第14話

文字数 2,536文字


源三郎江戸日記(弟四部)14

暫くすると先程のごろつきが、手に包帯を巻き目つきの鋭い男が傍に来て、土下座するので、立たせてそこに座れと言うと、子分が村上様に無礼を働いたようで申し訳なかとです、責めは、
菊蔵が受けもんそと言うので、なぜ逆らったのだと聞くと、薩摩はよそ者を警戒しています、隠密だと思うたのですと言うので、なる程隠密は切り捨てごめんだからな、ところで新吉一家、
とシヨバでもめているそうだがと聞くと、

気の荒い人足が時々喧嘩を初めますので、仲裁しているだけです、新吉一家と敵対しているのではありません、たまには喧嘩もありますが、町衆に迷惑がかからぬように川原でやりますと、
言うので、江戸弁がつかえるのかと聞くと、元は薩摩藩の足軽で江戸にも何年かいましたと言ったのです、諸国巡察視の役目は藩の内情を探り取り潰すのではなく、揉め事を丸く収めて、
財政再建に手を貸す事も含まれている、

落ち度を見つけて取り潰す為に巡察しているのではないわ、すでに江戸、大阪、金山では指南してきた、薩摩は50万両の借財をしており、財政破綻寸前じゃったのじあ、後は城下と離島、
琉球の民の生活を良くする事なのだ、お前達も薩摩で糧をえておるのじあろう、わしに協力する事じあなと言うと、何をすればと言うので、お前達は砂糖、カッオ節、薩摩イモ、抜荷の、
荷受をしているのであろう、

それだけで人足50人を食わせるのは大変じあな、一番多いのは抜荷じあろうが、それで発覚を恐れてわしを襲ったのであろうと言うと、抜荷などはしりません、ただ、大隅屋の荷受けを、
やっているだけですと言うので、心配せんでも抜荷は阿片、武器等の禁制品を扱わなければ幕府も目こぼししておる、人足50人おるのだろう、ここの錦江湾はタイ、ハマチ等の魚の宝庫、
と聞く、

沢山取っても城下で食うくらいは大した事ないので、浅瀬に丸太を打ち込んで網を張りイケスにして、沢山とれた時にここに放しておくのじあ、餌は米ぬかで良い、この魚を博多、大阪、
江戸に持って行き商いすれば、人が沢山いるので大儲けできるぞ、玄海屋の船には生きたまま運べる工夫がしてあり、博多まで1日、大阪2日、江戸までは4日で持っていける、船は風が、
前から来ても進めるし、

星の無い夜でも方位磁石計を設備しているので走れるよう工夫してある、この仕掛けを大隅屋、薩摩屋に教えてやろう、菊蔵一家と新吉一家はそれぞれ錦江湾にイケスを作り魚を養殖す、
るのだと言うと、それはすごいですね、魚を博多、大阪、江戸で商いするのですか、生きたまま運べるとは恐れ入りますと言うので、大阪、江戸は人が増え続けている、特に江戸は100、
万人を突破しておる、

いずれも近郊の魚では間に会わぬのじあと言って、さとうきびだけではなく、薩摩芋からも砂糖は作れるぞ、これは離島の者達に指南しようと言うと、わかりました、網元と話して生き、
たまま漁をして沢山取れたときに買うてイケスに放し、毎日一定量を出荷するようにします、他の荷を運ぶついでに載せれば良いわけですねと言うので、大隅屋、薩摩屋がやらぬのなら、
玄海屋が一手に引き受けてやると言うと、

それでは新吉、大隅屋、薩摩屋に話してきますと言うと、みんなは店を出て行ったのです、飛猿が傍に来て、今菊蔵が言うたとおり、無体な事はやっていないそうです、才蔵がそれぞれ、
の蔵に忍び込み調べています、もうじき帰ってくるでしょうと言うので、博打場、女郎屋はと聞くと、イカサマはやっていないようです、女郎屋も無理強いはしていないそうですと言う、
ので、

そうか、悪人から巻き上げる事はできぬようじあなと笑うと、もっとも、巡察視が来る事を知っていますので、今止めているだけかも知りませんと言ったのです、才蔵が帰って来て賂は、
いずれも小額で大隅屋、薩摩屋はそれぞれ月に50両程奉行に渡しています、そこから家老に行っているのでしょう、菊蔵、新吉は渡していません、蔵には大隅屋が6千両、薩摩屋が8千両、
蓄えがあります、

菊蔵は3千両、新吉は2千程、蔵にありましたと言うので、それだけれあれば投資には回せるなと言ったのです、菊蔵達が来たので小上がりに上げて、話は聞いたかと言うと、みんなはやる、
そうですと言うので、それでは大隅屋、薩摩屋の船頭頭はと聞くと、この2人ですと言うので、方位磁針計は一個500両するがと聞くと、大隅屋と薩摩屋が二隻に装備して4日に一度江戸、
まで運びますと言うので、

それでは船頭頭2人は大工を連れてわしの船に見に行き帆の改造を見て来いと言うと、七衛門が連れて店を出て行ったのです、方位磁針計は玄海屋の出店に届けるので装備方法を番頭が、
教えるので装備すれば良いと言うと、その時に4個分2千両を払います、2人とも6隻の船を持っていますので、順次設備していきます、その船があれば離島、琉球からも早く運べます、
大儲けできて、

沢山薩摩藩に冥加金が納められますというので、薩摩の財政再建の一環になるであろう、蝦夷にも就航させてコンブ等海産物を仕入れて琉球から清国に商いさせれば良いではないかと言う、
と抜荷を勧められるのですかと聞くので、琉球人の商人にやらせれば良いじあろう、琉球は薩摩の統治になく琉球王国となっておるので問題なかろうというと、なる程と2人が言ったので、
す、

すこしは琉球にも儲けを渡してやれと言うと、ハイ、琉球王も喜びますと言うので、次はガラス細工じあなガラスの原料を南蛮から手に入れて薩摩で作り、大阪、江戸で商いするのじあよ、
薩摩の陶工にやら競れば良い、琉球でも作らせれば、商いは増えるぞ、製品を買うのではなく、原料を買い、それを加工するのだ、これは、大隅屋と薩摩屋がやるのだと言うと、簡単に、
作れるのですかと言うので、

原料を火で溶かして筒に避けて息で膨らますのじあよ、陶工なら簡単にコツを覚えられるぞ、色付き模様をつければ更に価値が出るじあろう、南蛮にしかない物は原料を買うて国産するの、
じあよ、南蛮を凌駕する物は我が国の職人は手先が器用じあから直ぐに出来るじあろう、南蛮より良い物が出来るようになれば南蛮にも売れるじあろうというと、なる程原料を買うて国産、
するのですかと言うので、

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