第111話 現場捜査

文字数 1,254文字

「池上さん、まずは二つの死体の検死をお願いしてもいいですか?」
「わかった。君はどうするんだ?」
「調べたいことがあるので、そっちに行きます。春崎さん行こう」
「う、うん」

 式は外に出て、館の外観を眺めた。
 館の一つの窓が割れている。先ほど行った電波受信器がある部屋だろう、カーテンが棚引いている。
 その他の部屋の窓は割れておらず、カーテンもしっかりとかかっているため、特に不自然な点はない。

「式くん、館なんか眺めてどうしたの?」
「……いや、なんでもないよ」

 次に式は、割れている窓の近くにある木を確認する。
 割れた窓のすぐ近くには木の枝があり、この枝を伝えばここから部屋に入ることができそうだ。
 枝の細さは目測だが、体重の軽い女性が乗れば辛うじて折れないだろう、といった感じか。
 この枝を伝るには当然木に登らなければならないが、木は登りやすそうな作りになっているため、誰でも簡単に登ることができるだろう。
 ちなみに、枝の根本から割れている窓までの距離はおよそ5mほど、といったところか。

「犯人はここから枝を伝って窓を割って、部屋に侵入したのかなー」
「どうだろう」

 式は少し考える。

「もう一度電波受信器があった部屋に行ってみよう」

 式たちは部屋に向かった。
 三階に着いたところで、式は辺りを見渡してみる。

「……」
「どうしたの?」

 その様子に疑問を抱いた春崎が尋ねる。

「ねえ春崎さん、電波受信器がある部屋ってどこだっけ?」
「どこって、あの部屋じゃないの? 私は入ったことないけど、ドア開いてるしすぐにわかると思うよ」

 春崎が指差した部屋は、確かにドアが開いていた。
 他の部屋のドアはしっかりと閉まっている。ドアが開いているのは先ほど式と池上が中に入り、ドアを閉めずに開けたままだからだ。
 春崎の言う通り、確かに入ったことがなくてもすぐにわかるだろう。

 中に入ると、電波受信器を見に行った時と同じ光景が目に入った。
 窓の下には割れたガラスの破片が落ちており、窓の割れた部分からカーテンが外に向かって棚引いている。
 式は落ちているガラスの破片を調べてみた。
 ガラスの破片には、所々土がついていた。

「ガラスの破片に土がついているな」
「ほんとだ。そこら辺の大きめな石を拾ってそれで窓を割って入ったのかな」

 式も概ね同感だった。
 だが、一つだけ気になることがある。
 それを調べるために、式はガラスの破片が落ちている床の周辺を調べた。

「あっ……」

 式が見つけたのは、少し傷つき窪みが出来ている床だ。

「見つけた。これが解決への糸口かもしれない」
「ほんとに? 私はよくわかんないなー」

 式がどのような思考を巡らせているのか、春崎には理解できなかった。

「後は池上さんの検死結果を待つか。犯行時刻が何時なのか、皆のアリバイなどはあるのかを確認しないと」

 そろそろ検死も終わる頃だろうと思い、池上の元に向かった。
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