第99話 探偵会視点:真相追及
文字数 1,642文字
「一つ疑問があるのですが……」
榊が疑問を口にする。
「仮に犯人が別の人物だとして、では通報はどうしたのでしょうか。その犯人自身が通報したということでしょうか」
「別人なら、そうだろうね。被害者を気絶させた状態で通話をし、適度なタイミングで殴られたフリをして通話を切り、その後被害者を本当に殴った。後はこの現場から立ち去ればいいだけだ」
「それなら、声を解析してみてはいかがでしょうか」
「そうか! 声紋を解析すれば、実際に被害者が通報したものなのか、あるいは誰かが被害者のフリをして通報したのかがわかるな」
こういうところは式よりも榊や警察である隼人の方が詳しい。
「そしてもう一つ。もし犯人が被害者を装って殺人を犯したというなら、齊藤を呼び出したのも真犯人ということになりますよね」
「そうだね」
「ということは、犯人はこのスマホをいつでも使用できたということになります。それはつまり、このスマホのパスワードを解除できたということ。通話だけなら緊急モードを使用すればいいのですが、SNSでのやりとりはそうはいきません」
「でも、パスワードの解除ならそんなに難しくないんじゃない? たとえばそのスマホが指紋認証のものなら、被害者の指を使って解除すればいいんだし」
「このスマホは指紋認証ができるらしいぞ」
式の論に補足するように隼人が答える。
「確かに、一回だけ解除するならその方法でも良いと思います。しかし、相手からの連絡がいつくるかわかりません。もしかしたら数時間経っても来ない可能性もあります。相手から返事が来るまでの間、ずっとスマホのロックを解除したままにするというのは考えられません」
「ということは、犯人は自分の指紋を登録していた、というわけか。まず被害者の指紋でスマホのロックを解除し、その後自分の指紋を登録する。こうすればいつでも自由にスマホが使用できるというわけだね」
「ええ。そして式くんの推理からして、犯人は結構杜撰な人物であることがわかります。ならばスマホに指紋を登録したままの可能性も……」
榊の言葉を聞いて、隼人は早速登録されている指紋を調べ始めた。
「……確かに、指紋が二つ登録されている。一つは照合した結果、被害者のものであることがわかったが、もう一つは被害者のものとは一致しない。つまり別の誰かの指紋が登録してあるというわけだ」
「被害者は浮気をしていたということならば、浮気相手と連絡をしていたスマホを別の誰かに利用するのを許していたなんてことは考えづらい。つまりこれは被害者が意図していない状況で登録されたもののはずです」
「それはつまり、被害者が意識を失っているときに登録した、というわけか」
確実に真相へと近づいている式たち。
そこに新たな情報が入ってきた。
「被害者の身元が判明しました。都内に住む桜内静乃という女性です。家族構成は夫と娘が一人だそうです」
「わかった。ご家族に連絡は?」
「まだしていません」
「なら、今から行こう。住所もわかっているな?」
「ええ」
「あ、隼人さん。お願いがあるんですけど」
被害者宅に行こうとする隼人に、頼みごとをする式。
「その家族の指紋採取と声の録音をしておいてくれませんか?」
「指紋は元々採取する予定だったが、声もか」
「ええ。その娘さんが犯人かもしれませんから」
式はその根拠を話し始めた。
「SNSでのやりとりから、犯人は被害者が浮気をしていたことを知っていた人物です。そんな人物は限られてくる。たとえば浮気相手のことを相談していた友人や、家族が浮気をしていることを薄々察しているものの、具体的な証拠がないから追及できない家族などです。その中で女性の人物ですから、当然娘さんも当てはまります」
「わかった。録音しておこう。君たちはとりあえず今日のところは帰りなさい。また情報が入ったら連絡する」
隼人を乗せたパトカーは被害者宅へと向かった。
榊が疑問を口にする。
「仮に犯人が別の人物だとして、では通報はどうしたのでしょうか。その犯人自身が通報したということでしょうか」
「別人なら、そうだろうね。被害者を気絶させた状態で通話をし、適度なタイミングで殴られたフリをして通話を切り、その後被害者を本当に殴った。後はこの現場から立ち去ればいいだけだ」
「それなら、声を解析してみてはいかがでしょうか」
「そうか! 声紋を解析すれば、実際に被害者が通報したものなのか、あるいは誰かが被害者のフリをして通報したのかがわかるな」
こういうところは式よりも榊や警察である隼人の方が詳しい。
「そしてもう一つ。もし犯人が被害者を装って殺人を犯したというなら、齊藤を呼び出したのも真犯人ということになりますよね」
「そうだね」
「ということは、犯人はこのスマホをいつでも使用できたということになります。それはつまり、このスマホのパスワードを解除できたということ。通話だけなら緊急モードを使用すればいいのですが、SNSでのやりとりはそうはいきません」
「でも、パスワードの解除ならそんなに難しくないんじゃない? たとえばそのスマホが指紋認証のものなら、被害者の指を使って解除すればいいんだし」
「このスマホは指紋認証ができるらしいぞ」
式の論に補足するように隼人が答える。
「確かに、一回だけ解除するならその方法でも良いと思います。しかし、相手からの連絡がいつくるかわかりません。もしかしたら数時間経っても来ない可能性もあります。相手から返事が来るまでの間、ずっとスマホのロックを解除したままにするというのは考えられません」
「ということは、犯人は自分の指紋を登録していた、というわけか。まず被害者の指紋でスマホのロックを解除し、その後自分の指紋を登録する。こうすればいつでも自由にスマホが使用できるというわけだね」
「ええ。そして式くんの推理からして、犯人は結構杜撰な人物であることがわかります。ならばスマホに指紋を登録したままの可能性も……」
榊の言葉を聞いて、隼人は早速登録されている指紋を調べ始めた。
「……確かに、指紋が二つ登録されている。一つは照合した結果、被害者のものであることがわかったが、もう一つは被害者のものとは一致しない。つまり別の誰かの指紋が登録してあるというわけだ」
「被害者は浮気をしていたということならば、浮気相手と連絡をしていたスマホを別の誰かに利用するのを許していたなんてことは考えづらい。つまりこれは被害者が意図していない状況で登録されたもののはずです」
「それはつまり、被害者が意識を失っているときに登録した、というわけか」
確実に真相へと近づいている式たち。
そこに新たな情報が入ってきた。
「被害者の身元が判明しました。都内に住む桜内静乃という女性です。家族構成は夫と娘が一人だそうです」
「わかった。ご家族に連絡は?」
「まだしていません」
「なら、今から行こう。住所もわかっているな?」
「ええ」
「あ、隼人さん。お願いがあるんですけど」
被害者宅に行こうとする隼人に、頼みごとをする式。
「その家族の指紋採取と声の録音をしておいてくれませんか?」
「指紋は元々採取する予定だったが、声もか」
「ええ。その娘さんが犯人かもしれませんから」
式はその根拠を話し始めた。
「SNSでのやりとりから、犯人は被害者が浮気をしていたことを知っていた人物です。そんな人物は限られてくる。たとえば浮気相手のことを相談していた友人や、家族が浮気をしていることを薄々察しているものの、具体的な証拠がないから追及できない家族などです。その中で女性の人物ですから、当然娘さんも当てはまります」
「わかった。録音しておこう。君たちはとりあえず今日のところは帰りなさい。また情報が入ったら連絡する」
隼人を乗せたパトカーは被害者宅へと向かった。