第63話

文字数 2,727文字


源三郎江戸日記(弟四部)63

翌日評定で金の増産を間部が出すと、井上が理由を言って反対したのですが、米の価格が下がり庶民が喜ぶのだ、新井白石が値上がりに転ずる等あり得ない事ですと言うので、それは机上、
の空論であり、人の心情で価格は左右されると言うと、人の心の内等わかるはずはない、価格が暴騰すれば増産をやめれば良い、一気に30万両を鋳造するのではないと言うので、一旦上が、
り始めるととめるすべはありませんぞと言うと、

井上殿はよけいな心配をしているのでありますと突っぱねたのです、間部が議論は出尽くした、此の際は老中で採決しましょうと言うと、賛成3人で反対1人となり、間部が合議がなりまし、
たので即実行する事、にしますと言ったのです、旧小判の回収は両替商に集まる、小判と等価交換を従来とおりにすすめます、余剰の小判は幕府の金蔵に蓄えますと言って評議を終わった、
のです、

源三郎には合議で裁可されたとだけ報告があったのです、井上が上屋敷に尋ねてきて、裁可されてしまいましたというので、様子をみましょうと言って、大名、旗本の実入りが少なくなる、
事に気き、御三家を筆頭に幕府に苦情を言ってくると思います、我々も幕府の老中ですからまいりましたねと言って打開策を話すと、なる程それには奴らは反対できないでしょう、しかし、
机上の空論にはまいりますというので、

まだ始まったばかりですよ、失態を取り戻す為に何を言い出すやらわかりません、多分反省なんぞしませんよと言うと、価格が暴騰したら新井を罷免してやりますと怒るので、まあ、まあ、
となだめて、酒の支度をさせて杯を傾けたのです、それでは新井に痛い目にあってもらいましょう、奴の事だ賂に貰った金寸で米を買っているはずです、そして価格が戻り最高値になる、
まで待つつもりでしょうと言うと、

なんと価格が上がる事を承知の上ですかと言うので、わからぬはずがありません、おそらく予想しているでしょうと言うと、汚い奴めと酒を飲み干したのです、新井は8000石取りです、米、
は江戸屋が札差として受けています、米の収穫までは後8ケ月あり、残り5000石は江戸屋の蔵にあります、江戸屋にも直ぐに売れと言うたでしょう、しかし、急激に小売に卸しても蔵に入れ、
るには限りがあります、

預かっている総ての者の米を一気にはうれませぬ、売れるのは2か月分前倒しくらいのもんです、ところが始まると早く売ろうと投売りがはじまるので、価格は一月で3割りは暴落して2月め、
には半値となります、ここで飽和状態となり底値になります、米が売れないので札差は仕方なく大名、百姓には米が売れた事にして金寸を払うのです、米は札差、問屋の米蔵の中にあるわけ、
です、

後は一月はそのままですが、抱えている札差、問屋はその値では小売には卸さなくなります、一月で2割り位値上げして3月には元の値段になり落ち着きますが後2月すれば収穫した米が出回、
りますので、又少しづつ値下がりします、しかし、大損した大名、百姓は取り戻そうとして収穫米は通常の値段では承知しませんので価格は一転上昇を始めて、あっという間に元の二倍に、
なります、

江戸屋は新井に2000石分は今の価格の代金を払いますが残り3000石分は半値になるわけです、都合3500石の価格に目減りすると言う事です、買った5000両分の米を最高値になるまで待ちま、
すが、介入すればその日に価格が元に戻りますので元の木阿弥と言うわけです、1500石分の700両が損をします、取り戻そうと通常価格より高くなった時に買い増しすれば更に損をしますと、
言うと、

しかし大名、百姓が通常値の卸を承知しなければ米不足となり、札差、問屋は大損になるのではと言うので、前年分の預かり米は底値で売れた事にして金寸を払っています、値上がった時、
に蔵にあった分を売りさばいているので、大儲けしているのです、大名、百姓から二割増しで買っても損はしないわけですよ、大名、百姓は取り戻したら通常価格を承知するはずです、

しかしその間の借財は増えるますので、幕閣を恨むはずです、おそらく徳政令を出すように御三家が圧力をかけてくるでしょう、仕方ないので大名、旗本の借財の半分を免除すると言う、
徳政令を出す事になります、その時点では大名、旗本は大喜びするでしょうが、極端な貸し渋りが起きて大名、旗本はまたも困窮するわけですと話すと、なる程後にも響くわけですなと、
言って、

しかし川越藩も同じ被害にあいますぞと言うので、江戸屋には売り急ぎせず通常通りに売ってくれといえば、被害は最小限で済みます、無理して売ってもらわず金寸も通常通りの支払い、
にすれば良いのですと言うと、そうですな、なる程凄い読みですな、我が藩もそうしましょう、慌てて事を起こす奴が損をするわけだと言ったのです、幕府の金蔵の目減りはと聞くので、
地金の輸出の話しをすると、

しかし奴らが承知しますかなと言うので、何か手を考えますよと笑ったのです、それでは江戸屋にどうするか聞いてみましょうと、呼びに行かせて今の話をすると、さすがですな、わたし、
もそう思うています、大名、旗本の申しつけは守りますが、高値になっても儲かった金を返す事になりますので、問題はありません、一応話しはしますが誰も承知しないでしょうと言って、
上杉藩、高鍋藩の郡奉行様にも申しますと言うので、

わしからも言うておくと言ったのです、しかし、徳政令は困りますなと言うので、世の中の金が回らなくなり、またもや物価は上がりますよと言うので、そなたは大名の窮地をみかねて、
軒並み5分に金利をしているのじあろう、それを元の金利に上げれば損害なしじあろうというと、参りましたな、この事を予測して金利を下げるように申されたのですかと言うので、そう、
じあよ、

貸付金が元に戻れば又金利を下げれば良い、大儲けは出来ないが、儲かって蓄財できるのは同じじあよと言うと、そうですねと笑ったのです、井上が商人は損しないように出来ているのか、
と言うので、どこかが損すればどこかが儲かるわけです、かた一方ばかりに目を向けなければ商売は成り立ちますと言うので、じあから豪商と言われるのじあな、後取りもその腕をつけ、
させておかなければなと言うと、

わたしには男の子がおりませぬ、養子に迎えたいと思います、娘のみなが今24に御座います、中々良い相手が見つかりませぬ、どうでしょうか殿の側室にして子供が出来たら後を継がせ、
たいと思いますがと言うので、しかし、わしの子が大きな江戸屋の身代を守れる保障はないぞと言うと、大丈夫ですよと言うので、みなは何と言うているのじあ、わしとは2周りも違うぞ、
と言うと、

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