられ、(よし、読もう)という気構え、態勢が自然に整う。
 だが、パソコンだと、読むというより、「読み流す」「見る」「眺める」になってしまう気がする。
 ページもめくらなくていいし、画面はモノというより、「ただあるもの」、通りすがりの他人みたいだ。
 その「他人」から、あれやこれやと情報を収集、知った気になって、カーソルひとつでサッサと飛べてしまう。
 スマホなんかも、きっと軽い。

 時間は、モノではない。ただ〇た□の枠に押し込められて、時として計られる。
 時間さんも、さぞ窮屈だろう。
 ミヒャエル・エンデの「モモ」に出てきた「時間泥棒」を想う。

 どう過ごそうが、一日は一日。一年は一年。一生は一生。
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