第9話 あるもの、ないもの

文字数 466文字

 あるものは、ある。
 ないものは、ない。
 そして、目に見えるものだけが、あるものではない。
 目に見えないものでも、あるものは、ある。

 目に見えないものが、「ある」というのは、感じるところに、ある。
 それを感じるのは、自分自身であること。
 それが「ある」から、ぼくはそれを感じ、それが「ある」と思えるということ。
 それは、目に見えないのだけど。
「ない」ものからは、何も、「ある」とは思えないだろうし、「ない」ということしか、感じられない。

 では、その、「ある」もの、あるそのものは、何なのか。
 人の生命も、生命がどこにあるのか分からない。

 生命の終わりとは、心臓が停止することか。脳死がそうなのか。呼吸が止まることがそうなのか。
 たまたま人間は、とりあえず人間の形をして、そこに生命が宿っている、ということになっている。たまたま生命が、この形をしている、というだけなのだ。

 人の生命は、人の形をしている。その中にあるように見えるが、その中には、実はないようにも思える。
 どこにもないところから、生命は、はじまって、おわるように思える。
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