第98話

文字数 2,840文字


源三郎江戸日記(弟四部)98

翌日は船に乗り丸亀を後にして一路大阪に向ったのです、半日で大阪に着くと玄海屋の番頭が尾張の富蔵さんから飛脚便が届いていますと言うので、みると、ほぼ調査が終わりました、
大分難しい工事になります、人足は地元の百姓で素人です、又頭も治水は素人のようです、殿の朱印状のお陰でつぶさに調査できました、詳しくは名古屋城下の鶴屋と言う旅籠に逗留、
してお待ちしていますと書いてあったのです、

おみながどうですかと聞くので、大変な工事のようじあな、総ての水害をなくす事はできぬ、少なくなるようにするしかないじあろう、さて今日は巡察は無しでいいぞ、ゆつくり羽を、
延ばして来いと言うと、銘々は出掛けていったのです、おみなに何処に行きたいかと聞くと、京都の清水寺は遠いですかと聞くので、船でいけばそう遠くはない、京都は初めてじあな、
これから連れていってやろうと言って、

川船に乗り京都に向ったのです、程なく伏見に着き、馬を借りて清水寺に向ったのです、山門で馬を降り頼んで境内に上ると、おみなが、京の町は綺麗ですねと言うので、ここからの、
眺めが一番じあなと言ったのです、境内を降りて茶店に入り餡蜜を頼むと、美味しいですと喜んだのです、下に降りると祇園じあそこでお土産でも買うと良いと言って参道を降りて、
行き、

店を見て回ったのです、お土産も一杯買ったので、ついでだ離れているが金閣寺でも行くかと言うと、馬に乗り金閣寺に向ったのです、金閣寺に着くと池に金色に光った寺院が写るの、
を見ておみなは感激していたのです、京都に泊まり明日朝大阪にもどるぞ、もうすぐ夕方なので祇園に戻り飯を食おうといって、引き返して涼膳と言う料理屋に入ると、女将がお久、
ぶりです、

老中に出世されたそうでおめでとう御座りますと言うので、お松も息災であったか、中々繁盛しているようじあなと言うと、みんな源三郎様のお陰ですと言うので、側室のおみなじあ、
と言うと、お方様にございますか、お殿様にこの店を頂いたのですよ、宜しくお願いしますと言うので、そうでしたか、宜しゅう頼むと言うと、京料理をご相伴くださりませ、今用意、
していますと酌をしたので杯を重ねたのです、

それでは暫くお待ちくださいというと部屋を出て行ったのです、綺麗な人ですね、殿の京都のいい人ですかと聞くので、前に巡察に来た時に助けた者じあ、そばめでは無いよと言うと、
そうですかと笑ったのです、暫くして膳を運んで来て、豆腐とハモ料理の京会席ですと言うので、これは美味そうじあ、おみな、どんどん食べろと言うと、箸をつけて美味しいと言っ、
たのです、

今日はここにお泊りくだされと言うので、そうか、それではそうしょうと言うと、舞妓も呼びました直ぐにきますよと言うので、あれから何年経つと聞くと、もう8年は立ちました私も、
おばあさんになってしまいましたと言うので、まだまだ綺麗じあぞと言うと、有難う御座ります、お方様はとても綺麗な方ですねと言うと、おみながあなたも綺麗ですよ、江戸に来て、

殿の側室にならぬかと言うと、こんなに年増では無理で御座いますよと笑うので、殿はもっと年上ですよと言ったのです、おみな、もう亭主がいるのじあよと言うと、まあ、そうですか、
と言うと、部屋に板前が入って来て、ご無沙汰しておりますと挨拶するので、おお松吉か元気そうじあな娘は息災かと聞くと、後ろからみゆきに御座いますと挨拶するので、ほうもう、
こんなに大きくなったか、

今いくつじあと聞くと、8才に御座いますと言うので、そうか母親に似てべっぴんじあなと言うと、まあ、母上から聞いていたとおり、お口が上手なんですねと笑ったのです、兄弟はと、
聞くと一人娘なんですよと言うので、そうか、まだ若いので次は男を産むのじあよと言うと、お松が1人で十分ですよと言ったのです、それではごゅつくりと松吉と娘は出て行き、芸子、
が入って来て、

おいでやす、ひな菊に駒菊ですと挨拶して酌をするので飲み干したのです、お松も飲めと杯を渡すと、ひな菊が酌をして飲み干して美味しいというと、おみなが娘子は何処か殿に似て、
いましたがと言うので、まさかと言うと、お松がわたしもそう思いますと言うので、困った顔したのです、お松殿娘子は殿のお種でしょうと聞くと、ハイ、そうです済みませぬと言う、
と、

いいのですよ、江戸にくるなら引き取りますよと言うと、いいえ、松吉の子として育てます、お方様は気なになさらぬで良いですよと言うと、そうですか、もし、その気になったら江戸、
によこしなさいと言ったのです、お松が近衛様にはお会いになりましたかと聞くので、いや、明日でも寄って行こうと思っていると言うと、お喜びになりますよ殿のお陰で禁裏の公家、
の方も、

随分暮らし向きは良くなったそうです、時々ここにも来てくださりますと言うので、ミカドも元気と聞いておる目出度い事じあなと言うと、ミカドにもお会いになればよろしいのにと言、
うので、あまり親しくすると幕閣には悋気する者も多いのじあよ、京都に来た事は内緒しておいてくれと頼んだのです、おみなが、まあミカドにお会いになった事があるのですかと聞く、
ので、

もう8年も前の事じあよと言うと、お松が時々近衛様に殿の事をお聞きになるそうです、老中になられた事を聞かれてとても喜んでおられたそうですと言うので、これから尾張に行かねば、
ならぬのじあよ、急ぎの用事なのでゆっくりは出来ぬのじあ、そのうち来る事もあるじあろうというと、ハイ、今日お会いできて嬉しゅうございます、いきなり来られるので愕きました、
よと言うので、

おみなが、私が無理を言って連れて来てもらったのじあと言うと、そうで御座りましたか、又ゆつくり京見物に来てくださりませと言ったのです、ひな菊が一指しと言うと駒菊の三味線、
で踊りを披露したのです、おみなが京の舞いはとても優雅ですね良い思い出になりますと喜んでいたのです、色々歓談して遅くなったのでお開きにすると、お松が部屋に案内して湯も沸、
いていますと言うので、

湯に入りサツパリしたのです、おみなが湯に入って来ますと部屋を出ていくと、お松が寝酒と肴を持ってきたので、本当にみゆきはわしの子かと聞くと、ハイ、知らせないで済みませぬ、
と言うので、いやいいのだ、それは済まぬ事をしたないつでも江戸によこしてもよいぞと言うと、ここで育てますので心配しないで下され、お方様は気を悪くされたのではと聞くので、
そんな女子ではないよと言ったのです、

松吉は承知かときくと、ハイ、知っておりますがとても可愛がってくれますと言うので、この脇差をやろう、何かあれば持たしてやれば良いと渡すと、大切にお預かりしますと受取り、
ゆつくりおやすみなされませと部屋を出て行ったのです、おみなが帰って来たので脇刺しを与えておいた、尋ねて来たら宜しく頼むと言うと、承知しました、私にもお種を下さりませ、
と言うので、それでは頑張るかと笑ったのです、

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