第96話 警察訪問

文字数 896文字

「では早速ですが、本日の一時頃、どこで何をやっていたのかを教えてください」

 ここでようやく私は気づいた。
 自分のアリバイを確保し忘れていたことに。

(ま、まずい、どうしよう……)

「お父様はどこで何をやっていましたか?」
「私は本日仕事でした。一日中会社にいたので、問い合わせれば確認できると思います」

 父は名刺を警察に渡した。

「娘さんは……」
「え、えっと……」

 どうしようか混乱する。
 どこかに行っていたと言えば、その店の監視カメラを調べられてしまうといなかったことが判明してしまう。
 だから迂闊に嘘をつくこともできない。

「私は、特に予定もなかったので家に居ました。家でゴロゴロしてたり、さっきまで寝てたんです」

 これはアリバイがないと言っているも同義だが、うそをついてバレるよりかはましだ。

「……なるほど、わかりました。では次に指紋を取らせて頂きたいのですが」
「ええ、大丈夫です」
「私もいいですよ」

 これに関してはあっさりと同意する。
 現場に指紋を残さないよう、手袋をしていたので残っているはずがない。いくら調べても出てこないだろう。
 だから指紋を採取されても何の問題もない。

「ありがとうございます」

 指紋採取を行った。
 他にもいろいろと調査に協力した。

「では本日はこの辺で失礼させていただきます。また捜査が進展しましたらご連絡しますので、よろしくお願いします。私の名刺を渡しておきますので、何かありましたらこちらへ」

 警察官から名刺を渡された。
 名前は園田隼人というらしい。

「はい……」
「では、失礼します」

 そういって警察官たちは家から出て行った。

「……静乃」

 父は意気消沈している。
 警察の前では積極的に捜査に協力していたが、帰った途端気迫がなくなったかのように見える。
 やはり無理をしていたのだろう。

「……お父さん」

 悲しむ父を見たくなかったが、この悲しみは時間が解決してくれるだろう。
 後は浮気相手が逮捕されれば、計画は完了する。
 私は早くその日が来ないか、と待ち焦がれた。
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