第62話 大詰め

文字数 1,563文字

「それともう一つ、渡す物がある」

 龍吾はメモリーカードを取り出した。

「これは奴ら暴力団のアジトに行って手に入れたものだ。中には奴らが違法入手した武器や薬などの販売開いてである顧客リストが入っている。ここには芸能人や政治家なんかの名前も書かれていた。だが目玉はそいつらじゃなく、別の人物だった」
「別の人物?」
「この事件の犯人だよ。式、確認してみろ」

 龍吾に言われるがままに、式は顧客リストを確認した。
 そこには、式の頭の中で思い描いていた犯人の名前が載っていた。

「これは……。やっぱりそうだったのか」

 式は自分の推理が間違っていなかったことを確信する。

「さて、俺は必要な情報を提供したぞ。次はそっちの番だ」
「ああ。ではまず式くんたちにも教えた情報から提供しよう」

 隼人は里中の殺人事件、謎の焼死体事件の資料を龍吾に渡した。

「そういえば、この焼死体については何か進展がありましたか?」
「一応死亡推定時刻は残っていた足から調べた結果、一昨日の夜十時から十一時頃ということがわかった。だがそれ以外のことが特にわからなくてな」
「その焼死体を発見した人って誰なんですか?」
「それが、その人物についても特定できていないんだ。匿名で警察に通報があって、指定された場所に行ってみるとあの死体があったというわけだ」
「ふん、なるほどな」

 資料を見ていた龍吾は何かに納得したようだ。

「資料は確認した。俺はこれで失礼するぜ」

 部屋から出る直前、龍吾は式に耳打ちする。

「そっちは任せたぞ」

 龍吾は部屋から出ていった。
 式にはその言葉の意味を理解することができた。

「……わかった」
「お、おい! ちょっと待ってくれ」
「隼人さん、彼のことは放っておきましょう。それよりも他に何か情報はありませんか?」
「ああ、昨日君たちと別れた後、須永という男の家を訪ねて話を聞いてみたが、特に有力な情報は得られなかったよ。一応会話はこれにまとめておいたから、目を通してみてくれ」

 式は須永の会話に目を通す。
 そこには、須永と赤城哲也の関係について書かれていた。
 彼らはプライベートを共にするほど仲は良くなかったが、あくまでも仕事上ではそれなりにコミュニケーションをとっていたようだ。
 赤城智也が言っていた、赤城哲也と須永の揉め事については、そのようなことはないとはっきり断言している。
 つまり、赤城智也の発言と食い違っているため、どちらかが嘘をついているということだ。

「一応この須永の発言と赤城智也の発言の食い違いを確認したいから、赤城智也と再度話をしたいと思っているんだが、あの電話以降連絡が取れなくなっているんだ」
「これはやはり、式くんたちが見つけた四肢のない死体が赤城智也である可能性が高いですね」
「……」

 式は少し考え込んだ。

「……隼人さん、至急調べてほしいことがあります」

 式はあることを隼人に耳打ちした。

「……どうしてそんなことを? もしかして」
「ええ。可能性があるんです。もし俺の考えが当たっていたら、必ず発覚するはずです」
「わかった。今から調査しよう」
「できれば今日中に調べてください。俺としては、その情報を入手後にすぐにでも犯人のところに行きたいので」
「わかった。すぐに調べるから待っててくれ」

 しばらく待った後、隼人が調査結果を報告する。

「式くん、君の言う通りだったよ。あの二人には密接な関係があったし、さらにあの人物の過去についても驚くべきことがわかった。この資料を見てくれ」
「……やっぱり俺の思った通りでしたね。よし、じゃあ後は犯人を捕まえるだけです。今から犯人の家に行きましょう」

 式たちは犯人の元へと向かった。
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