第42話 犯人ではない理由
文字数 1,565文字
「あのストーカーが犯人ではないことは、今日のめーぷるちゃんの配信を見ればわかります」
式はスマホでめーぷるちゃんの配信を皆に見せた。
「彼女は今日ゲーム配信をしていたんですが、しばらくするとこんな発言をしているんです」
式は該当の発言を再生する。
『あれ、何か変な臭いがするな……』
「この発言から、楓さんはこの時点で部屋にガスが充満していることに気づいたんです」
「それがどうしたのよ」
「ということは、もしストーカーが犯人だとするなら、この発言の寸前にガスを部屋に注入しているということになりますよね。ということは、当時犯人はこの家に侵入していたことになります。一体どうやって侵入したんですか?」
「そんなの、ベランダから侵入したんでしょ。あそこからならロープとかを使えば簡単に侵入できるし、エアコンのドレンホースからガスを注入することも難しくないでしょ」
式の問いに、自信満々に応える樅。
「それは無理ですよ。なぜなら、楓さんが配信を行っている時間は一階のリビングで桐さんがドラマの特番を見ていたんですから」
「それに何の関係が……」
そこまで言いかけて、ようやく樅も気づいたようだ。
「あのリビングでドラマの特番を見るなら、普通はソファーに座りますよね。そのソファーはリビングの窓のすぐ近くにあった。そして一階のリビングはちょうどこの部屋の真下に位置する。つまりこの部屋のベランダに侵入するには、リビングの窓に近寄った状態で登ろうとしなくてはならない。だとすると、リビングでテレビを見ていた桐さんに気づかれてしまう可能性は大いにある」
「そ、そうとは限らないわ。お母さんはテレビに夢中だったから、その隙をつけば見つからずに侵入することも不可能じゃないでしょ。絶対にないとは言い切れないわ!」
「そう思っても、実際に実行するかどうかは別問題ですよ。見つかる可能性が低いならともかく、窓に接近する必要があるから、気づかれる可能性は十分にある。むしろ気づかれない可能性の方が低いくらいだ。そのわずかな可能性にかけてまでベランダに侵入する意味はない。見つかってしまったらそれでおしまいなのだから。確実に犯行を行うなら、少なくとも桐さんがドラマの特番を見終わった後、リビングから離れた瞬間を狙えばいいし、そもそも今日じゃなくて別の日にやり直してもいい。わざわざ今日リスクを負ってまでやる必要がないんですよ」
「う……」
式の言葉に、反論できない。
「次にこの窪みにはめ込んだ鉄球についてですが、これは爆発が起きた後、あなたが部屋に入って楓さんを助けるついでに回収したんです。窪みの大きさからしてポケットに十分入るサイズですから、サッと回収できるはず」
「……」
「最後にこの部屋の窓が開いていたことですが、これもあなたが犯人であることを証明している。あなたは窓を開けていないと言っていましたが、それは嘘です。消防隊員がこの部屋に来た時にはすでに窓は開いていた。つまりその前に窓が開かれたということになり、その前にこの部屋にいたのはあなたしかいない」
「そ、それは、消防の人が見間違えたんでしょ。私は開けた覚えはない!」
「ということは、あなたが言う犯人であるストーカーが開けたということですか?」
「た、多分……」
自信なく言葉を発する樅。
「ストーカーが犯人なら、爆発を起こした後なぜかベランダに留まった状態であなたと楓さんが部屋から出ていった後に部屋の窓を開けたということになります。どうしてストーカーは樅さんたちが部屋から出ていくまでベランダに留まっていたんですか? そんなことをしなくても爆発させたらすぐに逃げた方が捕まる可能性もずっと低いのに」
もはや反論する言葉は出てこなかった。
式はスマホでめーぷるちゃんの配信を皆に見せた。
「彼女は今日ゲーム配信をしていたんですが、しばらくするとこんな発言をしているんです」
式は該当の発言を再生する。
『あれ、何か変な臭いがするな……』
「この発言から、楓さんはこの時点で部屋にガスが充満していることに気づいたんです」
「それがどうしたのよ」
「ということは、もしストーカーが犯人だとするなら、この発言の寸前にガスを部屋に注入しているということになりますよね。ということは、当時犯人はこの家に侵入していたことになります。一体どうやって侵入したんですか?」
「そんなの、ベランダから侵入したんでしょ。あそこからならロープとかを使えば簡単に侵入できるし、エアコンのドレンホースからガスを注入することも難しくないでしょ」
式の問いに、自信満々に応える樅。
「それは無理ですよ。なぜなら、楓さんが配信を行っている時間は一階のリビングで桐さんがドラマの特番を見ていたんですから」
「それに何の関係が……」
そこまで言いかけて、ようやく樅も気づいたようだ。
「あのリビングでドラマの特番を見るなら、普通はソファーに座りますよね。そのソファーはリビングの窓のすぐ近くにあった。そして一階のリビングはちょうどこの部屋の真下に位置する。つまりこの部屋のベランダに侵入するには、リビングの窓に近寄った状態で登ろうとしなくてはならない。だとすると、リビングでテレビを見ていた桐さんに気づかれてしまう可能性は大いにある」
「そ、そうとは限らないわ。お母さんはテレビに夢中だったから、その隙をつけば見つからずに侵入することも不可能じゃないでしょ。絶対にないとは言い切れないわ!」
「そう思っても、実際に実行するかどうかは別問題ですよ。見つかる可能性が低いならともかく、窓に接近する必要があるから、気づかれる可能性は十分にある。むしろ気づかれない可能性の方が低いくらいだ。そのわずかな可能性にかけてまでベランダに侵入する意味はない。見つかってしまったらそれでおしまいなのだから。確実に犯行を行うなら、少なくとも桐さんがドラマの特番を見終わった後、リビングから離れた瞬間を狙えばいいし、そもそも今日じゃなくて別の日にやり直してもいい。わざわざ今日リスクを負ってまでやる必要がないんですよ」
「う……」
式の言葉に、反論できない。
「次にこの窪みにはめ込んだ鉄球についてですが、これは爆発が起きた後、あなたが部屋に入って楓さんを助けるついでに回収したんです。窪みの大きさからしてポケットに十分入るサイズですから、サッと回収できるはず」
「……」
「最後にこの部屋の窓が開いていたことですが、これもあなたが犯人であることを証明している。あなたは窓を開けていないと言っていましたが、それは嘘です。消防隊員がこの部屋に来た時にはすでに窓は開いていた。つまりその前に窓が開かれたということになり、その前にこの部屋にいたのはあなたしかいない」
「そ、それは、消防の人が見間違えたんでしょ。私は開けた覚えはない!」
「ということは、あなたが言う犯人であるストーカーが開けたということですか?」
「た、多分……」
自信なく言葉を発する樅。
「ストーカーが犯人なら、爆発を起こした後なぜかベランダに留まった状態であなたと楓さんが部屋から出ていった後に部屋の窓を開けたということになります。どうしてストーカーは樅さんたちが部屋から出ていくまでベランダに留まっていたんですか? そんなことをしなくても爆発させたらすぐに逃げた方が捕まる可能性もずっと低いのに」
もはや反論する言葉は出てこなかった。