第66話

文字数 2,694文字


源三郎江戸日記(弟四部)66

ハイと返事して、道場に案内したのです、お鶴殿も着替えてきなされ、腕を見てしんぜようと言うと着替えに道場を出て行ったのです、それでは牧野藩の藩士にも稽古をつけようと言う、
と、さあそこの5人かかってきなされと言うと、5人が立ち上がり、老中といえど遠慮は無用じあと言って、タスキを借りてしばり、竹刀を構えると、5人が取り囲み後ろからえ~いと、
打ち込んで来たので、

かわして前の1人の肩を打つとがく~とつんのめり、右に左に打ち込んで転がしたのです、1人の男が牧野藩多田作之助にございます、一手ご指南をと言うので、かかって来なされと言、
って、中段に構えて間合いをつめてえ~いと打ち込んで来たので、右から思い切り竹刀を叩きつけると作之助の竹刀は勢いよく天井に舞ったのです、参ったと手を上げるので中々の腕じ、
あが、

左手の握りが甘いのではじき飛ばされたのじあ、右手はそえるだけで良い、左手はしっかりと竹刀を持つのじあと教えて、もう一度立ち会い同じどうさをすると横に動いただけで受け止、
めて、打ち返したので右によけて、懐に入り左手で腰帯をつかみ足をかけるとひっくり変えったので、え~いと振り下ろし肩口でピタリと止めたのです、卑怯な手と思うたかもしれぬが、
実践では卑怯もくそもないぞと笑ったのです、

お鶴が入って来て、ご老中は堀内道場の目録持ちじあ、そなた達では歯はたたぬであろう、わらわがお受けいたしますと竹刀の小太刀を持って、中段に構えたので、源三郎は上段に構え
ると、間合いをつめてえ~いと振り下ろすと左からスルリと抜けて後ろに回ろうとするので左足をかけると、動きながらえ~いと左足を叩かれて、う~としかめ面をして後ろを向くと、
にこ~と笑って、

さらに左に動きさまえ~いと振り卸したのでかろうじて受け止めて、左に回ろうとしましたが左足がしびれて、右足を動かして左を向こうとした時、左の篭手を打たれて、まいったとい、
うと、小太刀を引っ込めたので一礼してあぐらをかくと、まだ、しびれていますかと笑うので、なんとか、おさまったようじあ、卑怯な手じあなと言うと、これを教えたのはご老中です、
よと笑うので、

そうであったな、中々腕を上げられたようじあと言うと、真田がなる程実践の剣で御座りますなと言うので、無外流には峰うちはなく、手や足の腱を切り行動不能にするのじあろうそれ、
こそ実践剣法じあと言って、鶴姫と立ちおうてみよと言うと、ハイと言うと竹刀を受け取り真ん中に出て構えたのです、幸長は中段に構え、お鶴も中段に構えてジリジリと間合いを縮じ、
めると、

お鶴がえ~いと幸長の篭手を打つと、外して面を打とうとした時、懐に飛び込んだので、竹刀は空を切り鶴の胸が幸長の胸と、ピッタリ重なり、ほのかな良い臭いが幸長の鼻に入りどう、
して良いか迷うと、お鶴は左手で腕をつかみ腹を蹴飛ばしたのです、幸長は後ろにたおれたのでお鶴がえ~いと振り下ろす、そのまま一回点して素早く立ち上がり、踏み込んでえ~いと、
振り下ろし、

肩口でピタリととめると、参ったとお鶴は悔しそうな顔をしたのです、それまでじあと言って、一回点して起き上がるとは鶴姫も愕いたじあろうというと、幸長殿はまるで忍びで御座い、
ますなと言うと、いささか忍びの技も習いましたと言ったのです、お鶴がこちらにと座敷に案内するので、座敷に座ると膳が運ばれて来て腰元が酌をするので杯を重ねると、お鶴が着替、
えて来ますと部屋を出て行ったのです、

幸長が中々の豪の女子ですなと言うので、そなたの祖先の信之殿の妻女は徳川四天王の1人本多平八郎殿の娘であろう、あのような女子だったのじあろうと言うと、ハイ、長刀の名手だ、
ったそうですと言うので、ところで、今回の米の価格変動をどう思うかと聞くと、小判の金の含有量を増やして価値を高めるのは良いと思いますが、急激に小判を改鋳するは物価の変動、
を加速させます、

上がるか下がるかは商いをやっている、商人の心情によるものと思います、米は安いに限りますが、余り安くなると武家の禄も目減りする事になります、今の価格が丁度良いのではない、
かと思います、大名は米半分、ほかの物半分の実収入にするように、構造を改革しなければ、今後益々窮する事になります、工業に力を入れるべき出す、特に鉄製品、武器ではなく生活、
用品、橋も鉄で出来れば良いですね、

江戸は火事が多いですから塀も燃えにくい物、たとえば石膏とかで作れば延焼は防げると思います、後は消化桶だけでなく、砂も置けば消化の助けになりますと言うので、砂で火が消え、
るのかと聞くと、空気を途断できますから所期には効果があります、又油火災には有効だとおもいますがと言ったのです、そなたは何歳じあと聞くと、28才に御座りますと言うと、好い、
た女子はおるかと聞くと、

ハイと言うのでどこかの武家の娘かと聞くと、いいえ、町屋の娘で真田の上屋敷に奉公していますと言うので、なぜ嫁に貰わぬのじあと聞くと、父上が正室を貰ってからそばめにしろと、
言われているのですが、いまだ正室は貰えませぬと笑ったので、それではここの鶴姫を正室に迎えてはと言うと、牧野家は親藩で先の殿様は老中をなされた方です、それがしの処へ等、
嫁にこられるはずはありませぬと言うので、

2000石は本家に返して、そなたは牧野家に婿にはいるのじあ、牧野家にはあの鶴姫しかおらぬ、その後でその腰元を側室にすれば良いと言うと、そんな話をお受けになるはずはありませ、
ぬと言うので、わしに任せろと言うと、ご命令ならお受けしますと言ったのです、お鶴が着替えてきたのでみると、中々べっぴんじあなと言うと、相変わらず世辞が上手いのですねと言、
うので、

金山が見つかったそうじあなと言うと、沢山は産出しませぬが牧野藩の財源に寄与しています、ご老中のお陰です、父上は大喜びなさいましたと言ったのです、まだ婿は見つからぬかと聞、
くと、話はあるのですが中々決められませぬと言うので、この真田幸長はどうじあなと聞くと、真田家はどうされるつもりでと聞くので、幸長は次男坊で分家を立てている、それは本家、
に返せば良いと言うと、

幸長殿はご承知でと聞くので、承知に御座いますが、鶴姫様のめがねにはとてもかなわないでしょうと言うと、そんな事はありませぬ、婿に来ていただければ嬉しゅうございますというの、
で、ならばわしが仲人を引き受けよう、後日正式に申し入れに参る、江戸家老に宜しく言うてくだされ、幸長は時々姫の稽古の相手と、藩士達に稽古をつけてやれと言うと、承知しました、
と言ったのです、

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