第102話

文字数 2,825文字


源三郎江戸日記(弟四部)102

それを名前にするとは何かいわくがあるのじあろうと言うと、殿の知り合いかも知れませんねと言うので、多分町奉行の倉橋か勘定奉行の西村の娘じあろう、家が取り潰しになったとは、
聞いておらぬが、あの一件で藩にいれなくなったのかも知れぬ、娘しかいなければ婿を取り存続を許されたはずじあがと言うと、悪い事をしたのが親父さんなら、婿の来てはないでしょ、
うと言うので、

そうじあな、それでいたたまれず退散したのかも知れぬ、それは悪い事をしてしまったなと酒を飲み干して、これから平助に会ってくる、村雨太夫にも会ってこようと言うと、それは危険、
ですよ、仇を打とうと、平助さんと知り合いだと分かり花月楼に入ったかも知れませんと言うので、いくら悪人とは言えその女子の父親を切ったのはわしじあからな、仇と思っても仕方な、
いじあろう、

ただ宗春が入り浸りとは気に要らんな、宗春の金づるを叩き潰したのでわしを恨んでいるじあろう、新井が近づいたのもその辺かもしれぬ、何かをやるつもりじあろう、よく知らせてくれ、
た、これ以上は深入りするな、相手は幕閣の悪と、尾張の極潰しだ、お前の身が危険になると言うと、大丈夫ですよ、あっしなんか相手にしませんよと笑ったのです、ここはあっしがと言、
うので、

すまんなと言うと、おみちが20文でいいですよと言うと、2朱を出して釣はいらんよと三蔵が言うと、まあ、おおきにと喜んだのです、籠を呼び吉原の花月楼へと言って籠に乗り込んだの、
です、つきやしたと言うので、籠賃を払い店のノレンを潜り平助はいるかと言うと、平助が出て来て、これは殿様こんな処にどうしなさったのですかと言って、まあこちらにと奥の部屋、
に案内したので座ると、

女中に酒をもってこらせたので、久しぶりじあなと杯を重ねると、ご出世おめでとう御座りますと言うので、目出度いのかのうと笑うと、うわさは三蔵さんから聞いていやす、四国に行、
ていなさったのでしょうと言うので、今日帰ったばかりじあと言うと、何か手前にと聞くので、尾張宗春殿が入りびたりと聞くがと言うと、ハイ、わたしも困っているのですよ、村雨、
太夫は人気がありまして、

宗春様がお放しにならぬので、他の客が文句言っているんでやんすよと言うので、そんなに気にいっているのかと聞くと、ハイ、それは上玉ですからと言うので、ここへは誰かが連れて、
来たのかと聞くと、店変わりで横浜の女郎屋から移って来たんですよと言うので、なぜここにと聞くと、なんでも本人がここに行きたいといったそうです、横浜と言うと小雪の店からか、
と聞くと、

そうです、なんでも品川から横浜に行ったそうですと言うので、その女は高鍋藩の元藩士の娘じあそうじあなと聞くと、ハイ、殿の知り合いですかと聞くので、名前はと聞くと、本名は、
言わないので知りませんがと言うので、その女子はわしを狙っているのじあろう、探し当ててここに来たのじあなと言うと、何か係わりがと聞くので、話しをすると、さいですか、来た、
時に村上源三郎と言うお武家様は来られるのかと聞きましたので、

あの方は女郎屋あ遊びはしないよと言いましたら、父上が同じ藩にいて聞いた事があるのでと言っていましたが、それからは殿の事は何もいいません、気立ての良い女子ですよと言う、
ので、会ってみるかと言うと、そうなら危ないですよと言うので、心配するな案内してくれ、わしをず~と待っていたのじあろうというと、村雨太夫は宗春様は厭なんだそうです太夫、
は断っても良い事になっていますが、

尾張様のご次男なのでと言って席について貰っていますと言うので、なぜなのだと聞くと、金でビンタを張る無粋な男は嫌いなんだそうです、やはり、武家の出なんですかねと言って、
部屋に案内したのです、酒を飲んでいると、村雨太夫が入って来て、武家風に三つ指ついてお久しゅう御座ります、エミに御座いますと言うので、そなたは戸田先生の娘子のエミ殿で、
はないかと言うと、

ハイ、お会いしとう御座いましたと言うので、なぜここにと言うと、まずは一献と言って酌をするので飲み干すと、私は西村の息子敬一郎の妻で御座りましたが、敬一郎ははやり病で、
嫁に行くと直ぐに他界したのです、そのまま西村家に残り婿を取り後を次ぐ事になっていたのです、あの事件で義父はなくなり藩からは婿を見つけて西村家を継ぐように言われたの、
ですが、

罪人の家系に婿に来る者等いるはずが御座りませぬ、義母が潔く藩を退散するので、実家に戻るように言われたのですが、見捨てるわけには行かず藩に許しをえて江戸に出て来たの、
です、しかし義母が労咳に係り、朝鮮人参しか治す方法はないと医師に言われたのですが、女子の細腕では買えないので借金をしている内に30両にもなり、返せないので身売りした、
のです、

その後義母は直ぐに亡くなり、わたしは品川から横浜に行ったのです、そこの女将に源三郎様の事を聞いたのてすが、そのときは源三郎様は上杉家の家老になっておられました手の届、
かない所にいってしまわれたと思いましたが、ひょつとしたら吉原に行けばお会いできるのではないかと思い、ここの平助旦那が源三郎様と知り合いだと聞きまして、ここに店替えし、
て貰ったのです、

何故兄上に言わなかったのだと言うと、兄は近習頭で奉公しています、父はなくなっています、わたしの為に戸田家に傷がついては父上に申し訳ありませぬ、死んでも言えぬ事で御座、
いました、それでは戸田先生はそなたが西村家にいるのを承知で兄上に上意討ちせよと申されたのかと言うと、ハイ、そうだと言っていましたが、兄上は白井様を討ち取りになり、

倉橋様と義父は源三郎様が討ち果たされたと父上には聞きました、本当は3人とも兄に討ち果たすように言われたそうです、源三郎様の手を汚させてはならぬとの事だったのだそうです、
がと言うので、いずれにしろわしはミエ殿の義父を切ったのです、仇を討ちたければ尋常に勝負いたしますがと言うと、そんなつもりでお待ちしていたのではありませぬ、道場に来ら、
れて、

いつもふざけておられましたな、剣の腕は強いのにピシ~と言うところが無く、いつも父上に小言を言われていたのを覚えています、普通は女子の部屋に入る武士はいないのに、いきな、
り入って来て、エミ殿饅頭はないか腹へって死にそうじやと言われるので、お出しするとムシャムシャと食べておられました、道場から源三郎は何処に行ったのじあと父上の声が聞こえ、
ると、

饅頭を口いっぱいに入れて、庭に出ていかれました、私はおかしくて、おかしくて、いまでも思いだすと、腹がいとうなりますと笑うので、そうでしな、もう随分昔の話になりました、
その後江戸詰めに父上がなったので、会う事もなくなりましたなと言うと、お慕い申していたのです、父上に言いましたら源三郎は部屋済みの身なればそれは敵わんと言われたのです、
暫くたって西村の話があり、

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