第94話 自知区
文字数 697文字
カマキリは、自分のカマの威力を信じて、向かってくる車輪にさえ刃向かうという。
過信は、自らの命を落とすほど、危険なものだ。自分には、こんな力がある── そんな力が、どれほどのものであるか、知った時に死んでいるほど、哀れなものはない。知った上で、その力の範囲内で生きて行くよう、工面する── これが、まことに生きる知恵だとおもう。
ところが、人間は、ことに僕は、欲が深い。自分の力以上のものを、自分に求めてしまう。カマキリの立ち振る舞いに似て、命取りになりかねない動きをする。
どうしたら謙虚に、ほんとうに謙虚に、生きれるだろうかと、よく考える。己に備わっているもの、与えられている環境、自分にできること・できぬことを判別し、できることを淡々とやって、一日一日が満たされていくこと。すでに
「お金はだけでは、幸せになれない」とは、ほとんど前時代からいわれてきた。では、どうしようか、と考えるより前に、考えることを放棄したような人が、幅を利かせている気がする。人の気持ちを考えられなくなったり、「お金がなければ何もできない」が最先端処世術のように、人心に定着したように感じる。僕もその一人だ。ただ、恥ずかしさだけは感じている。
快楽は瞬間的なものでしかないし、安楽は恒常的なものとおもう。何だかんだと考えたところで、具体的な方策を自分に施せずにいる。
考えを、ただ考えているだけでは、何も考えていないも同じにみえる。考える才能は万人が持っている。それを、形に表わすことが才能で、表わさなければ単なる無能とおもう。
僕は無能だ── と、心からの満足をもって、まだ言えない。
過信は、自らの命を落とすほど、危険なものだ。自分には、こんな力がある── そんな力が、どれほどのものであるか、知った時に死んでいるほど、哀れなものはない。知った上で、その力の範囲内で生きて行くよう、工面する── これが、まことに生きる知恵だとおもう。
ところが、人間は、ことに僕は、欲が深い。自分の力以上のものを、自分に求めてしまう。カマキリの立ち振る舞いに似て、命取りになりかねない動きをする。
どうしたら謙虚に、ほんとうに謙虚に、生きれるだろうかと、よく考える。己に備わっているもの、与えられている環境、自分にできること・できぬことを判別し、できることを淡々とやって、一日一日が満たされていくこと。すでに
足りている
ことを、知ること…「お金はだけでは、幸せになれない」とは、ほとんど前時代からいわれてきた。では、どうしようか、と考えるより前に、考えることを放棄したような人が、幅を利かせている気がする。人の気持ちを考えられなくなったり、「お金がなければ何もできない」が最先端処世術のように、人心に定着したように感じる。僕もその一人だ。ただ、恥ずかしさだけは感じている。
快楽は瞬間的なものでしかないし、安楽は恒常的なものとおもう。何だかんだと考えたところで、具体的な方策を自分に施せずにいる。
考えを、ただ考えているだけでは、何も考えていないも同じにみえる。考える才能は万人が持っている。それを、形に表わすことが才能で、表わさなければ単なる無能とおもう。
僕は無能だ── と、心からの満足をもって、まだ言えない。