第33話 一緒に配信を見よう

文字数 959文字

 家に着いた式は、着替えを終えてパソコンを起動し、配信を見る準備を始めた。
 パソコンが起動している間に、榊に連絡する。

『今家に着いたよ。PC起動中』
『起動が終わりましたらアプリ開いてくださいね』

 指示された通りにボイスチャットのアプリを起動する。
 榊にコールすると、しばらくして繋がった。

『こんばんは、式くん。音声聞こえてますか?」
「うん、大丈夫」
『わかりました。では一緒に配信をみましょう。URL送りますね』

 送られたURLをクリックし、ブラウザを起動する。
 直接配信画面へと飛んだ。

「それにしても、ここまでして一緒に見る必要あるのかな……」
『何か言いましたか?』
「な、なんでもないよ」

 しばらく待っていると、午後七時になり配信が始まる。

「みんな~こんばんは~! めーぷるホリック、配信クリック! 今日もやっていきますよ~!」
「な、なにこの挨拶……」
『式くんも次第に慣れてきますよ』

 できれば慣れたくないな、と式は思った。

「さあ、今日はリスナーの皆さんからおすすめされたこのゲームをやっちゃいます!」
『あ、これ私がおすすめしたゲームです!』
「榊さんのなんだ」
「レビューでも高評価だったので、とっても楽しみにしていたんですよ~」

 めーぷるは画面上で激しく動き回っている。
 3Dモデルとはいえ、表現は人間とあまり変わらず豊かだ。

「えいっ、えいっ! ダメだ、また失敗しちゃいました~」

 お世辞にもゲームは上手いとは言えなかった。

「あ、もうこんな時間! そろそろ配信終わりの時間です~」
『もう終わりの時間ですか。時が経つのは早いですね」
「……」
「ではまた次回お会いしましょう、さようなら~!」

 めーぷるの配信が終わった。

『どうでした、式くん』

 配信が終わった後、榊から感想を聞かれる。

「うーん、まだ良さがわからなかったかなあ」
『そうですか。では次回も一緒にみましょう』
「え!?」

 式からしたら予想外の展開になってきた。

「い、いやもういいかな……」
『いえ、めーぷるちゃんの良さがわからないままにはしておけません。幸い明日も同じ時間に配信するようですし、一緒に見ましょう』
「……」

 がっくりと式は項垂れた。
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