第82話

文字数 2,766文字


源三郎江戸日記(弟四部)82

それでは町の巡察に出掛けるぞと言うと銘々巡察に出掛けたのです、そんなに大きな城下ではないですが、綺麗に整備されており四国88個所めぐりの、巡礼姿の者が沢山行き来していたの、
です、1人の老人と娘の2人ずれが巡礼姿で前から歩いてきたので見ると、娘の手に抱えられてやっと歩いています、具合が悪いようじあがどうなされたと聞くと、にわかの腹痛で難渋して、
いますと言うので、

宿はと聞くとお遍路宿は空いておらず、宿を探しておりますと言うので、わしの泊まっている宿の女将に頼もうと言って連れて行くと、相部屋になりますがと言うので、それではわしの、
部屋に逗留させれば良いと言うと、承知しましたと言って部屋に連れて行き、フトンに寝かせて、道中籠から腹痛の薬を出して飲ませて、この薬は良く利くぞと言うと、ありがとう御座、
ります、

薬代ですが持ち合わせが余りないので、これをお納め下さいと言つて銀の簪を差し出すので、旅は道ずれ困った時はお互い様じあ気にしなくとも良いと言うと、済みませぬと言ったのです、
見たところ随分歳がはなれているようじあがと言うと、私の祖父に御座いますと言うので、そうでござるかまだ讃岐までは半分ありますがと聞くと、総ては回れませぬので飛び飛びにお参、
りしていますと言ったのです、

そろそろ利くころじあがと言うと、速見作之丞と申します、讃岐丸亀藩の隠居にござる、良く利く薬ですな殆ど痛みは無くなり申したかたじけないと言って、起き上がり水を飲んで生き返、
りました、急な腹痛にてまいりました、お松迷惑かけたなと言うと良かったですと言ったのです、これからどちらの寺にと聞くと、明日はここから3里離れた佛木寺にいきますと言うので、
丁度宇和島藩との国境にある寺ですな、

あそこは吉田藩領ですかなと聞くと宇和島藩領ですと言うので、ほう、わしが聞いたところによりますと吉田藩公が本堂を作る予定と言う事ですがと言うと、そうなりますと完全に吉田藩、
領内となります、自分の領地にする為の姑息な手段ですよと言うので、ならば近寄ると危ないのではと聞くと、お遍路は誰にも邪魔する事はできませぬ、お遍路に危害を加えれば幕府より、
きついお咎めがある決まりですと言うので、

そうで御座るか、気をつけてお行きなされと言って、それがし達は配下の部屋に逗留しますので、ここは、お2人でゆつくり逗留しなされと言うと、大勢でお遍路されているのですかと聞く、
ので、飛び飛びに御座るよと言って、部屋を出たのです、お松がお爺様何者でしょうかと聞くと、配下を連れての旅とはもしかして港に泊まっている幕府の役人かもしれぬと言うと、何し、
に来たのでしょうかと聞くと、

宇和島藩と吉田藩の揉め事を調べに来たのかもしれぬ、国境の状況を調べて早く国元に知らせねば、実態をしらばきついお咎めがあるやも知れぬ、明日ははや立ちして行方をくらまそう、
先程話したので佛木寺に行くはずじあ、問題はそこではないわ、そこから2里行った金剛山じああの山に銀鉱脈がある事は宇和島藩、吉田藩でも知られていない、なんとしても宇和島藩、
領にしなければならぬ、

後3万石をなんとしても増やさねば藩は崩壊するので、内密に宗贇様から調べるように言われたので、お松とのお遍路なら目立たないと思うて来たが、やはり歳には勝てんなと言ったの、
です、本当に銀が出るのですかとお松が聞くと、鎌倉時代に西園寺家が見つけたそうじあが、少し産出しただけだったそうじあ、去年山師が調べに入ったが戻ってこないので、わしが、
探しに行く事になったのじあ、

吉田藩が見つけたという情報はないので、おそらく滑落でもしたのではないかと思うが、丁度国境でもめている場所なのだよ、佛木寺が吉田藩領になればその銀山も吉田藩領となるので、
分かれば、さらに激しい国境争いになるじあろう、なんとしても事実を突き止めねばならぬ、後は殿がどうされるかじあと言ったのです、女将が入って来て、お食事はおかゆにしますか、
と聞くので、もう治ったので普通にしてくれと言うと、

それはよかったですね、湯にでも入って下されと言ったのです、源三郎が讃岐の者だと言っていたが、徳島に行き一番札所からここに来たとすれば金剛杖が磨り減っているずじあが、杖、
も服装も新しかったぞ、お遍路の格好をして何かを探っているのかも知れぬ、老人と娘では誰も疑わぬからな、それに佛木寺の本堂の話をしたら、宇和島藩領だと言うていたが、ひょっ、
としたら宇和島藩の者かもしれぬと言うと、

おみながそれでは国境の様子を見に来たのですかねと言うので、わからぬ、ともかく明日は佛木寺に行ってみようと言って、もう一度巡察に出たのです、もう一度居酒屋に入り酒と肴を、
頼みおみなと杯を重ねるとお客が少ないので、女中に幕府の軍船騒ぎでみんな家に帰ったのかと聞くと、ハイ、あの大砲の前までは満員だったのですよ、わたしも何も持たずに逃げたん、
ですよ言ったのです、

そうかそれは悪かった、あれは礼砲と言って、軍船が他国の港に入ったときに、儀礼公に撃つもんだと言うと、そうですか、そんな事誰も知りません、それにいつも藩士が武装しているの、
ですよ、早く本家とのいさかいがなくなれば良いのですがと言ったのです、国境全部でいさかいがあるのかと聞くと、国境には二つの村しかないので、この二つの村をめぐってだそうです、

それでその二つの村人は何と言っているのだと聞くと、二つとも吉田藩の方が年貢の取立ては厳しくないので吉田藩の方が良いと言うているだ、先代までは吉田藩領だったのに当代になっ、
て宇和島藩からその二つの村は吉田藩領では無いといって来たそうです、なんでも伊達本家の借財を返しきっていないので、返すように宇和島藩に言うて来たそうで、元々吉田藩領は宗家、
に借財を返す為に分けられたそうですが、

伊達政宗様がお亡くなりになった時をもって宇和島藩は返済を終了としたそうですと言うので、そうか最近宗家から、返済を迫られたので益々窮しているわけじあなと言うと、それでいさ、
かいが激しくなり、幕府に改易されるのではないかとの噂が立っているのですと話したのです、源三郎が確かに伊達秀宗殿は長男だが側室の子なので嫡子には出来ないので家康公が関が原、
時に約束した100万石を、

勝手に上杉と和睦したとして反故にされたので、その見返りに秀忠公に長男を大名に取り立てるように嘆願して、宇和島10万石を貰ったのじあよ、そのときに3万両の大金と家臣団をつけて、
送り出したのだ、貸したのだから必ず返すように言ったので、今の吉田藩領3万石を返済に充てていたのじあが、正宗公が無くなったので返済はやめたのじあろう、それを当代に言うて来た、
ので当然吉田藩領から払っていたので、

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