第107話 阿弥の提案
文字数 1,251文字
その後も宴は盛大に続いた。
最初は集まった人々で話し合うだけだったが、時間が経つにつれて各自の持ち味を活かした特技の披露会なども行われた。
主催者である阿弥が手始めに舞踊を始めると、参加者一同は皆そちらに注目し、大いに目を楽しませた。
それと同時に夕暮れに照らされた美しき紅葉を、館の窓から眺めることもできた。
まさに両手に花とも形容できる状況だ。
夕暮れの紅葉を眺めていた式が、あることに気付いた。
「あ、もうそろそろ帰らなきゃだ」
式たちは宴を楽しむことに夢中で、時間の経過を気にしていなかった。気が付けばもう日も沈もうとしている。
「榊さん、そろそろお暇しないと」
「そうですね、阿弥さんに挨拶していきましょう」
式たちが阿弥に事情を話すと、彼女は
「あなたたちさえよければ、この館に泊まっていかない? 客室は十分にあるから大丈夫よ」
と提案してきた。
「いや、でもそこまでお世話になるわけには……」
この宴自体も飛び入り参加なのに、さらに館に泊まるともなるとお世話になりっぱなしで申し訳ない、という気持ちが式にはあった。
「私はせっかくだからお言葉に甘えたいと思うけどなー。二人はどう?」
どうやら春崎は乗り気のようだ。
「私も大丈夫です」
「うーん、二人がそういうなら、俺もお言葉に甘えようかな」
「決まりね。客室は来た時に案内した場所を使ってね」
阿弥はにこやかに言った。
「では引き続き楽しみましょうか。そういえば式くん、水島さんが式くんが解決した事件について知りたがっていましたよ」
「あ、こっちもエミちゃんが気になってたみたいだよ。今度高校生が主役の探偵ドラマをやるみたいで、それの参考にしたいって」
「そうなんだ……。じゃあ順番に話しにいこうかな」
まずは水島の元に向かった。
「君が例の探偵君ね。噂は聞いてるわよ」
「どうも……」
「この前、女子大生が犯人の事件を解決したでしょ。実はその子、私が通っている大学にいた子なのよ。まさか自分の大学から殺人犯が出るなんて思わなかったわ」
「そうですよね。殺人って、遠い存在だと思いがちです」
式はこれまでに様々な事件を解決してきたせいか、殺人事件が日常的になりつつあるが、普通の人はそうでないことは理解している。
だが日常的でないからといって、自分の周りでは殺人は起こらないだろう、と油断するのは危険だ。
「それに、その事件を解決したのが高校生だってことも聞いて、二重でびっくりよ。大学やモデル仲間の間でも話題になったもの」
「よかったですね、式くん。モデルさんに人気みたいですよ」
「別に俺自身に興味があるわけじゃないでしょ」
「でも、少なくとも私は結構興味あるんだけどな」
意味ありげな視線を式に向ける水島。
「……よかったじゃないですか」
冷ややかな目で見てくる榊。
「はは……」
何と答えたらいいのかわからず、空返事をするのが精いっぱいの式だった。
最初は集まった人々で話し合うだけだったが、時間が経つにつれて各自の持ち味を活かした特技の披露会なども行われた。
主催者である阿弥が手始めに舞踊を始めると、参加者一同は皆そちらに注目し、大いに目を楽しませた。
それと同時に夕暮れに照らされた美しき紅葉を、館の窓から眺めることもできた。
まさに両手に花とも形容できる状況だ。
夕暮れの紅葉を眺めていた式が、あることに気付いた。
「あ、もうそろそろ帰らなきゃだ」
式たちは宴を楽しむことに夢中で、時間の経過を気にしていなかった。気が付けばもう日も沈もうとしている。
「榊さん、そろそろお暇しないと」
「そうですね、阿弥さんに挨拶していきましょう」
式たちが阿弥に事情を話すと、彼女は
「あなたたちさえよければ、この館に泊まっていかない? 客室は十分にあるから大丈夫よ」
と提案してきた。
「いや、でもそこまでお世話になるわけには……」
この宴自体も飛び入り参加なのに、さらに館に泊まるともなるとお世話になりっぱなしで申し訳ない、という気持ちが式にはあった。
「私はせっかくだからお言葉に甘えたいと思うけどなー。二人はどう?」
どうやら春崎は乗り気のようだ。
「私も大丈夫です」
「うーん、二人がそういうなら、俺もお言葉に甘えようかな」
「決まりね。客室は来た時に案内した場所を使ってね」
阿弥はにこやかに言った。
「では引き続き楽しみましょうか。そういえば式くん、水島さんが式くんが解決した事件について知りたがっていましたよ」
「あ、こっちもエミちゃんが気になってたみたいだよ。今度高校生が主役の探偵ドラマをやるみたいで、それの参考にしたいって」
「そうなんだ……。じゃあ順番に話しにいこうかな」
まずは水島の元に向かった。
「君が例の探偵君ね。噂は聞いてるわよ」
「どうも……」
「この前、女子大生が犯人の事件を解決したでしょ。実はその子、私が通っている大学にいた子なのよ。まさか自分の大学から殺人犯が出るなんて思わなかったわ」
「そうですよね。殺人って、遠い存在だと思いがちです」
式はこれまでに様々な事件を解決してきたせいか、殺人事件が日常的になりつつあるが、普通の人はそうでないことは理解している。
だが日常的でないからといって、自分の周りでは殺人は起こらないだろう、と油断するのは危険だ。
「それに、その事件を解決したのが高校生だってことも聞いて、二重でびっくりよ。大学やモデル仲間の間でも話題になったもの」
「よかったですね、式くん。モデルさんに人気みたいですよ」
「別に俺自身に興味があるわけじゃないでしょ」
「でも、少なくとも私は結構興味あるんだけどな」
意味ありげな視線を式に向ける水島。
「……よかったじゃないですか」
冷ややかな目で見てくる榊。
「はは……」
何と答えたらいいのかわからず、空返事をするのが精いっぱいの式だった。