第68話 式十四郎と朝霞龍吾
文字数 1,203文字
翌日、式と龍吾は学校の屋上に集まっていた。
事件のその後を話すためだ。
「榊さんの話によると、あの顧客リストに載っていた人物たちの家宅捜索が始まったみたいだ。今も警察はてんてこ舞いだってさ」
「そういえば、今日ニュースでやってたな」
「リストに載っていたのが芸能人や政治家だったからね。しばらくは世間を騒がせることになりそうだよ」
缶のお茶をすすりながら語る。
「そういえば、探偵会に入ってよかったの? これから榊さんにいろいろとこき使われると思うけど」
「別に問題ねーよ。どうせ明日からまたしばらく来ねーから」
「ありゃ」
どうやら龍吾ははじめから探偵会に乗り気ではないようだ。
「今日は事件のその後を知るために来ただけだ」
「そっか」
式はそれ以上何も聞かなかった。
「さて、俺はそろそろ帰るぞ」
「これからどうするんだ?」
「またどっかで何かやってるさ。あ、それと榊に言っとけ」
龍吾はうんざりした顔で言う。
「いい加減学校に来るよう催促するのは止めろってな。毎日手紙が来て鬱陶しいんだ」
「はは、それなら学校に来ればいいのに」
「いろいろと忙しいんだよ、俺は」
彼が普段何をやっているのか、今の式は知ることができなかった。
「式くん、どこにいるのですか?」
ふと、式を呼ぶ榊の声が聞こえる。
「やばい、奴が来る。じゃあな式」
「え、おい!」
龍吾は榊とばったり出会わないように屋上から飛び降り、そのまま何ともなく着地して立ち去った。
廃墟の時もそうだったが、五階建ての校舎の屋上から飛び降りても無傷でいる彼は、もはや人類を超えた存在といっても過言ではないだろう。
「……あいつ、人間じゃないな」
龍吾と入れ替わるように榊が屋上に来る。
「式くん、こちらにいたのですね」
「あ、榊さん」
「私の勘違いでなければ、先ほど朝霞くんもこちらにいたと思うのですが」
「さっきまでいたよ。榊さんの声を聴いたら屋上から飛び降りたけど」
「くっ、逃げられましたか」
悔しそうに榊が呟く。
「まあ彼とは近いうちにまた会えるんじゃないかな」
「どうしてそう思うのですか?」
「なんとなく、かな」
式は空を見上げながら言った。
「おかえりなさいませ、龍吾様」
龍吾が帰宅すると、執事風の老紳士が出迎えてきた。
「おや……」
「なんだ?」
「いえ、何やら嬉しそうな表情をしていたので」
「……ふん、気のせいだろ」
そう言う龍吾の口元は静かに笑っていた。
「それで、次の指令は何なんだ」
「こちらでございます」
渡された手紙の内容を読み、投げ捨てる。
「帰った途端これかよ」
「それほど期待されているということですよ」
「どうだか。じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃいませ」
ここからまた、龍吾の新たな一日が始まろうとしていた。
事件のその後を話すためだ。
「榊さんの話によると、あの顧客リストに載っていた人物たちの家宅捜索が始まったみたいだ。今も警察はてんてこ舞いだってさ」
「そういえば、今日ニュースでやってたな」
「リストに載っていたのが芸能人や政治家だったからね。しばらくは世間を騒がせることになりそうだよ」
缶のお茶をすすりながら語る。
「そういえば、探偵会に入ってよかったの? これから榊さんにいろいろとこき使われると思うけど」
「別に問題ねーよ。どうせ明日からまたしばらく来ねーから」
「ありゃ」
どうやら龍吾ははじめから探偵会に乗り気ではないようだ。
「今日は事件のその後を知るために来ただけだ」
「そっか」
式はそれ以上何も聞かなかった。
「さて、俺はそろそろ帰るぞ」
「これからどうするんだ?」
「またどっかで何かやってるさ。あ、それと榊に言っとけ」
龍吾はうんざりした顔で言う。
「いい加減学校に来るよう催促するのは止めろってな。毎日手紙が来て鬱陶しいんだ」
「はは、それなら学校に来ればいいのに」
「いろいろと忙しいんだよ、俺は」
彼が普段何をやっているのか、今の式は知ることができなかった。
「式くん、どこにいるのですか?」
ふと、式を呼ぶ榊の声が聞こえる。
「やばい、奴が来る。じゃあな式」
「え、おい!」
龍吾は榊とばったり出会わないように屋上から飛び降り、そのまま何ともなく着地して立ち去った。
廃墟の時もそうだったが、五階建ての校舎の屋上から飛び降りても無傷でいる彼は、もはや人類を超えた存在といっても過言ではないだろう。
「……あいつ、人間じゃないな」
龍吾と入れ替わるように榊が屋上に来る。
「式くん、こちらにいたのですね」
「あ、榊さん」
「私の勘違いでなければ、先ほど朝霞くんもこちらにいたと思うのですが」
「さっきまでいたよ。榊さんの声を聴いたら屋上から飛び降りたけど」
「くっ、逃げられましたか」
悔しそうに榊が呟く。
「まあ彼とは近いうちにまた会えるんじゃないかな」
「どうしてそう思うのですか?」
「なんとなく、かな」
式は空を見上げながら言った。
「おかえりなさいませ、龍吾様」
龍吾が帰宅すると、執事風の老紳士が出迎えてきた。
「おや……」
「なんだ?」
「いえ、何やら嬉しそうな表情をしていたので」
「……ふん、気のせいだろ」
そう言う龍吾の口元は静かに笑っていた。
「それで、次の指令は何なんだ」
「こちらでございます」
渡された手紙の内容を読み、投げ捨てる。
「帰った途端これかよ」
「それほど期待されているということですよ」
「どうだか。じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃいませ」
ここからまた、龍吾の新たな一日が始まろうとしていた。